老舗ホテルが再開 「踏ん張りどころ、今できることを...」 コロナの影響広がる温泉地 現状と展望

新型コロナの影響を受ける、長野県千曲市の戸倉上山田温泉。首都圏から客を呼び込めず厳しい状況が続きますが、きのう17日、老舗ホテルが1ヵ月ぶりに営業を再開しました。温泉地の現状と展望です。

戸倉上山田温泉(長野県千曲市)

きのう営業を再開した上山田ホテル。客を迎え入れるのは1ヵ月ぶりです。念入りに客室のチェックが行われていました。

従業員:
「(Q.気になるところは)やっぱり、すみっことか。なんとなくホコリが…」

上山田ホテル 女将・若林美子さん:
「一から掃除をして、久しぶりなので殺菌もきちんとして」

先月17日から続いた休業による損失はおよそ2000万円。ようやく再開できることに社長は安どの表情です。

上山田ホテル・若林正樹社長:
「(予約は)6名なんですが、お泊りいただけるのはありがたい」

「いらっしゃいませ」

午後3時半、最初の客を迎えました。

フロント:
「免許証か何か…」

県の方針に従い、「特定警戒都道府県」からの受け入れは予約の段階で断っていますが、念のためフロントでも住所を確認します。

上山田ホテル・若林正樹社長:
「非常につらくはあるが、予約の段階で自粛のお願いはしてきたので、(特定警戒)8都道府県残っているが、特に注意していきたい」

再開初日に訪れたのは、社長の友人でもある長野市の太田さん夫妻。年に3回ほど利用していて、この日を心待ちにしていました。

太田英行さん(長野市から):
「苦労していると思うけど、明るい笑顔で迎えてもらってブランクを感じさせない、清潔感があって。お風呂に入るのが楽しみです」

さっそく、大浴場へ。

営業再開後の「一番風呂」です。

太田英行さん(長野市から):
「いつも最高だけど、真新しい感じがして、もっと最高」

戸倉上山田温泉は去年の台風災害でも客足が落ち込み、挽回の最中に今度はコロナの影響を受けました。

(記者リポート)
「旅館が営業再開するなど明るい兆しも見えてはいますが、きょうの温泉街にも観光客の姿はほとんどありません」

飲食店では…。

創業大正10年、温泉街の中心部に店を構える「豊年屋」。辛味大根の絞り汁で食べる「おしぼりそば」が人気の店です。

豊年屋店主・牛澤三郎さん:
「観光客を相手にしているので、温泉街の他の飲食店より打撃大きい。(緊急事態宣言が)解除されても皆さんすぐには動かない。いつになるのか、早く動きだしてくれればいい」

7割を占めた観光客の来店が無くなり、売り上げは昨年の同じ時期の3割ほどに落ち込んでいます。

客(市内):
「小さい頃から来ていたのでつぶれてほしくないし、家族とかも連れて来られたらいい」

出前やテイクアウトでしのぎながら、今後の入り込みに期待する日々です。

豊年屋店主・牛澤三郎さん:
「(温泉街に)お客さんに来てもらって、商売している所に順々にお金が回る。大勢のお客さんに来てもらいたいというのが本当の願い」

(記者リポート)
「旅館に温泉まんじゅうを卸していたこちらの店も、街ににぎわいが戻る日を心待ちにしています」

おみやげの定番「温泉まんじゅう」の老舗「塩川菓子舗」。旅館など6軒ほどに卸していましたが、すべてが休業し先月の売り上げは半減したと言います。この週末、営業を再開した取引先から徐々に注文が入るようになり、今後に期待しています。

塩川菓子舗・北村敏恵さん:
「県外や関東圏のお客さんが戻らないと、これから先も大変では。(緊急事態宣言が)やっと解除になったので、だんだん温泉街も元気になっていったらいい」

この難局を乗り切るには、地域一体となって挽回する必要があると若林社長は話します。

上山田ホテル・若林正樹社長:
「コロナ後にどういうキャンペーンをして、飲食店もどう頑張って、この温泉の入り込みを維持して、みんなで共存していくか、真剣に考えないといけない」

さて、上山田ホテルでは夕食の準備が進んでいました。

従業員:
「1ヵ月ぶりで…どう対応したらいいのか」

上山田ホテル・若林正樹社長:
「(休業中)精神的につらいと訴えている社員もいた。お客さんが来られて本来の仕事ができるのは、一安心ではないか」

おいしそうな料理に舌鼓。でも感染予防のため、食事スペースには仕切りが設けられています。グループ客の場合はテーブルを離すほか、従業員も手袋をして食事を運ぶなど細心の注意を払っています。

引き続き首都圏からの客を呼び込めず、厳しい状況が続く温泉地。今が踏ん張りどころです。

上山田ホテル・若林正樹社長:
「以前と同じお客さんの数に戻るのは、しばらくはあり得ない。ローコストでオペレーションしながら、企業としても維持を図りながら、お客さんに喜んでもらう。そういうことを目指していきたい」

© 株式会社長野放送