今永、千賀、有原、種市… 12球団で最も“空振り”を奪える投手は誰か?

ソフトバンク・千賀滉大(左)とDeNA・今永昇太【写真:荒川祐史】

セイバーメトリクスの指標を用い分析などを行うDELTA社のデータで空振り奪取率の高い選手を分析した

プロ野球界には様々なタイプの投手がいる。球が速い本格派、球速は速くはないものの変化球のキレや出し入れなどで勝負する技巧派、下手投げなど変わった投げ方の変則タイプなど、その特徴は様々だ。打たせてアウトを積み重ねる投手もいれば、1試合に10個超の三振を奪う投手もおり、そのスタイルは十人十色と言えるだろう。

打者は投手が投じたボールを打ちに来る。バットに当たり、フェアグラウンドに飛べば、野手の間を抜けてヒットになるかもしれないし、野手がエラーするかもしれない。何が起こるかは分からない。その一方でバットに当てられなければ、そのリスクはない。では、12球団の投手でその空振りを多く奪える投手は一体誰なのだろう。

セイバーメトリクスの指標を用い分析などを行う株式会社DELTAのデータを基に、全投球のうち打者が空振りしてストライクになった割合を示す「SwStr%」を検証。12球団で空振り奪取率の高い選手を分析してみる。

全体的に、短いイニングを全力で抑えに行くリリーフ投手の方が、長いイニングを投げる先発投手に比べて「SwStr%」は高くなる。そのため、両リーグで80イニング以上に投げた先発、20試合以上に登板したリリーフに分けて、上位3選手をピックアップした。

【セ・リーグ】
○先発投手
山口俊(巨人→ブルージェイズ)13.4%
今永昇太(DeNA)13.1%
浜口遥大(DeNA)11.7%

セ・リーグの先発投手で最も空振りを奪う確率が高いのはブルージェイズに移籍した山口俊投手。13.4%はセパ両リーグの先発投手の中で最も高い数値を残している。武器であるフォークの存在が大きいのだろう。セ・リーグで2位はDeNAの今永昇太投手、そして3位も同じDeNAの浜口遥大投手。今永は13.1%と、山口と僅差だったが、浜口は11.7%とややその差が開く形となっている。

○リリーフ
ルビー・デラロサ(巨人)19.9%
ピアース・ジョンソン(阪神→パドレス)16.2%
梅野雄吾(ヤクルト)16.2%

リリーフで1位だったのは巨人の守護神デラロサ。26試合の登板ではあったものの、「SwStr%」は19.9%をマークし、これは12球団でもトップ。5球のうち1球で空振りを奪っていることになる。ちなみに2017年に54セーブをマークしたソフトバンクのサファテの「SwStr%」は22.0%。そこには及ばないものの、20%近い数字は非常に高い数字と言える。

セ・リーグで2位だったのは今季はパドレスに所属するジョンソン。昨季阪神のセットアッパーとして活躍した右腕は16.2%で、両リーグ合わせては5位。そしてリーグ3位だったのはヤクルトの梅野。こちらも16.2%と高い指標をマークした。

巨人のルビー・デラロサ【写真:荒川祐史】

パ先発では日ハム有原、ホークス千賀、救援では楽天松井らが昨季高い空振り奪取率を記録

【パ・リーグ】
○先発投手
有原航平(日本ハム)13.1%
千賀滉大(ソフトバンク)12.8%
種市篤暉(ロッテ)12.5%

パ・リーグの先発投手で最も空振り率が高いのは、意外にも日本ハムの有原航平投手。昨季リーグ最多奪三振のタイトルに輝いたソフトバンクの千賀滉大投手は2位だった。有原はセの今永と同じ13.1%。カットボールを武器にし、打たせて取るイメージがある有原。現に2018年まで「SwStr%」は10%未満だったが、昨季、飛躍的に上昇させている。

千賀は12.8%と、有原と0.3%の僅差でリーグ2位。両リーグ合わせて山口、有原、今永に次ぐ4位となった。そして千賀に続くのはロッテの新星・種市。千賀と共に自主トレを行う若き右腕は12.5%だった。

○リリーフ投手
松井裕樹(楽天)18.7%
リバン・モイネロ(ソフトバンク)16.9%
石川直也(日本ハム)16.8%

パ・リーグのリリーフで1位だったのは楽天の松井。両リーグ通じてもデラロサに次ぐ2位で、18.7%の高い数値をマークした。松井はこれまでにも15%を超える「SwStr%」をマークしており、高い空振り奪取率を誇る。先発転向となる今季、この数字にどんな変化が出るか注目だ。

パの2位はソフトバンクのモイネロ。150キロを超える真っ直ぐと、大きな変化を誇るカーブを武器とし、「SwStr%」は16.9%。モイネロに続くのが日本ハムの若きリリーバー石川直也。こちらも150キロ台半ばのストレートと鋭いフォークを武器としており、16.8%を誇る。

こう見ていくと、どの投手も威力ある真っ直ぐとともに、空振りを奪える強烈な変化球を持っている。千賀、種市、石川直はフォーク、今永や松井らはチェンジアップと代名詞となるようなものもある。ファンにとっても爽快な瞬間である空振り。彼らの今年のより一層の活躍を期待したいものだ。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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