1987年ナ・リーグMVPの再投票 グウィンが8位から1位へ

「最下位のチームの選手はMVPに相応しいのだろうか?」という問いに対し、1987年にようやく「YES」という答えが出た。ナ・リーグ東地区の最下位に終わったカブスからアンドレ・ドーソンがMVPに選出されたのだ。しかし、ドーソンは本当にMVPに相応しかったのだろうか。メジャーリーグ公式サイトのマーク・フェインサンドは、1987年ナ・リーグMVPの再投票に関する特集記事を公開した。

1987年のドーソンは、153試合に出場して打率.287、49本塁打、137打点、OPS.896を記録。49本塁打と137打点はともに両リーグ最多であり、オジー・スミスとジャック・クラークのカージナルス・コンビを抑えてMVPに選出された。しかし、ドーソンの強打はなかなかチームの勝利にはつながらなかった。

メジャーリーグ公式サイトのライター17人が現在の価値基準で1987年ナ・リーグMVPの再投票を行った結果、ドーソンは1位票を1票も獲得できず、トップ5にすら入ることができなかった。四球が32と少なかったため、出塁率は.328に過ぎず、総合指標のWAR(FanGraphs版)も3.5どまり。これでは本塁打と打点の二冠王でもMVPになるのは難しいと言わざるを得ない。

実際の投票でドーソン以外に1位票を獲得したのは、スミス(2位)、クラーク(3位)、ティム・ウォラック(エクスポズ:4位)の3人。守備の名手として知られるスミスは、0本塁打ながら打率.303、75打点、43盗塁、出塁率.392の好成績を残し、再投票では3位となった。クラークも出塁率.459と長打率.597(ともにリーグ1位)を評価され、5位にランクイン。しかし、ウォラックは打率.298、26本塁打、123打点ながら37四球で出塁率.343に過ぎず、再投票では10位に終わった。

再投票でスミスとクラーク以外にトップ5に名を連ねたのは、トニー・グウィン(パドレス:1位)、エリック・デービス(レッズ:2位)、ティム・レインズ(エクスポズ:4位)の3人だ。実際の投票で7位だったレインズは、打率.330、18本塁打、50盗塁、出塁率.429、OPS.955の好成績をマーク。同9位だったデービスは、抜群の身体能力を遺憾なく発揮し、打率.293、37本塁打、100打点、50盗塁、OPS.991という驚異的なパフォーマンスを見せた。

そして、実際の投票で8位だったグウィンは、両リーグ1位の218安打&打率.370を記録し、56盗塁、出塁率.447、OPS.958とその他の部門でも好成績をマーク。走攻守すべての面においてバランスよく優れた成績を残し、メジャーリーグ公式サイトのライター陣からの支持を集めた。ただし、パドレスもナ・リーグ西地区の最下位に低迷。つまり、最下位のチームからMVPが選出されることに問題はなく、当時の価値基準でドーソンがMVPに選ばれたのも間違いではなかったと言えそうだ。

© MLB Advanced Media, LP.