現在もアスレチックスを支える「マネーボール・ドラフト」

2002年のアスレチックスのドラフトは『マネーボール』でも取り上げられ、大きな注目を浴びた。データを重視した大学生中心の「マネーボール・ドラフト」の成否については評価の分かれるところだが、その「マネーボール・ドラフト」が現在のアスレチックスを支えているということだけは紛れもない事実である。

アスレチックスは、2002年のドラフトで全体39位までに7つの指名権を持っていた。このうち1つは、1994年のドラフト全体2位指名で入団し、1998年に新人王を受賞したベン・グリーブを放出した三角トレードで獲得したジョニー・デイモンがフリーエージェントとなってレッドソックスへ流出したことにより得た補償指名権である。アスレチックスはその指名権を使い、全体16位でニック・スウィッシャーを指名した。

2008年1月、アスレチックスはスウィッシャーをホワイトソックスへ放出し、ジオ・ゴンザレスとライアン・スウィーニーを含む3選手を獲得。ここからトランザクションの流れはゴンザレス側とスウィーニー側の2つに分かれていく。

ゴンザレス側の流れ

2011年12月、アスレチックスはゴンザレスを含む2選手をナショナルズへ放出し、A・J・コール、トミー・ミローン、デレク・ノリス、ブラッド・ピーコックの4選手を獲得。2013年1月の三角トレードでは、コールを含む3選手をナショナルズへ放出し、マリナーズからジョン・ジェイソを獲得した。

2015年1月には、ジェイソを含む3選手と金銭をレイズへ放出し、ユネル・エスコバーとベン・ゾブリストを獲得。そして、2015年7月にゾブリストと金銭をロイヤルズへ放出し、アーロン・ブルックスと現在の先発ローテーションの中心的存在であるショーン・マネイア(2018年にノーヒッター達成)を獲得した。

スウィーニー側の流れ

2011年12月、アスレチックスはスウィーニーを含む2選手をレッドソックスへ放出し、ジョシュ・レディックを含む3選手を獲得。2016年8月には、レディックとリッチ・ヒルをドジャースへ放出し、グラント・ホームズ、ジャーレル・コットン、フランキー・モンタスの3選手を獲得した。

モンタスは移籍後、毎年着実に成長し、昨年は16先発で9勝2敗、防御率2.63の好成績をマーク。薬物規定違反により80試合の出場停止処分を受ける失態こそあったものの、今年も先発ローテーションの一角として期待されている。

まとめ

要するに、アスレチックスが2002年の「マネーボール・ドラフト」でスウィッシャーを指名したことが、その後のマネイアとモンタスの獲得につながったというわけだ。アスレチックス公式サイトのデプスチャートでは、マネイアは先発2番手、モンタスは先発3番手に位置付けられている。

また、先発4番手のプロスペクト左腕、ヘスス・ルザードも今回のトレードの流れに間接的に関わっている。2013年1月の三角トレードでアスレチックスからブレイク・トライネンを獲得したナショナルズは、2017年7月にショーン・ドゥーリトルとライアン・マドソンを獲得するために、トライネン、ルザート、シェルドン・ノイジーの3選手をアスレチックスに放出したのだ。

以上のことから、現在のアスレチックスの先発ローテーションは、2002年の「マネーボール・ドラフト」によって支えられいると言っても過言ではないだろう。

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