中古マンションをリノベーションするほうが、新築マンションを買うよりお得なワケ【リノベにかかる費用】

東京都杉並区の賃貸マンションに奥さんと暮らし、そろそろマンションの購入を考えていた理延城人(りのべ・しろと)は、表参道でたまたま入ったリノベーションのお店『クロニクル』で、インテリアコーディネーターのおねえさんに、リノベについての素朴な疑問を投げかける。徐々にリノベの知識が増えていく城人であるが、もっとも気になるのは……やはり「お金」であった。

《目次》- なぜ「中古マンション+リノベーション」物件のほうがお得なのか

なぜ「中古マンション+リノベーション」物件のほうがお得なのか

やっぱり、新築マンションを買うより中古マンションをリノベしたほうがリーズナブルなのかなぁ?

トータルで考えると、私は絶対にお得だと思いますよ。

理延:たしかに、価格的にはそのほうが安い印象はありますけど……。

江藤:しかも、その割安な価格で、自分の好きなお部屋をつくることができるのは大きな魅力です!

理延:なるほど~。それでも新築マンションにこだわる人って、一体どんな人たちなんだろう?

江藤:新築マンションの場合、(とくに共有部分の)設備に関しては最新のシステムを使っていますので、そういうところを重視されているのかもしれません。

理延:単純に「ピカピカの物件を他人にアピールしたい」って“見栄”もあるような……「高層マンションに友だち夫婦を呼んでホームパーティ」みたいに?

江藤:そのような側面も否定はできませんね(笑)。

僕が一番気になるのは「セキュリティ」。新築マンションのほうがそこはしっかりしているイメージがある。コンシェルジュが常駐していたり。

正直申しまして、古いとオートロックがない物件もあります。鍵交換はできますけど、自分の家だけ二重ロックにすることはできませんし……。

理延:独身男性なら、セキュリティには無頓着なタイプも多いでしょうけど、女性はけっこうこだわってしまうのでは?

江藤:ですね。そのようなお客さまには、なるべく築浅の物件をご紹介したりしています。セキュリティも条件の一つとして予算と照らし合わせ、トータルに考えてみてはいかがでしょう。

《補足解説》

新築マンションを建築できるエリアは、最近は土地もなかなか見つからないため、かなり限定されてしまっています。だから、リノベーションありきで中古マンションを購入したほうが、さまざまな条件下での選択肢が増えるわけです。たとえば、新築だと予算的に山手線圏内エリアで購入するのは厳しい場合でも、リノベ物件なら購入できる可能性が出てきます。完璧な物件なんて、お金に糸目をつけないかぎりあり得ません。大切なのは「なにを優先したいのか、そのためにはどこを妥協できるか」を調整していくことなのです。

中古マンションのリノベーション相場とは

ファミリー層なら60平米あたりの広さが一般的

理延:お話を聞いていたら、だんだん僕もリノベに心が傾いてきました(笑)。ただ、率直な話、リノベにどれくらいお金がかかるのか、まったく見当もつかなくて……。

江藤:各社によって、また㎡数やリノベーションの度合によってピンキリになってくるため、いちがいに「いくら」とは申しづらいですね。

理延:ちなみに……リノベで一番平均的な㎡数って、どれくらい?

江藤:ファミリー層なら60㎡あたり。一番多いのは50〜70㎡の物件です。

理延:60㎡って、独身での一人住まいには広すぎる。かといって、結婚して夫婦二人だけならまだしも、子どもができたら、けっこう狭いのでは?

江藤:50㎡以内だとだいたいが1LDK。60㎡になれば2LDKの間取りをつくるのは十分可能です。70㎡になれば、それにプラス、サービスルームをつくったり……。80㎡からは3LDK、100㎡以上だと4LDKがとりあえずの平均的な間取りになります。

仮に60 を対象にすれば、価格のおおよそな目安は?

一般的には1㎡単価が12〜15万円、弊社は平均すれば13万円をちょっと超える程度でしょうか。税込みで約800万円です。

理延:それに「+マンションの額」ってことですね?

江藤:はい。あと、30㎡だと割高に、広くなればなるほど1㎡単価は安くなります。どんなに狭くても、お風呂のリノベーションなどは省くことができないからです。先ほどリノベ会社によって値段がまちまちと申しましたが、弊社の無垢材リノベーションは、製材から施工まで自社で行っているため、物件の広さがわかればだいたいの金額がすぐにわかります。ネット上のシミュレーションでおおよその費用も出せますよ。

理延:おぉ、それは助かる! あとでシミュレーションしてみますね。

《補足解説》

わかりやすく、リノベの総予算をちょうど800万円だとしましょう。その内訳は、物件によってまちまちではありますが、60㎡の物件だと、弊社(株式会社クロニクル)のスタンダードな無垢材を使ったスケルトンリノベーションの場合、解体工事に約60万円、産廃費用に約40万円、施工費が約365万円(工事の人件費+トイレ、クロス等の基本的な設備代)。さらに弊社で人気のオーク無垢材のフローリングや建具、収納などを造作した建材費が約200万円。システムキッチンは約55万円、ユニットバスは約80万円といったところです。いろいろな費用が積み重なっていますが、いちばん多いのは施工費の中に含まれている「人件費」。総額の4割近くを占めています。

中古マンションをお得に買うには?

マンションは築20年を過ぎると価格が横ばいとなる傾向がある### 「旧耐震」「新耐震」で価格が大きく変わる

理延:「物件選び」に関してなんですが、「築20年以上の建物だと、もう物件価格はあまり変わらない」みたいな噂を聞いたことがあるのですが……?

はい。統計では「築20年で価格は横ばいになる」そうです。

理延:じゃあ、築20年と築30年の建物では、その10年差はあまり気に止める必要もないってこと? 10年も違うと建物の強度とか、違ってくる気もしますが…。

江藤:そうですね。建物自体の強度もある程度は変わってきますが、とくに築40年以上の旧耐震の建物は注意が必要です。値段も大きく下がる可能性もなくはありません。物件を選ぶときの一つの目途として、頭に入れておいてもいいかもしれません。

《補足解説》

1981年(昭和56年)の耐震基準の見直しによって、建築基準法の改正以前と以降では、建物の耐震基準が異なっています。したがって、築40年を超えた建物は、耐震の面での基準がまだ緩やかだったぶん(=新耐震仕様ではないぶん)、価格がグンと下がるケースも。旧耐震物件ならば、「耐震補強」を含めた大規模修繕がいつ行われたかを入念にチェックしましょう。ただ「旧耐震だから耐震性に不安がある」、というわけではありません。旧耐震でもしっかりと建物に耐震補強を施しているケースもあります。

フルスケルトンをオススメする理由

多少コストはかかるが、フルスケルトンのほうが結果的に満足度が高くなる

理延:たとえば、間取りは変えずに、内装だけを変えるようなリノベだと、先ほど、お伺いしたように、800万円もかからないんですか?

江藤:表層リノベーションですね。それでも、なんだかんだでフルスケルトンの8割程度はかかってしまいます……。

理延:そんなに!? だったら、いっそフルスケルトンにしてしまったほうが全然いいじゃないですか!

江藤:そのほうがベターだと私は思いますね。結局、建具も変えるし、床を張り替えるってことになれば、残っているのは壁だけなので。

理延:でも、買い手側からすれば「少しでも安くあげたい」って心理も働くわけだし……。

江藤:古い物件は和室があって、けっこう奥が深い押し入れも備え付いていたりします。だけど、ベッドにすれば布団を入れる必要もないので、間取りを変えずにそのスペースを余らせておくのはもったいないですよね。あと、内装をいじるだけだと段差を変えることもできません。「リセット」という意味でもフルスケルトンを私どもはオススメします。

理延:同じ㎡数でもリノベ費用が変わってくることってあるの?

江藤:特殊な形の物件だったり、配管が妙な位置にある物件だったりすれば、多少費用はかかってしまいます。また、選ばれる材料のグレードによっても費用は変わってきます。クロスより塗装、ビニール系よりも本物のタイルのほうが高額……みたいに、です。

《補足解説》

ライフスタイルに合わせて自由に。しかも、環境の変化を見越した長期的なプランにも柔軟に対応できるのがリノベーションの大きなメリット。しかし、フルスケルトンではない「内装のみ」のリノベーションは、価格こそ多少は安く抑えられても、大幅に間取りを変えることはできません。フルスケルトンに比べ、自由度が大幅に限定されてしまいます。

リノベーションでできること、できないこと

フルスケルトンにすれば新築並みにいろいろできちゃうわけですね。でも、やっぱ「できないこと」もいくつかはあるんでしょ?

はい、あります。マンションには「専有部分」「共用部分」、それに「専用使用部分」の3つがあって、自由にリノベーションできるのは、基本的に「専有部分」のみになります。

理延:な、難解な専門用語が……。さっぱりわかりませんっ!

江藤:簡単に言いますと、「専有部分」は住宅内部のことで、そのスペースは「コンクリートの躯体(=建築物の構造体)を傷つけない範囲で、ほぼ撤去・一新することができる」わけです。

《補足解説》

マンションで自由にリノベーションできるのは「専有部分」のみです。他の居住者と共同で使う「共用部分」や、特定の人しか使わないけれど所有権は共同になる「専用使用部分」はリノベーションできません。

【専有部分】区分所有者(=各住戸の所有者)が個人で所有している部分

【共用部分】区分所有者全員が所有権を共同で持ち、共同で使う部分※マンションのエントランスや廊下、エレベーターなど

【専用使用部分】共用部分だが、その住戸の人だけが専用で使用できる部分※専用庭やバルコニー、窓ガラスおよびサッシ、玄関ドアなど

理延:なんとなくわかってきました。もしかしてベランダもダメですか?

江藤:バルコニーの大きさや手すりを変えたりするのは、やはり無理ですね。

理延:外から見えるところ、ほかの居住者から見えるところはダメってことですね。じゃあ、見えないところならば何やっても大丈夫ですか??

江藤:いえ、見えなくても、建物の構造に関わるところに手を入れるのはNGです。マンションは構造別に「ラーメン構造」と「壁式構造」の二種類があります。ラーメン構造は柱と梁で建物全体を支える構造、壁式構造は壁の強度だけで建物を支える構造です。壁式構造のマンションには、建物の構造上壊せない壁が存在するんです。その壁は外から見えないとはいっても、取り壊してはいけません。マンション全体の強度に関わってしましますから(笑)。

理延:なるほど、そりゃそうですねえ。建物が壊れたら元も子もない(笑)。

江藤:あと、トイレやお風呂といった水回りの移動も難しいケースがあります。建物の構造上、給水管、排水管の位置を変更できない場合もあるのです。あと、マンション毎の管理規約で、細かいルールが決められている物件もあります。中古マンションを購入する際に不動産会社の担当者に細かく確認することをおすすめします。

予算内で理想の住まいをつくるために

【コツ1】「理想の住まい」のイメージを明確化する

理想とするイメージや予算感ははっきりと伝えたほうがいい

理延:予算内で賢くリノベをするコツって?

江藤:最初に必ずすべきことは「どんな住まいをつくりたいか」を明確にイメージすることです。

理延:ボクたちの頭の中がぼんやりしたままだと、業者さんも困っちゃいますもんね(笑)。

江藤:なんとなく「リノベしてみようかな…」とお考えになった段階で私どものところへと足を運んでくださるのは、もちろん大歓迎です。

ただし、何度かのご相談を経て“完成のイメージ”を具体化していくことが重要だと思います。

【コツ2】はっきりと予算を業者側に伝える

江藤:次に「はっきりと予算を業者側に伝える」こと。

「○○万円から○○○万円くらい?」みたいな感じだとダメ?

江藤:これはどんな商いにも言えることなんですけど、売る側はご提示いただいた額の“下限”ではなく“上限”を基準にしてしまいがちですから(笑)。しかも「〜くらい」を付けてしまえば、「ちょっと“くらい”は予算オーバーしても大丈夫だろう」という前提で見積もられてしまいます。

「これ以上の額は出せません!」と断言してくださったほうが、私どももより緻密なプランを立てやすくなるわけです。

【コツ3】やりたいことの優先順位をつける

自分のなかで「リノベーションの優先順位」をつけておくと、スムーズに進む。打ち合わせは積極的に

江藤:最後は「やりたいことに優先順位をつける」ことです。

理延:え、なんで?

私どもの経験上、予算内でお客さまのすべての希望がかなうことは残念ながら、まずありません

江藤:なので、はっきりと予算をご提示していただいたうえで「できること」と「我慢しなければならないこと」を仕分けるためにも、「優先順位」は欠かせないのです。

《補足解説》

あと、これらの要望をなるべく正確に業者へと伝えられるよう“打ち合わせ”を億劫がらず、密接に行うことも大切です。業者との連絡を怠り、適当な返事をしてしまったがゆえ、あれよあれよと事が進んでしまい、当初の予算をオーバーしてしまうケースは多々あります。一生モノのお買い物をするわけですから、“売る側”だけではなく、“買う側”も真摯な姿勢を忘れてはいけないのです。

リノベーションとローンについて

ところで、すごく基本的な質問なんですけど……リノベ物件でもローンは組めますよね?

大丈夫ですよ(笑)。でも、リノベーションのみをローンにすると割高になってしまうんです。「リフォームローン」という単体のローンになって、金利も高くなってしまうので…。

江藤:いっぽう、物件も一緒に購入すれば、リノベーションは造作家具(既製品で売られている家具とは違い、その部屋やサイズに合わせた造り付けの家具)までを含めて住宅ローンに組み入れることができます。

理延:つまり、物件購入と同時にリノベもしてしまうほうが、むっちゃお得ってこと?

江藤:そのとおりです。そして、そのセット販売が弊社の強みでもあります。現在は住宅ローンの金利が約0.5%。対して、リフォームローン単体だと金利は2~3%になってしまいます。

理延:マ、マジですか!?

江藤:はい。なので、まだ住宅ローンが残っている人は、リフォームローンと一本化して「借り換え」をなさるケースもあります。

理延:なんですか? その「借り換え」って!?

江藤:簡単に説明してしまえば、銀行で組んでいる住宅ローンの残額に、新たなリフォームローンを追加して一本にまとめるシステムです。あと、物件購入とリノベーションを別々の会社を通して、同時のタイミングでやるケースも多いのですが、その場合は裏技もいろいろなくはありません。

《補足解説》

ただし、「同時」とはいえ、その微妙な「タイミング」はかなり重要。「購入」が「契約」の状態なのか「引き渡し」の状態なのかで、手間は大きく違ってきます。すでに融資を受けていて引き渡しを終えている状態だと既存のローンに組み込むのはむずかしくなります。まだ「契約」の段階、所有権の移転がされていない、住宅ローン自体もまだ始まっていない段階なら、一本化は可能です。いろんな技はありますが、いちばん簡単なのは「物件購入」と「リノベーション」を同じ会社で同時に実施すること。これにつきます!

中古マンションのリノベーション事例

理延:中古マンションをリノベーションすることのメリット、よ~く分かりました! で、実際に中古マンションをリノベーションすると、どんな感じに仕上がるんですかね?

江藤:それでは、弊社で手掛けた中古マンションのリノベーション事例をご紹介していきます。

趣味のためにリノベーションした「男の1LDK」

江藤:もともと3LDKだった築31年・69㎡の中古マンションを、大胆に1LDKにリノベーションした物件です。施主さんは趣味と仕事に生きるひとり暮らしの男性。ゲストも多いため広々としたリビングと、2台の自転車を室内に収納するために設置した玄関土間がアクセントになっています。

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思わず料理がしたくなる、大型のオープンキッチンがポイント

江藤:「キッチンを開放的にしたい」「天然無垢材のフローリングにしたい」というご要望を受けてデザインさせていただいた、築12年・67㎡のお宅です。お料理好きの奥様のために大型のオープンキッチンを部屋中央に配置。リビングとダイニングのエリアを緩やかに分けることでゆったりとした雰囲気を演出しています。

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施主もペンキまみれになった、思い入れのあるリノベーション

江藤:交通アクセスのいい築28年・51㎡の中古マンションをリノベーションした物件です。施主さんはリノベーションの過程そのものを楽しまれていて、キッチンと寝室の壁を自らペンキまみれになりながら塗られたほど。

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