【高校野球】一時解散、受験専念、練習継続… 甲子園中止で分かれる各校の対応は?

甲子園大会中止の発表から一夜明け、各校の監督からは様々な声が上がった

各校の監督は「2月から一度も会えてない」「今まで通り厳しく」

史上初めて春も夏も中止が決まった甲子園。各都道府県の高野連によっては大会実施を模索するところもあるが、「全国高等学校野球大会」としての地方大会の可能性はなくなった。球児の夢であった甲子園への道が閉ざされ、そして高校3年間の集大成を発揮する場が無くなり、現場では大きな混乱が広がっている。これから球児はどうなるのか。各校の今後を訊いた。

中止報道から一夜明けたこの日、東海地方のある強豪校ではチームの一時解散を決めた。同校の監督は「今は何を伝えればいいのか。選手の心の整理がつくまで時間を置くつもりですが、正直、我々にも時間が必要。定期的に行っている他校との引退試合くらいはできればいいが……今のところはそれさえ未定です」と頭を抱える。

関東のある公立校の監督は「少し前から『もう受験に専念します』と退部願いを出す生徒もいましたが、大会自体がなくなった今、ますますその傾向は強まるでしょうね。うちは進学しても野球を続ける子は多くない。指導者として彼らに何も残してやれず、悔しい気持ちでいっぱいです」と言葉を絞り出した。

突然の発表に戸惑う指導者も多い中で東北地方のある強豪校は練習続行を決断。「うちの子たちにはまだ先がある。進路のことも含めて、当面は変わらず練習を続けます。ただ、目指してきた目標がなくなったのも事実。モチベーションという意味でも、何か用意してあげたい思いはあるが……無力感でいっぱいです」と語る。

高野連関係者の中には「どこかで全力で野球をやる場は与えてあげるべき」との声も

選手とのミーティングすらままならない学校もある。関東のある私立校では2月28日以降、今も部活動を含めた完全な登校禁止措置が継続中。一度も全員が集まれていない状況が続いており、監督も「生徒が今何を思い、何を望んでいるのか。それすらもわからない。登校禁止が開けるのが6月1日。それまでは会って話をすることすらできません」と嘆く。

一方で東西東京大会は独自開催に向け準備を進めており、西東京のある強豪校監督は「東京はまだ恵まれている方。例年通り、全力で優勝を狙いに行く。選手は気の毒だが憐れむようなことはせず、練習が再開したらあえて今まで通り、ビシバシと鍛えていくつもりです」と信念を語る。

地方大会も中止になったとはいえ、各地の高野連では独自大会を模索中。高野連関係者のなかには「正直、目標を奪われた悲しみだけでなく、やり場のない怒りを抱えている選手もいる。これだけ理不尽な仕打ちに対して、18歳にとってみればそれは至極当然の感情。フラストレーションのはけ口としても、どこかで全力で野球をやる場は与えてあげるべき」との意見もある。

全国の球児が直面しているかつてない喪失感に対し、これから何ができるのか。中止決定を受けてなお、現場の葛藤は続いている。(Full-Count編集部)

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