自滅の道

 なぞなぞを一つ。「かけてもかけても はやくなれない。かけてもかけても ゴールにつけない」。これ、なあに? 答えは「いす」。谷川俊太郎さん作の「えほん なぞなぞうた」(童話屋)にある。いすにいくら腰を掛けても、足は速くならないし、どこにも行けない▲その人は、出世の上り坂を駆けても駆けても、検事総長というトップの座にはたどり着けずに終わる。新聞記者らと今月上旬、賭けマージャンをしたとして、東京高検の黒川弘務検事長が辞表を提出した▲国民は外出をこらえているのに、「3密」状態で、カネを賭けた遊びに興じたというから、逃げ道はなかろう。記者もたとえ「関係づくり」であれ、時期もやったことも、不適切この上ない▲わざわざ閣議決定して、定年を延長した検察庁の2番手は“自滅”の道をたどった。閣議決定を後付けで正当化する法改正案は、世論の反発から先送りされたが、もはや国民の理解は得られまい▲この先、黒川氏を検事総長に据えれば、批判の矢が飛ぶのは明らかだった。政府や与党には、自滅をもっけの幸いとみる向きもあるという▲「賭けると失うもの、なあに?」。黒川氏は「検察トップのいす」と答えるはずだが、正解は「国民の信頼」だろう。政府や黒川氏に国民のしかめっ面が果たして見えるか。(徹)


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