【専有部分と共用部分】中古マンションをリノベしたいけど、トイレの位置って変えられないの?

「そろそろマンションを買いたいなぁ」と考えていた矢先。たまたま表参道で見かけたリノベーションのお店『クロニクル』で、インテリアコーディネーターのおねえさんからやさしく迎えられた理延城人(りのべ・しろと)──しかし、根掘り葉掘り説明を受けているうち、ある聞き慣れない言葉が……。「共用部分」って、なんなんだ?

専有部分、共用部分。そして専用使用部分って何?

マンションの廊下、階段等は「共用部分」。住民が勝手に手を加えることはできない

ボクが想像していた以上に、リノベっていろんなことができちゃうんですね。でも、やっぱ「できないこと」もいくつかはあるんでしょ?

あります。マンションには「専有部分」「共用部分」、それに「専用使用部分」の3つがあって、自由にリノベーションできるのは、基本的に「専有部分」のみになります。

理延:な、難解な専門用語が……。さっぱりわかりませんっ!

江藤:簡単に言いますと、「専有部分」は住宅内部のことで、そのスペースは「コンクリートの躯体(=建築物の構造体)を傷つけない範囲で、ほぼ撤去・一新することができる」わけです。

《補足解説》

マンションで自由にリノベーションできるのは「専有部分」のみです。他の居住者と共同で使う「共用部分」や、特定の人しか使わないけれど所有権は共同になる「専用使用部分」はリノベーションできません。

【専有部分】区分所有者(=各住戸の所有者)が個人で所有している部分

【共用部分】区分所有者全員が所有権を共同で持ち、共同で使う部分※マンションのエントランスや廊下、エレベーターなど

【専用使用部分】共用部分だが、その住戸の人だけが専用で使用できる部分※専用庭やバルコニー、窓ガラスおよびサッシ、玄関ドアなど

ベランダはその部屋の住民だけが使うため「専用使用部分」となる。リノベーションはできない

理延:玄関やベランダもいじれないのか……ちょっとガッカリ。

「専有部分」である室内ドアはお好きなデザインを選べるのですが、「専用使用部分」はそのあたりがデリケートなエリアなんです。原則として「マンションの統一感・外観に関わってくる部分はリノベーションできない」とお考えになっておいたほうがいいでしょう。

理延:ふむふむ……なんとなく理解できてきました!

たとえば、玄関の内側はギリギリOKですが、外側はダメ。サッシや窓も、管理組合の許可なしにリノベーションはできません。しかし、細かい話になってしまうのですが、防災設備の条件さえ満たしていれば、管理組合の許可を得たうえで、ガラスは代えられるケースもあります。ただ、ステンドグラスにしたりとか、色を変えたりするのはNGですけど(笑)。

理延:ベランダは?

江藤:バルコニーの大きさや手すりを変えたりするのは、やはり無理ですね。

理延:タイルを貼ったり……くらいは大丈夫?

江藤:残念ながら、難しいです。なので、弊社の場合は取り外しができる、ウッド調のバルコニータイルをオススメしています。

理延:ナイス!「取り替えた」んじゃなくて「敷いているだけ」っていう解釈なんだ!!

江藤:それなりにアレンジの仕方はあるということです。あと、MB(メーターボックス)も撤去や移動はできません。

理延:アレって、美観を損ねるんだよなぁ。ホントはもっと目立たない場所に持っていきたいんだけど……。

江藤:ただし、室内のコンセントやスイッチは増設も移動も可能なので、リノベーション後の家具や家電の配置に応じて、オシャレにアレンジしてみてください。

古い物件の場合、電気やガスの容量を戸別に上げられないケースがあるので、事前に注意が必要

《補足解説》

コンセントの位置や数は変更可能ですが、古い物件の場合、アンペア数を変更できないケースもあるので要注意です。とくに各住戸の電気容量が30アンペア以下の場合、変更できない可能性が高いので、事前にしっかりと確認しておきましょう。またガスの容量にも制限がある物件もあります。大型の給湯器や温水床暖房が使えないケースもありますので、電気同様に事前にチェックが必要です。

リノベーションで実現できること、できないこと

トイレやお風呂、洗面所、キッチンといった水回りは、配管の関係で移動に制約がでる場合がある### トイレ、お風呂、キッチンは移動可能?

理延:トイレの場所を変えたりはできるの?

江藤:できなくはありませんが、大幅に移動するのはとてもハードルの高い作業になってきます。

理延:どうして?

江藤:PS(パイプスペース:下水道やガス管などの配管スペース)の位置は原則として変えることができないからです。「排水」一つとっても、水を流すための角度と勾配差が必要になるため、従来設置されている水回りから遠い場所に付け替えようとするほど、床を高くしなければいけないんです。

キッチンやトイレなどの水回りの位置を変えるのは難易度が高い

だけど、「できなくはない」んですよね?

「まったく変えられない」というよりは「あまり遠くに移動するのは難しい」といった感覚のほうが正確かもしれません。

理延:床を高くしちゃったら、鉛筆とかが転がっちゃうじゃないですか!

江藤:いやいや(笑)、途中に階段のような段差をつけて上げるのが一般的です。ただ、相当に大がかりな工事になり、費用も値上がるでしょうから、正直オススメはできませんね。むしろ、フルスケルトンにして全面バリアフリーに仕上げるほうが簡単で、ご予算も全然安いと思います。

江藤:あと、排水とともに、換気ダクトも移動させる必要があります。いずれにしてもトイレ、キッチンなどの移動は、結構大がかりになっちゃいますね。

《補足解説》

排水のシステムは、おおまかには「壁排水」と「床排水」の二つに分類できます。便器の横に排水ポンプが付いているのが「壁排水」、下に付いていて見た目には隠れているのが「床排水」。「床排水」だと、床が高くなることさえ承知の上ならば、理論的には可能です(※仮に10m移動させるとすれば、20㎝の高さが必要になります)。いっぽう「壁排水」だと、移動はかなり厳しくなります。低層高級マンションによくある、水回りのほとんどが躯体壁で囲まれている壁式構造の場合も、移動はできません。リノベーションは躯体部分を壊すことができないからです。ちなみに、これらはトイレにかぎらず、キッチンやお風呂場も同様になります。

天井の高さや床の高さは変えられる?

天井ボードを外して「躯体現わし」の状態にすれば天井高を稼ぐことができる。ただ遮音性と断熱性は低くなる

じつは、ボク、「天井の高さ」にはこだわりたいんですよ。低いと、どうも息苦しくて……。

天井のボードを外し、ダクトや配線を剥き出しにすれば、40~50㎝ほど天井を高くすることができます。

理延:あぁ、コンクリート打ちっ放しのカッコイイ部屋になるわけですね!

江藤:はい(笑)。下に配管がなければ、逆に床を低くすることも可能です。しかし、そうすれば遮音性と断熱性はどうしても低くなってしまいます。天井を上げることによって、ダウンライトが埋められないケースも出てきます

理延:うーん。ダウンライトも捨てがたいけど、どちらかを我慢するしかないってことかぁ。

江藤:そういうことです。

《補足解説》

ただし、天井に直接壁紙を貼って仕上げている物件は、天井を高くするができません。いずれにしろ、リノベーションができない共有部分や躯体、それに梁(はり)の場所や高さをチェックしておくのは重要。極論、ここがどうしても好みに合わなければ、その物件はあきらめたほうが無難だと言えます。

リノベーションしやすい物件とは

理延:リノベしやすい物件・しにくい物件ってあるんですか?

江藤:あります。現に「リノベありき」のお客さまはリノベしやすい、たとえば長方形の物件などをお選びになる傾向があります。

理延:長方形?

江藤:「部屋の形が変形していないフラットな物件」ということですね。アールがあったり、三角だったり……そういう特殊なつくりは、どうしてもリノベーション上の限界が出てきてしまいますから。あと、「水回りが散らばっていない物件」のほうが自由度は高くなります。

理延:ヘンなカタチの物件、一度は住んでみたいけど、長く住んだらストレスが溜まってちゃうかも?

ですね。さらに、マンションによっては、フローリングがNGな場合もあるんです。板材はダメ、タイルもダメ、カーペットじゃないとダメ……みたいに。もちろん、フローリングをご希望されるお客さまにはオススメできません。

《補足解説》

遮音性に関する管理規約が厳しい物件も、その条件を満たすためにいろんなしがらみが生じてきます。場合によっては、フローリングの裏に遮音材を貼らなければならなない場合もあります。

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