先陣を切って再開されたNASCARに見る“アメリカの覚悟”

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 NASCARのシリーズ戦が5月17日のダーリントン戦から再開された。おそらく、世界のメジャーレースシリーズでもっとも早い再開だろう。当然、アメリカでも大きな話題となっている。

 一歩引いて、いまのアメリカを全体で見てみれば、トランプ米大統領や彼の支持者たちはアメリカのビジネスすべてを一刻も早く開放しようと躍起になっているし、3000万もの人々が失業したことから、ビジネス再開は慎重になされるべきと考える人々より、アメリカ社会の資本主義的要素が復活させられるべきと考える人々のほうが徐々に優勢になってきている。

 そうしたことも、再開への扉を開けることにつながったのかもしれない。まず、4月23日にノースキャロライナ州のクーパー知事がレーシングチームとレース場は不可欠なビジネスであると裁定。それから数日のうちに、NASCARは、ストックカーレース産業の大部分が本拠地とするシャーロットからクルマで行けるエリアで、可能な限り多くのレースを開催する計画を発表した。

 このダーリントン戦の後は、平日の3戦(ナイトレース)を含む8戦を経て、6月27日のポコノから通常のレースカレンダーに戻る。

 NASCARが週の半ばにカップシリーズのレースを行うのは1970年以来初めてとなるが、これは一部のファンとスポンサーが提案して続けてきたコンセプトをテレビネットワークに試させる機会を与えることになった。

 9戦を30日間に詰め込むことで、予定どおりの36戦開催を成し遂げる期待を持てる状況にもなっている。「NASCARの知名度はこのウイルス騒ぎの後、以前よりもさらに高くなると見えている」とNASCAR社長のスティーブ・フェルプスは話す。

 このダーリントン開催にあたり、NASCARは開催および放送に必要な人々が安全に働ける環境を提供するための措置を講じた。

 レースに参加するNASCARの従業員全員、すべてのチームメンバーにはマスク着用を義務づけ、健康診断を受けさせて、ソーシャル・ディスタンスを保つようにさせた。レースに関わる人々に検査を受けさせることはしなかった。検査キットが一般の人々に使われるようにという考えからだ。

 ドライバーはコース内にモーターホームを置くことを許されるが、そこでの宿泊は禁止。

 クルーは1チーム16名までに制限され、レース場入りするスタッフの数の合計は通常の半分の約900名とされた。メディアは4人だけがプレスボックスからの観戦を許可されたが、インフィールドやピットへの立ち入りは認められなかった。

 そうして開催されたダーリントンだが、“最高に面白いレース”と呼べる内容にはなっていなかった。しかし、普通の日曜日の午後に戻るための、いくばかの要素が感じられたことはよかったと個人的に感じている。

 優勝したケビン・ハービックはテレビのインタビューで、「レースをやらせてくれたNASCARに感謝したい。ただ、こんなに普段と違ったものになるとは思ってもいなかった。サーキットは完全に静まり返っていたしね。興奮もしているけど、なんかヘンな感じだ。スタンドに誰もいないんだからね。ファンがいないとさみしい」と話していた。

 今回のダーリントン開催を受けて、アメリカのほかのレースシリーズも同じような形でシーズンを再開、もしくは開幕させることになるだろう。インディカーは6月6日にテキサスで開幕し、IMSAは7月3~4日のデイトナで再開される予定だ。

マスクを付けてレースに臨んだマット・ケンゼス(シボレー・カマロZL1)
場内では消毒作業も頻繁に行われた
レーストラックに入る前には検温も行われていた