人工筋肉で全方位に音を届けるスピーカー 芝浦工業大学が開発

芝浦工業大学工学部機械機能工学科の細矢直基教授らが、「人工筋肉」を高速で振動させて音を出すスピーカーを開発した。

人工筋肉や発電デバイス(エナジーハーベスティング)、ソフトロボットなどへの応用が期待され近年注目を集める誘電エラストマーアクチュエータ(Dielectric Elastomer Actuator、以下「DEA」)。今回開発されたスピーカーは、このDEAを、自立する半球形や風船のような球形にして振動させて音を出す。DEAは高分子誘電膜を柔軟電極で挟み込んだキャパシタ構造となっており、電極間の電位差により電極同士が静電気力によって互いに引き合うことで変形する仕組みをもつ。

軽量かつ柔軟でありながら大きな変位を生み出すことのできるDEAの特性を活かして開発されたこのスピーカーは、人が聞くことの出来る音域ではほぼ無指向性の音響放射特性で、スピーカーを中心とした全方位に音を届けることが可能。また、素材自体が振動し音を発生させるので、スピーカーの形状を制限しないという利点ももつ。重さはわずか数グラムと軽く、これまでとは異なる場所や条件での設置も可能とする。

今回開発されたスピーカーは、コンサートなどにおけるステージレイアウトの新たな可能性を拓くものだ。他にも、例えば音響試験に求められる点音源としても活用が期待できる。コンサートホールなどの室内音響の特性把握には、点音源を用いた音響試験で残響時間を計測することが理想だが、スピーカーが音場に対して相対的に大きい場合には、点音源と見なすことができない。一方、今回開発したスピーカーならば、音場やサイズによらず、点音源を実現できるとみられる。

研究チームは今後、様々な人々にとって聞き取りやすい音を提供できるスピーカーの開発に向け、研究を加速していくとしている。

参考:

【芝浦工業大学】人工筋肉を高速振動させたスピーカーを開発

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