離婚後の住まいは買う?買わない?悩む手取り20万48歳契約社員女性

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、昨年離婚した48歳会社員の女性。老後の住まいを考えたとき、マンションを購入すべきか悩まれています。購入がよいか、賃貸のままがよいか? FPの三澤恭子氏がお答えします。

去年、離婚してシングルになりました。今は賃貸物件に住んでいますが、老後のことを考えると、1000万円ぐらいの中古マンションを購入しようかと考えています。できれば定年(65歳)までに住宅ローンを完済できたらいいなと思っていますが、毎月の支払いと管理費、修繕費、駐車場代も考えると厳しそうなので、20年のローンを組んで購入しようかと考えています。

ただ、購入するとしても、今より月2万円は住宅費がかかることになり、結構しんどいかなとも思い、迷っています。固定資産税なども考えると買わない方がいいのか、老後を考えると少し頑張ってでも買った方がいいのか、かなり迷っています。

老後資金としては、別れた夫からあと9年は月5万円が振り込まれることになっているので、それをiDeCoにまわそうと思っています。65歳過ぎても働けるなら、働き続けるつもりです。買う、買わない、どちらがベストな選択のでしょうか。アドバイスしていただけるとありがたいです。

<相談者プロフィール>

・女性、48歳、独身(離婚)

・子ども3人:25歳、23歳、20歳

・職業:契約社員(時給)

・居住形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:17~22万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:30万円

・毎月の世帯の支出目安:16万円

【支出の内訳】

・住居費:5.8万円

・食費:3万円

・水道光熱費:1.2万円

・教育費:なし

・保険料:なし

・通信費:1万円

・車両費:0.4万円

・お小遣い:2万円

・その他:2万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:1~4万円

・ボーナスからの貯蓄額:20万円

・現在の貯蓄総額:550万円

・現在の投資総額:なし

・現在の負債総額:なし


三澤:ご相談ありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの三澤恭子です。3人のお子さんも成人され、相談者様ご自身のセカンドライフを考える時が来ましたね。衣食住の要となる住まい選びは、安い買い物ではないので迷うのも当然です。相談者様にとってベストな選択は何か、一緒に考えていきましょう。

自分の老後は何年? 平均余命からプランニングを考える

ご相談内容に「老後のことを考えると……」とありますが、相談者様の老後は何年くらいあるのでしょう。

自分で「何歳まで生きる」と余命を決めることはできませんよね。では、何歳まで生きることができるのか、年齢別の平均余命について厚生労働省が発表しているデータを見てみましょう。平成30年の簡易生命表によると、48歳女性の平均余命は40.26歳、つまり統計上は88歳までは生きるということです。また、女性の2人に1人が90歳を迎え、死亡年齢のピークも92歳となっています。少なくとも90歳までのマネープラン・ライフプランを考えておくと安心できそうです。

賃貸vs所有 一生涯の住居費はいくら?

まず、90歳までの42年間、賃貸物件に住み続けたとしたら、住居費の総額はいくらになるか、試算してみましょう。

【ずっと賃貸物件で暮らした場合の前提条件】

◆家賃 5万8000円
◆更新費用(2年に1回 ) 合計13万6000円/1回
・更新料 5万8000円 ・更新手数料 2万9000円
・火災保険 2万円 ・保証料 2万9000円

◆引越し費用(58歳・68歳時の2回) 合計33万1000円/1回
・敷金 5万8000円 ・礼金 5万8000円
・前払い家賃 5万8000円 ・仲介手数料 5万8000円
・火災保険 2万円 ・保証料 2万9000円
・引越代 5万円

※物価上昇などの変動は考慮していません。

90歳までの家賃の上限を5万8000円とし、58歳と68歳時に新築物件に引越しをするものとした場合、家賃総額は約3200万円となります。内訳は、42年分の家賃が約2900万円、更新費用が244万8000円(18回分)そして引越2回分の66万2000円です。

ずっと賃貸物件の場合、65歳の退職までに現在の貯蓄残高550万円に加え、毎月の貯蓄とボーナスから952万円{(毎月平均3万円×12か月+ボーナス20万円)×17年}と、元夫からの援助540万円を老後資金として貯めることができます。貯蓄総額の約2000万円にプラスしてiDeCoの運用益の上乗せも期待できそうです。

中古マンションを購入した場合の住居費の総額は?

次に、1000万円の中古マンションを購入した場合、住居費の総額はいくらになるか試算してみましょう。

【中古マンションを購入する場合の前提条件】

◆住宅ローン:約4万8000円/月額
フラット20(融資率9割超・2020年5月最頻金利1.49%を適用)
借入金1000万円 返済期間20年 諸費用50万円(貯蓄より充当)
◆住居関連費:管理費等3万円/月額 固定資産税10万円/年間
火災保険(地震含む)5万円/5年ごと
修繕費 65歳・75歳時に50万円/1回
※物価上昇などの変動は考慮していません。

ご相談内容から、購入すると住居費が今より2万円アップするとのことですので、住居費は住宅ローンの返済額4万8000円と管理費等に3万円と考えます。

前提条件をもとに90歳までの住居費を試算すると、総額は約3300万円となります。内訳は、68歳までの住宅ローンの返済総額が約1157万円、購入諸費用50万円、管理費等1512万円(36万円×42年)、固定資産税420万円(10万円×42年)、火災保険(地震保険を含む)45万円、修繕費100万円です。

ちなみに定年時のローン残高は約170万円になります。退職金などから一括返済できると65歳以降の働き方も変わってくると思います。

一方、老後資金のための毎月の貯蓄額は、3万円のうち2万円が住居費にまわってしまうので、1万円となりそうです。それでも17年続けると204万円となり、ずっと賃貸物件で暮らす場合と比べ400万円ほど少なくなりますが、約1600万円貯めることができそうです。

結局どっちがおトク? ステージごとの比較でわかること

「ずっと賃貸物件か、中古マンション購入か」の総費用はほとんど変わりません。では、どちらがベストな選択となるのでしょう。もう一つ比較してみましょう。

48歳から住宅ローンの完済時68歳までの20年間と、それ以降90歳までの22年間の2つのステージに分けて、住居費を比較してみましょう。

<68歳を分岐点とした住居費の比較表>

※「ずっと賃貸物件で暮らす」および「中古マンションを購入する」の前提条件を使用しています。

表のとおり、賃貸物件の前半にかかる住居費の月額平均は6万5000円、後半は6万3000円となります。一方、購入した場合、前半は9万2000円、後半は4万1000円です。この試算から、購入した場合は住宅ローンの完済までの20年間は賃貸に比べ、月平均にして2万7000円多くかかることになります。しかし、住宅ローンが終了した22年間は逆に賃貸と比べ2万2000円の負担減となります。

決断のポイントは、支払いの時期

住居費の支払い比重を現役中におくのか、それともリタイア後にするのか、決め手はその点になるでしょう。ずっと賃貸の場合、リタイア後の家賃支払いは、年金あるいは貯蓄に回した老後資金を切り崩して充てることになります。

参考までに、65歳まで賃貸物件で暮らし、その後1000万円の中古マンションを現金で購入した場合の住居費総額は約3600万円となります。買うか、買わないか、どちらがいいかは住居費の総額だけでは判断できませんが、決断されるのであれば早いほうが良いのではないかと思います。

最後に質問です。将来3人のお子さんのいずれかと同居するお考えはありますか。また、介護など人の手が必要となった時はどのようにしたいとお考えですか。この辺りも含め、お子さんともご相談してみてはいかがでしょう。試算にあたっては、前提条件を相談者様により近い数字に置き換えて選択の参考にしてみてください。

充実したセカンドライフを送れることを願っています。

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