【新型コロナ】5月9日 メルケル首相の演説「コロナと文化」 「芸術・文化支援は最優先事項」と明言

5月9日、メルケル首相はメルケル首相は5月9日、改めて芸術・文化関係者と市民に向けて演説を行い、自分自身の経験を踏まえながら、芸術や文化がドイツにとっていかに重要であるかを語った。

5月9日のメルケル首相演説「コロナと文化」

動画はこちら:https://youtu.be/dIBa_MgeJ0o

さらに、メルケル首相は文化支援を連邦政府の優先順位リストの最上位にあると明言。今後も芸術・文化関係者たちの声に耳を傾けながら各州と連携して支援を行うと明言した。

この記事では、神戸大学大学院教授でドイツの文化政策に詳しい藤野一夫さんによる仮訳を紹介する。


コロナと⽂化 メルケル⾸相の演説 2020.5.9

仮訳:河合温美/藤野⼀夫

導⼊

ドイツは⽂化の国であり、わたしたちは全国に広がる多彩な催し物(展⽰や公演)に誇りを もっています。ミュージアム、劇場、オペラハウス、⽂芸クラブ、そのほかにもたくさんあ ります。⽂化的催し物が表現しているのは、わたしたちについてであったり、わたしたちの アイデンティティについてだったりします。

コロナウイルスによるパンデミックは、わたし たちが共に営む⽂化的⽣活の深い中断を意味します。特に影響を受けているのは多くのア ーティストたちですが、いっそう深刻なのはフリーランスのアーティストたちです。

現在の 状況は不確かなままです。だからこそわたしたち連邦政府、なかでも連邦⽂化⼤⾂モニカ・ グリュッタースは、各州とともに関⼼を寄せていることがあります。わたしたちの⽂化的⽣ 活が将来にもチャンスがあり、そしてアーティストたちに橋が築かれることです。

質問:コロナ時代に⽂化はどのような役割を果たすのでしょうか?

⽂化的イベントは、わたしたちの⽣活にとってこの上なく重要なものです。それはコロナ・ パンデミックの時代でも同じです。もしかするとわたしたちは、こうした時代になってやっ と、⾃分たちから失われたものの⼤切さに気づくようになるのかもしれません。なぜなら、 アーティストと観客との相互作⽤の中で、⾃分⾃⾝の⼈⽣に⽬を向けるという全く新しい 視点が⽣まれるからです。

わたしたちは様々な⼼の動きと向き合うようになり、みずから感 情や新しい考えを育み、また興味深い論争や議論を始める⼼構えをします。わたしたちは (芸術⽂化によって)過去をよりよく理解し、また全く新しい眼差しで未来へ⽬を向けること もできるのです。これら全ては、もちろんコロナ時代においては制限された範囲でのみ可能 です。

これは、アーティストにあてはまることですが、もちろん観客にもあてはまります。 それだけにいっそう感謝したいのは、いまやデジタル空間でどれだけたくさんの新しいア イデアが⽣み出され、どれだけたくさんのアーティストがエキサイティングなプロジェク トに取り組んでいるかです。このような⽂化的供給をも活⽤できる⽅々に特別な敬意を表 したいと思います。

とはいえ、当然デジタル空間の可能性は⾮常に限られていることに変わ りはありません。だからこそ今、適切な安全措置のもとでミュージアムや記念館が再開でき るようになったことを嬉しく思っています。

また今週、⽂化⼤⾂と共に各州の⼤⾂にお願い しました。どのようにしたら衛⽣規程と安全規程のもとで、劇場やコンサートホール、オペ ラハウスやその他の⽂化施設も再開できるようになるか、計画をまとめてほしいと。もちろ んまだ難しい分野もあるでしょう。⼤規模なコンサートやフェスティバルの開催などはま さにその類ですが、⽂化の分野でも再び⽇常への第⼀歩を踏み出せることを嬉しく思って おります。

質問:連邦政府はアーティストに対してどのような⽀援をするのでしょうか。

ドイツは基本的に各州が⽂化に対する権限を有しています。全ての州でアーティストのた めの⽀援プログラムを開始しています。連邦政府もその⽀援プログラムにおいてアーティ ストやクリエイティブ産業のニーズに常に寄り添ってきました。

そこで、連邦政府による単 ⾝⾃営業者のためのプログラムでは、仕事場の経費や家賃などの恒常的⽀出がある⼈々を ⽀援します。そのほかに、まさに単⾝⾃営業者のために基本保障(社会保険)への窓⼝を拡⼤ し、ずっと簡略化しました。

また⽂化⼤⾂のモニカ・グリュッタースは、⽂化庁予算の中か ら、中⽌になったイベントの報酬などを精算できるように配慮しました。 わたしたちは、次の数ヶ⽉間で芸術に必要な⽀援策について引き続き検討してまいります。 というのも、わたしたちの⽬的は、ドイツの幅広く多彩な⽂化的環境が、パンデミックを克 服したあと、この深い中断を克服したあと、存在し続けられることだからです。

これは容易 ならざる課題ですが、連邦政府はこの課題を優先順位のリストの⼀番上に置いています。 親愛なる芸術家の皆さん、あなた⽅にとって今がとても、とても困難な時期であることを承 知しています。

わたしたちの誰もが寂しい思いをし、どれほど多くの市⺠たちが再びライブ であなた⽅の芸術を体験できることを待ちわびているかを承知しています。そのときまで、 わたしたちはできる限り、あなた⽅を連邦政府の救援プログラムを通して⽀援するように 努めます。また、どれほどあなた⽅がわたしたちにとって⼤切であるかをお伝えすることも ⽀援となりますように。

藤野一夫さん監修の記事はこちらから:

特集「コロナ時代のドイツは芸術・文化をどう守るか?

https://this.kiji.is/637194425450660961

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