心のうちで踊ろう

 マイケル・ジャクソンの物まねダンスがなぜかマッチしていて楽しい。伴奏次第でジャズっぽくも、ラテン音楽調にもなる。ミュージシャンの星野源さんが4月初めに公開した曲「うちで踊ろう」に、続々とコーラス、演奏、ダンスの動画が重ねられ、話題を呼んだ▲外出を控えようと共演の輪が広がったが、緊急事態宣言が解かれて、どうなるだろう。「うちで…」の合言葉は聞かれなくなるのかどうか▲つい先日、星野さんがテレビ番組で語っていた。外出自粛を求められたとき、どうしても仕事に行く必要のある人もいた。「おうちにいよう」というだけでなく、大変な人が「心のうち」で踊れるように。そんな願いも「うちで踊ろう」に込めたらしい▲辛抱して自宅にいる人。感染を恐れつつ仕事に出る人。休みなく医療現場で働く人。みんなが、こんな時こそ唇に歌を、心に軽やかなステップを。踏ん張る人へのエールに思える▲歌詞にある。〈うちで歌おう/悲しみの向こう/全ての歌で/手を繫(つな)ごう〉。社会不安が広がる折に「くつろぎ動画」を曲に重ね、不興を買った安倍晋三首相と、思いはきっと重なるまい▲仕事や収入が減り、いま苦境に立つ人は数知れない。1日のほんの少しの時間、心のうちで踊ろうよ。曲が世に染み込むのは、この先かもしれない。(徹)

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