夜の光で島に活気を スナック「SNACK」ママ 橋口裕美さん(66)=五島市栄町=

笑顔で接客をする橋口さん=五島市栄町

 客足はめっきり減ってしまった。「お酒好きが多い五島では珍しい」。3週間近い休業を経て店を再開したが、客が1人だけの日も。「でも夜の光がともっていれば、いずれ五島も活気づくでしょう」。不安を振り払い、また店内が酔客でにぎわう日を思い描く。
 1995年、大阪から家族で島に移住。2年後に店を構えた。20年余りの歴史の中で「今が一番の痛手」だ。経営的にも苦しいが、歓送迎会シーズンをコロナ禍が直撃し、定年退職や転勤をする常連客らと、店で別れを惜しむ時間をつくれなかったのも心残りだ。
 夏を前に、本当なら観光客でにぎわい始める時期だが、トライアスロン大会やマラソン大会など島の主要イベントも中止となり、先行きは見通せない。それでも客席のソファの間隔を空けて「密」を避け、消毒液も設置するなど、できる限りの準備はした。「安心して来てほしい」の一心だ。
 スナックは客がくつろぐ居場所であり、仕事の仲間同士で打ち解ける社交場でもある。「一人一人を真心で迎えたい」。午後8時。1人の客が店の扉を開けると、いつもと変わらぬ笑顔で迎え入れた。「いらっしゃいませ」

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