国などが普賢岳防災事業を視察 大火砕流惨事からもうすぐ29年

島原市と市境の南島原市側から溶岩ドームの崩壊対策事業などを説明する田村所長(右)ら=赤松谷川周辺

 梅雨や台風のシーズンを前に、島原市や国、県などの関係者らが26日、雲仙・普賢岳の噴火活動で形成された溶岩ドームの崩壊対策など市内4カ所で進められている防災事業の現場を視察した。消防団員や報道関係者ら43人が犠牲になった1991年の大火砕流惨事から6月3日で29年になる。
 視察は現状把握のため同市が実施し、8機関から約50人が参加。このうち、溶岩ドーム先端から約3.5キロ下流にある警戒区域内の赤松谷川3号床固工(とこがためこう)そばでは、国土交通省雲仙復興事務所の田村毅所長が溶岩ドーム崩壊に備えた監視、観測体制と砂防事業のほか、6月以降に着手する除石工事や砂防設備の修繕などを担う新事業「砂防管理」について説明した。古川隆三郎市長は「ハード整備の進み具合が確認できた。国や県と力を合わせて、防災対策に力を入れたい」と話した。
 同事務所によると、普賢岳山頂付近に不安定な状態で堆積した溶岩ドームは、ペイペイドーム(福岡市)53杯分の1億立方メートルと推定。これまでに島原市側に約1.3メートルずり落ちているのが確認されており、地震や豪雨による大規模な崩壊の可能性が指摘されている。
 同事務所が93年から続ける砂防ダムなど大型構造物の建設工事は本年度完了する予定で、事業費ベースの進捗(しんちょく)率は99%。普賢岳噴火災害に伴う警戒区域は96年6月の噴火終息宣言後も継続され、今も溶岩ドームの東側を中心に約950ヘクタールが設定されている。

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