食品スーパーと百貨店、4月売上で明暗分ける

「緊急事態宣言」で明暗、スーパー業界

 国内の主な食品スーパーが加盟する一般社団法人日本スーパーマーケット協会などスーパーマーケット業界3団体は5月21日、「2020年4月実績速報版」を発表した。(集計対象270社、約8,000店舗)。
 既存店の売上は前年同月比10.7%増で、増加率は調査を開始した2010年4月以降で最大だった。今年1月は前年同月比2.1%減で前年同月を下回ったが、2月が同5.7%増、3月が同7.2%増、4月が同10.7%増と、3カ月連続で前年同月を上回った。
 4月は、食品が同12.5%増、非食品は同6.1%減だった。食品の中では生鮮3部門(青果・水産・畜産)が同14.6%増に対し、惣菜は同4.7%減と明暗を分けた。
 日本スーパーマーケット協会の江口法生専務理事は、東京商工リサーチの取材に「学校給食の中止や在宅勤務の広まりで、外食が減り自宅で食事をする機会が増え、特に生鮮食品の売上が増加した」と説明。惣菜売上の減少について、「花見やレジャー等の外出自粛もあるが、家族の食事を料理するようになったのではないか」との見解を示した。
 協会に加盟する(株)サミット(TSR企業コード: 290281989)と、(株)ライフコーポレーション(TSR企業コード: 290868157)の4月売上は、サミットが前年同月比20.4%増、ライフが同15.0%増と好調だった。
 なお、食品スーパーは内食需要が拡大し、客単価が2ケタ増と好調だったのに対し、総合スーパー(GMS)は衣料品の不振や時間短縮、休業などで大半が前年同月を下回った。食品スーパーがけん引して好調に見えるスーパー業界だが、業態により明暗が分かれた。

4月の食品スーパーと百貨店

暗雲漂う百貨店

 日本百貨店協会が5月22日に発表した「全国百貨店売上高概況」(調査対象73社、203店舗)で、4月売上は前年同月比72.8%減の大幅な減少を記録した。3月の同33.4%減から39.4ポイント上昇し、1965年1月以来、最大の減少率となった。
 緊急事態宣言で百貨店の営業自粛が広がったほか、外出自粛で入店客数が8割弱減少した。特に、インバウンドは購買客数が同99.5%減、売上が同98.5%減と大きく落ち込んだ。
 主要5社の4月売上(確定値)は、(株)三越伊勢丹(TSR企業コード: 295714654)前年同月比85.1%減、J.フロントリテイリング(株)(大丸松坂屋百貨店)(TSR企業コード: 297152963)同74.1%減、エイチ・ツー・オーリテイリング(株)(阪急阪神百貨店)(TSR企業コード: 570169607)80.5%減、(株)髙島屋(TSR企業コード: 570108730)69.8%減、(株)そごう・西武(TSR企業コード: 350431906)78.2%減、と軒並み大幅に落ち込んだ。
 5月25日に緊急事態宣言が全面解除され、百貨店も通常営業が再開される見通しとなった。しかしインバウンドに依存していた百貨店は、当面はその需要も期待できない。また在宅勤務や外出自粛は段階的に継続される見通しで、当面はブランド衣料品需要も期待できず、引き続き百貨店は厳しい推移が見込まれる。
 一方、スーパーマーケットは、緊急事態宣言の解除後も消費者行動が大きく変わらない見込みで、外食落ち込みの受け皿として食品スーパーは明るい状況が続くとみられる。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年5月28日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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