式典規模縮小に肩落とす被爆者も コロナ禍踏まえアピールの場に

 長崎市の平和祈念式典が被爆75年の節目の今年、新型コロナウイルスの影響で規模を縮小して開催されることになった。長崎の被爆者らは残念がる一方、新型コロナ禍を踏まえて強く平和をアピールする場となるよう期待する声も聞かれた。
 例年、式典冒頭に出演している被爆者の合唱団「ひまわり」は団員の健康を考慮し、今年は参加を見送る。団員の田川代枝子さん(86)は「メンバーが高齢化し、もうあまり長く続かないと感じている。被爆75年の節目なのでどうしても歌いたかった」と肩を落とした。
 昨年の式典で、被爆者代表として「平和への誓い」を述べた山脇佳朗さん(86)は「式典は原爆被害をあらためてかみしめる場だ」と言う。市が規模を縮小してでも開くことについて「被爆地長崎の気持ちの表れだと思う」と語った。
 政府関係者や各国大使の参列については、今後調整が進む。長崎の被爆者5団体の一つ、県平和運動センター被爆連の川野浩一議長(80)は安倍晋三首相の参列に期待し、「私たち被爆者が求めてきた日本の核兵器禁止条約への参加などに気持ちを込めて対応してほしい」と訴えた。
 田上富久市長が式典で読み上げる「長崎平和宣言」を検討する起草委員会のメンバーの一人、「長崎被災協・被爆二世の会・長崎」の佐藤直子会長(56)は「コロナで当たり前の日常が大事と気付いた。日常を維持するのに核兵器は果たして必要なのか。そういったことをアピールする平和宣言になれば」と話した。

 


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