横浜遺族会、2021年4月解散へ 高齢化で「一区切り」

1945年5月29日の横浜大空襲から75年を迎えた29日、火の海と化した横浜中心部に立つ平和祈念碑で、犠牲者の名前と年齢が刻まれた銘板が公開された。今年は新型コロナウイルスの影響で地元の小中学生向けに体験談を語る催しは見送られ、子どもたちの姿はほとんどなかった=29日午前、横浜市中区の大通り公園

 横浜大空襲から75年を迎えた29日、犠牲者遺族らでつくる「横浜戦災遺族会」が、来年4月末で解散することが分かった。池谷倫代会長(65)は「会員が高齢化し減少する中、空襲から75年が一つの区切りと考えた」と語った。祈念碑の建立や犠牲者の銘板公開を通じて平和の尊さを伝えてきた半世紀近くの歴史に幕を下ろす。

 米軍のB29爆撃機による焼夷(しょうい)弾の無差別攻撃で、8千人以上ともされる死者を出した大空襲。惨禍に見舞われた日に合わせて大通り公園(横浜市中区)の「平和祈念碑」で毎年行われてきた犠牲者を追悼する銘板の公開は、今年が同遺族会として協力する最後の機会となった。

 池谷会長によると、同遺族会は1972年に発足した。91年以降、3期に分けて祈念碑を建立し、93年に完成。犠牲者891人の氏名と年齢を刻んだ銘板を公開し、近年は地元の小中学生に体験談などを語り継いできた。

 最も多い時期には約1500人に上った会員は高齢化などで減少し、現在は約10人。祈念碑の清掃作業なども困難となり、寄付の申し出を受けた市が2014年から管理している。

 今後は扉の開閉を市が実施し、銘板の公開を継続する。池谷会長は「引き続き銘板の公開などを通じて被害や平和の大切さを感じてほしい」と話している。

 全国の遺族会は長年にわたり戦争の悲惨さを伝える役割を担ってきたが、会員の高齢化などで活動継続が困難な状況に直面。解散が相次ぎ、平和の継承が課題となっている。

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