中古マンションの寿命は何年?その後どうなる?修繕や建て替え・取り壊しの費用もご紹介

マンション寿命は建物の構造や管理状態など、さまざまな条件によって変わります。長く住み続けるためには定期的に修繕をしていくのが大切です。それでもマンションの寿命が来てしまったら、建て替えや取り壊し、売却なども検討しましょう。今回は、マンション寿命に関するさまざまな情報をご紹介します。

《目次》- マンションの寿命って何年?

マンションの寿命って何年?

マンションを購入する際、どのくらい住み続けられるのかを重視する方も多いのではないでしょうか。マンションの寿命は、何を基準にするかによって異なります。

何をもって寿命とするか

マンション寿命は、主に以下の4点を基準とするケースが多く見られます。

・法定耐用年数
・耐震基準
・物理的寿命
・資産価値

それぞれの基準により、マンションの寿命は異なります。

法定耐用年数によるマンション寿命

建物には、税法によって決められた耐用年数が存在します。法定耐用年数に達すると、建物の価値はゼロになります。

構造法定耐用年数鉄筋コンクリート造(RC)
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)47年木造22年

法定耐用年数は、建物が住宅用か店舗用かによっても変わります。上記はマンションのように住宅用として建てられた物件の耐用年数です。

もちろん、法定耐用年数が過ぎても完全に住めなくなってしまうわけではありません。国土交通省の報告書(※)によると、鉄筋コンクリート造の建物の物理的寿命は少なくとも50年以上、長いものでは150年以上あると考えられています。

※参考:「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書 取りまとめ後の取組紹介

耐震基準によるマンション寿命

旧耐震基準でも耐震性を持つマンションもあるが、そうでない住宅も多いのが実情

現在の耐震基準は1981年に決められたものです。新耐震基準で建てられたマンションは、震度6以上の地震にも耐えられるように設計されています。

旧耐震基準の時代に建てられたものにも、新耐震基準に匹敵する耐震性を持つ物件もあります。ただし、そうでない住宅も多いのが実情です。大きな地震が起こった場合、旧耐震基準のマンションが寿命を迎えてしまう可能性があります。

物理的なマンション寿命

上述の通り、鉄筋コンクリート造のマンションであれば150年ほどもつ可能性があるといわれています。定期的なメンテナンスを行い適切に管理していけば、マンションの物理的な寿命は長くなります。

資産価値によるマンション寿命

物理的な寿命はまだあるものの、資産価値が下がってしまったために取り壊されるマンションも多く見られます。マンションは築年数が長くなるほど劣化し、管理費用も高額になっていきます。マンションを所有する利益よりも管理コストのほうが大きくなったら、経済的に寿命を迎えてしまったといえるでしょう。

建物と設備で寿命は異なる

マンションそのものと比べ、給排水管やガス管などの設備は寿命が短いのが基本です。定期的に修理・交換しなくてはいけません。たとえ建物自体が100年もったとしても、設備を更新していかなければ住まいとしての機能を失ってしまいます。マンションを所有する場合は、建物だけでなく設備の管理にもお金がかかると考えておきましょう。

マンションの寿命は人にも左右される

マンション寿命は、管理組合がどういった修繕計画を立て、管理体制をつくっていくかによっても変わります。きちんとメンテナンスをしていけばマンション寿命は延びていくでしょう。

マンションは25年ごとに大規模修繕を行うよう推奨されています。25年後、さらにその25年後を見据えて長期修繕計画を立てておくのはもちろん、過去の修繕記録を取るのも大切です。ただ、実際には計画をしっかりと立てておらず、修繕記録も残されていないマンションもあります。そういったところでは、マンションの寿命も短くなるかもしれません。

ちなみに、マンションの共用部分の修繕費用は住民の支払う「修繕積立金」から工面されます。積立金額はマンションによってさまざまです。契約の際に金額を提示されるはずなので、確認しておきましょう。

設備の寿命は何年?修繕費用はいくらかかる?

こちらでは、設備それぞれの寿命の目安や修繕・修理費用の相場をご紹介します。マンションの修繕計画を確認する際の目安としてご活用ください。

基礎部分

建物の基礎部分は、マンションの寿命を左右する部分でもあります。基礎部分が劣化してしまうと、建物自体の寿命も短くなってしまいます。定期的な点検を行い、修繕していくのが大切です。

屋根

屋根の寿命は、使用している屋根材の種類によって変わります。よく使われているスレート素材の場合、1㎡あたりの費用相場はだいたい4500~8000円/㎡です。

屋根材の値段に加え、工事の際は足場代10万~30万円、廃材撤去費用20万~40万円なども加算されます。また、塗装を施している場合は数年に1回の塗りなおしも必要です。その場合は塗料代金のほか人件費などの諸費用もかかります。屋根のメンテナンスは、それなりに費用がかかると考えておきましょう。

外壁

外壁の寿命は、使用している塗料に左右されます。現在はさまざまなメーカーから多数の塗料が販売されており、製品によって耐久性が異なります。もっとも安価なアクリル系塗料なら寿命は4~7年ですが、最近主流のウレタン系なら6~10年、シリコン系なら8~15年はもつといわれています。

塗料の値段に加え、足場代や高圧洗浄代などの諸費用を含んだ修繕費用の相場は、だいたい60万~80万円です。

雨樋

雨樋の寿命は、20~25年といわれています。修繕費用は、素材や形などによって変わります。雨樋1本あたりの費用相場はだいたい1500~6000円です。

部分交換のみであれば材料費がそれほどかかららないため、修繕費が総額1万~3万円で済むこともあります。ただし、足場が必要な場合はだいたい10万~20万円の足場代が発生します。
全体の交換になると材料費に加えて足場代、廃材撤去費などもかかるため、総額30万~50万円かかることがあります。

ベランダ

ベランダの寿命は、おおよそ10年といわれている

ベランダの寿命は、おおよそ10年といわれています。日光や降雨などの影響で防水性能が下がったり、腐食が進んだりするため、再塗装や防水工事を行わなければいけません。床を再塗装する費用の相場はだいたい5000円~/㎡です。さらに、防水シートを貼るなら5000円~/㎡ほどの費用も追加されます。

また、より防水性を高めるためにFRP防水を行うこともあります。FRP防水とは、ガラス繊維が含まれたシートを貼り付け、樹脂塗料を使って塗装する施工方法です。料金はおよそ7000円~/㎡と少々高くなりますが、耐久性が高い点がメリットです。

階段・廊下

屋外にある階段や廊下は、年数がたつほど修繕費用も高額になります。主に行われるのは防水工事や手すりの再塗装などです。防水工事は10年に1回の頻度で行うことが多くなります。費用は7000円/㎡程度です。手すりの再塗装は5年を目安に行われます。費用相場は4000円/㎡ほどです。

給排水設備

給排水設備とは、マンションへ水を供給するための「給水」と、マンション外へ雨水や汚水などを流す「排水」を行う設備のことです。主に配管の修繕や交換が必要になります。

排水管・給配水管

排水管にはお風呂やキッチンなどで使われた水が流れています。洗剤や食べかすなどで汚れて劣化していくのが特徴です。給水管には配水場から送られてくるきれいな水が流れます。長く使っていると、さびや詰まりなどのトラブルが発生することがあります。

給排水管の寿命は15~30年で、管の材質や使用環境などによって変わります。2~3年に1回は点検して様子を見るのがおすすめです。また、水が流れにくくなったと感じたときや、さびの影響で変色した水が出てきたときなども交換の目安です。

給排水管を交換する場合、工事費用は30万円ほどかかります。ただ、床や壁などを取り外して工事しなければならない場合は費用がかさみ、50万~100万円になることもあります。

室内設備

マンションの室内において専有部分にあたるところは、入居者負担で修繕を行います。リフォームに際して管理組合の許可が必要になることもあるため、事前に調べておきましょう。

給湯器

給湯器の寿命は10~15年です。給湯器の費用相場はおよそ12万~45万円で、号数や性能によって異なります。号数とは給湯能力を示す数値です。号数が大きいほど1分間に給湯できる量が多く、本体価格も高くなります。また、給湯器を設置する際は、だいたい1万~3万円の工事費が発生します。

お湯の温度が不安定になり、急に熱くなったり冷たくなったりするようになったら交換のサインです。また、お湯が沸くまでに時間がかかるようになった、給湯器から変な音が出るようになったなど、異常が見られたら早めに交換を検討しましょう。

浴室

ユニットバスの一般的な寿命は15年だが、使用状況によって劣化のスピードは異なる

浴マンションのお風呂の多くはユニットバスが採用されています。ユニットバスの一般的な寿命は15年ですが、使用状況によって劣化のスピードは異なります。

浴室交換の費用相場はだいたい50万~150万円です。オプションをつけたり、グレードの高い設備を使ったりするとさらに高額になることがあります。15年を過ぎた場合も、問題なく使えている場合は無理に修繕しなくても良いでしょう。

ただし、壁の隙間を埋めるコーキングについては、10年ごとに修繕するのがおすすめです。コーキングが劣化してしまうと防水性能が落ち、腐食やシロアリ被害の原因になってしまうことがあります。コーキングの修繕は1万~2万円で行えるため、早めに済ませておきましょう。

洗面所

洗面化粧台の寿命は10~20年です。交換には20万円程度かかります。壁紙や床材などを交換する内装工事を行う場合、さらに3.5万~8万円の工事費用が発生します。

洗面化粧台は、さまざまなメーカーの製品が登場しています。シンプルで最低限の機能を持つタイプであれば、本体価格は4万~6万円で安く購入できます。3面鏡や引き出しなどのついたスタンダードな洗面台だと、7万~15万円で購入可能です。ハイグレードになると10万~30万円が相場になりますが、収納豊富でお手入れしやすいものがそろいます。

トイレ

トイレの便器そのものは丈夫で、メンテナンスすれば100年はもつといわれています。ただし、便器に付属する部品やパッキンなどは、およそ10~20年で寿命を迎えるため、劣化し始めたら交換しましょう。トイレタンクの内部にある部品は、約1万~3万円で交換できます。トイレタンクごと交換する場合の相場は約4万円です。便座の交換はおよそ3万円からと、安く済ませられます。

今後の水道代やメンテナンスのしやすさを考えるなら、トイレ全体を交換するのもおすすめです。現在では、掃除しやすい構造の便器や自動洗浄機能がついたものなど、さまざまな製品が販売されています。安い便器の交換なら6万円ほど、ハイグレードのトイレにする場合は費用が30万円を超えることがあります。

キッチン

キッチンを使い続けていくと、コンロや水栓などが壊れたり、シンクや天板などに汚れが蓄積したりと、さまざまな不具合が生じます。10~20年で寿命を迎えるため、時期が来たら交換してしまうのもおすすめです。部位ごとに修繕する場合とキッチンを丸ごと交換する場合とでは、費用にそれほど差がないことも多いためです。

システムキッチンの交換は、40万円程度で済む場合もあれば200万円ほどかかる場合もあります。キッチンのグレードによって価格は大幅に左右されるため、どの程度の設備を備えたいか考慮して選びましょう。

それでも寿命が来てしまったら… 建て替えや取り壊しの費用はいくらかかる?

メンテナンスを頑張っても、マンションはいずれ寿命を迎えてしまいます。ここでは、分譲マンションの建て替え・取り壊しの仕組みや費用相場についてご紹介します。

建て替え・取り壊しの仕組み

解体費用を誰が負担するかは、賃貸か分譲かで異なる

賃貸マンションの場合は、工事費を負担するのはオーナーになります。分譲マンションの場合は、購入した入居者が費用を負担します。そのため、工事を決行するには入居者の80%の同意を得なければいけません。

建て替え

建て替えを行う場合、解体に加えて新しいマンションの建築も行われます。解体を決定するまでは、さまざまな調整が必要です。まずは管理組合のなかで建て替えを行うか検討します。マンション建て替えの専門家を呼び、本当に建て替えが必要か、建て替え後にも利益を出せるかなどを考えていきます。

建て替えをする方向で話が進んだら、工事計画や予算などを具体的に考えていきます。計画案が完成したら住民の賛成を得るために理事会を開きます。このとき、住民の80%の同意がなければ、実際に建て替えをすることはできません。

住民の同意を得て建て替えが決まったら、マンション建て替え組合を設立してさまざまな調整を行います。主に行われるのは、住宅ローンの抵当権引き継ぎや、新しいマンションの持ち分の決定です。

その後、マンションの解体と新築が行われます。工事中、入居者は仮住まいへ住むことになるでしょう。その後、工事が終わったら再び入居者が戻ってきて、建て替え完了です。

取り壊し

実は、マンションの建て替えはほとんど行われていません。主に資金面での負担が大きいことが原因と考えられています。よほど立地や敷地面積などの条件が良いマンションでなければ、高額な費用をかけて建て替えた後、その分の費用を回収することが難しいためです。

建て替えを行わない場合、マンションを取り壊して区分所有権を解消し、土地を売ったお金をそれぞれで山分けする方法が採られることがあります。この方法でマンションを手放す場合は、原則として区分所有者全員の賛成を得なければいけません。ただし、被災したマンションもしくは耐震性能が現行基準に満たないマンションの場合は、80%の同意で区分所有権を解消できます。

それぞれの費用相場

マンションの建て替え・取り壊しには高額の費用が発生します。それぞれの費用相場は以下の通りです。

建て替え費用相場

マンションの建て替え費用相場は1000万~2000万円になるといわれています。お部屋の広さやマンションの立地、新築の設備グレードにより、金額は変動します。

また、住宅ローンが残っている場合はローンの返済を続けなければいけません。工事期間中はマンションに住めませんが、ローンは変わらずに返済する必要があります。仮住まいに住んでいる場合は家賃支払いも加わるため、毎月の固定費が高額になると考えておきましょう。また、退去と再入居時の引っ越し費用もかかります。

取り壊し費用相場

マンションの取り壊し費用は、200万~1000万円が相場です。建物の構造や大きさによっては、より高額になることもあります。狭い敷地に建っているマンションの場合も、周辺の建物に干渉しないよう慎重に工事する必要があるため、工事費が高くなってしまうことがあるようです。

建て替え費用の補助制度

高齢者が所有するマンションを建て替えする場合、住宅金融公庫の「高齢者向け返済特例制度」が使用できることがあります。この制度は60歳以上の方に適用されます。毎月の返済は利息分のみで良く、もし完済までにお亡くなりになった場合は、相続人がマンションを売却して一括返済するのも可能です。建て替え費用の負担が難しい方は、こちらの制度を検討してみてはいかがでしょうか。

売却も視野に入れて計画を立てよう

費用の負担を考えるなら、マンションが寿命を迎えるまでに売却するのもひとつの方法です。マンションの資産価値は、築10年ほどで半減し、20年ほどでほぼ底値になるといわれています。築20年に満たないマンションであれば、良い値段で売却できるかもしれません。まずは複数の不動産会社へ価格を査定してもらい、どの程度の金額で売れるのか調べてみましょう。

マンションの寿命は基準とする条件によって変わりますが、築年数がたつほど管理費用が高額になり、建て替えや取り壊しの可能性も出てきます。マンションの資産価値が下がる前に売却するほうが、費用の負担が少なく済むかもしれません。建て替えか売却か迷ったら、不動産の専門家に相談してみましょう。

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