二世帯住宅リフォームの費用、間取り。失敗例、問題点とともに紹介

二世帯住宅はひとつの住宅内に、親世帯と子世帯の住まいが同居する形をいいます。子世代に子どもがいれば三世代が同じ家の中で生活することになり、家族の人数が増えるため家の間取りやスペースにある程度のゆとりが必要です。

ただ同居することで高齢化する親世代にとっては「いざと言うときは子どもに助けてもらえる」と安心感がありますし、子世代も「子育てに協力してもらえる」など、両者にとってメリットがあります。ただ二世帯住居であることのデメリットもありますので、お互いの生活スタイルを考えて間取りを完全分離にするか、それとも完全共有にするか適切に決めなければなりません。

今回は二世帯住宅のリフォームに関わる費用やトラブル解決法、二世帯住宅リフォームをする際の注意点、二世帯住宅リフォームでもらえる補助金、対象となる減税制度・控除などについてまとめています。

二世帯住宅の間取りの特徴とそれぞれのメリット・デメリット

完全同居タイプ

玄関や浴室、キッチン、洗面台、トイレといった水回りやリビングを共有して使うのが「完全同居タイプ」です。

完全同居型のメリットは…

・新たに玄関や浴室、キッチンといった水回りを増設する必要がないためリフォーム費用や建設費が抑えられえる。

・将来親世代が住まなくなっても、水回り設備を撤去することもなくスムーズに住める。

デメリットは…

・水回りなどの設備やリビングを完全に共有するためプライバシーが確保しにくく、生活リズムのズレで不満が生じやすい。

・水回りを共有しているため、水道光熱費や電話代などの支出を世帯ごとに分離できず「どちらの世帯が公共料金を支払うか」をあらかじめ決めておく必要がある。

完全分離タイプ

玄関を親世代と子世代で別々に設置し、内部の設備(水回りなど)も完全に独立させるタイプが完全分離になります。

メリットは…

・それぞれ専用の水回りがあるためプライバシーを確保しやすく、ワンフロアで完結するため生活動線も短く暮らしやすい。

・一世帯分の住居が空いた場合は水回り設備が揃っているため賃貸物件として貸し出すことができ、家賃収入が得られる。

・水道やガス、電気料、電話料などの公共料金を世帯ごとに把握しやすいので、親世代、子世代別々に水道光熱費を支払うことができる。

これに対してデメリットは…

・ひとつの住宅の中に水回りを2世帯分つくらなければならない。

結果的に、一部共有や完全共有型の二世帯住宅に比べて建築費や土地の取得費が上がる。

一部共有タイプ

玄関やトイレ、キッチン、浴室、脱衣所、洗面所などの設備を一部共有するパターンです。

一部共有タイプのメリット…

・玄関は一つでもキッチンや浴室、洗面所、トイレなど水回りを完全に分離させたり、玄関とトイレのみ分離し、浴室や脱衣所、キッチンを共用するなど間取りの自由度が高い。

・完全分離タイプより建築費や土地の取得費を抑えることができる。

・水回り設備を一部共有することで「一緒に生活している」実感がわく。

デメリットは…

・完全分離型と比較するとプライバシーが確保しにくい。

・水回りを一部共有する場合は水道光熱費が世帯ごとに把握しにくく、どちらの世帯がどれだけ公共料金を負担するか事前に決めておかないとトラブルが起きる可能性あり。

・世帯ごとに生活リズムが違う場合は、共有する設備を使うときの音や使用時間でトラブルが起きることもある。

リフォームと建て替え、どっちにすれば良い?

二世帯住宅を建築する際に、既存住宅をリフォームするか建て替えるかの選択をしなければなりません。経年劣化で自宅の傷みが酷く、古民家など耐震性がない場合は建て替える方法もありますし、既存住宅をリフォームして二世帯住宅にする方法もあります。

判断ポイントは既存の家の状態に加え、どのような二世帯住宅にするか、どのような設備を新設するか、増築する部分はどれくらいかなど総合的に考えることです。では二世帯リフォームの費用相場を、リフォームする事例ごとにチェックしていきましょう。

二世帯住宅リフォームの施工事例別の費用相場

部屋の増築

既存住宅を二世帯住宅にリフォームする場合、同居する家族が増えることから部屋の増築を考えるケースが多くなります。

1階に増築するのか、それとも2階部分を増築するかなどで費用が変わってきますが、目安としては以下のようになります。

・1階部分を増築して居室を増やす…8畳分の増築で約210万~400万円前後、10畳分になると約220万~450万円前後が相場。

・2階部分を増築して居室を増やす…平屋を2階建てにする場合、居室の増築以外にも1階部分の補強工事が必要になり、1階に部屋を増築するより割高になります。

相場は1畳あたり約50万~100万円前後で、2階に6畳の部屋を増築したいなら300万~600万円前後の費用を考えておくのが無難です。

間取りの変更

より多くの家族が住むため、間取り変更リフォームはニーズが高めです。

・壁を撤去して広々としたリビングダイニングを設置するリフォームの場合…二世帯住宅でリビングダイニングを共用する場合、大家族が十分に集まれるリビングダイニングが必要。

そこで和室とリビングとを区切っていた壁を撤去し部屋を広げると、三世代家族でもゆとりあるリビングで寛げますね。費用の目安は約20万円前後、工期は3~4日前後になりますが、壁を取り壊すと同時に床を張り替えたり壁紙を変える、コンセントを増設、照明器具増設などの工事をおこなうと費用が50万円前後までアップしてしまいます。

付帯工事が増えると手間もかかるため、工期は1週間前後みておかなければなりません。逆に広い洋室を二つの部屋に区切って子供部屋にしたい場合、壁を増設する費用は約15万円前後で、工期は約1~3日前後が目安です。

バリアフリーリフォーム

高齢のご家族と同居する場合、やはりバリアフリーリフォームは外せません。バリアフリーリフォームは工事の規模によって予算が約数万円から1000万円前後と大きく変わってきます。必要なリフォームがなにかを見極めないと、費用がどんどん膨らんでしまうので注意してください。

・段差解消リフォーム…車いすでも室内に入れるように玄関前や玄関にスロープを設置する工事、さらに室内の段差解消の工事など。

室内の段差解消リフォームは2万~5万円前後、玄関前にスロープを付ける工事は約5万~20万円前後となっており、玄関前にスロープを作るとベビーカーも楽に玄関に入れるのでおすすめ。

・手すり設置リフォーム…屋外や室内に手すりを設置する工事、とくに玄関や廊下、トイレ、お風呂などは滑りやすいため安全にために設置しておくと安心です。

手すりリフォーム費用の目安は約5万~10万円前後、ほかにも和式トイレを洋式トイレに変更する工事が約15万~30万円前後、ドアを引き戸へ変更する工事は約5万~約10万円前後が相場になっています。

浴室やトイレ、キッチン、洗面所などの設備更新、床の全面張り替えなど大掛かりな工事になると1000万円前後かかることも。

水まわりのリフォーム

高齢の親御さんは浴室で転ぶ、寒い浴室でヒートショックを起こすなどのリスクがあるため、浴室や洗面所、トイレのリフォームを考えるケースも少なくありません。とくに寒い浴室と洗面所(脱衣所)は高齢者にとって危険ゾーンなので、浴室と脱衣所を丸ごとリフォームすると約150万~300万円前後の予算がかかります。

キッチンリフォームは約80万~250万円前後、トイレリフォームは約15万~35万円前後が目安です。水回りが共有部分になる場合は、親世代にとってより使いやすい設備にするのがポイント。

玄関のリフォーム

家の顔になる玄関は重要な部分ですが、二世帯住宅になると高齢の親御さんが出入りしやすいように、ドア式の玄関を引き戸にすると約40万円の予算が目安になります。一つに家に多くの家族が住むとなると防犯性に優れた玄関ドアに取り換えると安心ですね。

防犯機能に優れた鍵付き玄関ドアに入れ替えると予算は約35万円前後、玄関収納棚などを新たに設置してもらうと5万~10万円前後の費用がかかります。

収納スペースを増やすリフォーム

家族が増えると増えた家族の分だけ収納スペースが必要です。

既存の部屋に間仕切り壁を設置してウィークインクローゼットにリフォームすると約15万~20万円前後、パネルドアやアコーディオンカーテンで仕切る場合は約1万~6万円前後とお手軽です。

リビングの壁に大きな壁面収納を作ると約50万~90万円前後、屋外に簡易物置スペースを設置すると約20万~50万円前後の費用がかかります。

よくある失敗例・トラブルと解決策

プライバシーの問題

親世代と子世代が一緒に住む完全共有の間取りや、水回り共有、玄関共有の二世帯住宅では、親世代と子世代とのプライバシーが問題になります。例えば親世代は早めに就寝し早朝から目が覚める、子世代は夜遅くに就寝しお風呂も遅く入るなど生活スタイルに違いが出ると「息子夫婦がいつまでもテレビを見ているのでうるさい」「親が朝5時から起きてきてバタバタするので早朝からたたき起こされてしまう」など不満につながってしまいます。

また「子世代が干した洗濯物を親世代が勝手に取り込むのが嫌」「いつも監視されているようで全然寛げない」「料理や夫の収入、子どもの教育など、細かいことにいつも口出しされる」など、一緒に住んでいるとストレスがたまることも。このようなトラブルから結局親世帯と子世代が別居してしまったり、離婚してしまうというお話も聞きます。

生活リズムや生活時間の違う世代同士がうまく生活していくには、明確な生活上のルール決めはもちろん、二世帯住宅設計段階でよく話し合い水回りや部屋を増やす、玄関を別にするなどの配慮が必要です。

光熱費の支払額の割合

完全共有の二世帯住宅や水回りを共有する二世帯住宅では、水道光熱費の支払額が把握しにくく、結局親世代が、または子世代が一方的に費用を負担するケースもあります。大家族ともなると毎月の水道光熱費だけでも大きな額になってしまいますので、どのように費用を負担するか、不公平感がでないようにお互いで分担していくとトラブル回避につながります。

水道光熱費を家族の人数分で割り家族分をそれぞれの世帯が支払う、またはガス代と電話代は親世帯が、水道代と電気代を子世帯が払うなど不公平感がでないように工夫する必要があります。

設備の使い分け

大家族で設備を共有すると、どうしても「朝になるとトイレや洗面所渋滞が発生する」「お風呂にゆったり入れない」など、大家族特有の悩みが出てきます。水回り設備を一世帯分しか作っていない場合、どうしても洗面所やトイレ、お風呂が渋滞してしまうもの。

特定時間帯の渋滞を解消するために、新たに洗面所やトイレ、浴室(シャワールーム)を増設するのが一番確実な解決法です。それができない場合「早く起きた順にすぐ洗面所とトイレを使う/お風呂は親世代は午後6時から、子世代は午後8時から使う」などのルール決めが必要になります。

ライフスタイルの違い

二世帯住宅には世代の違う家族がひとつ同じ家の下で生活するため、ライフスタイルの違いから問題が起こることもあります。たとえ居室を親世代と子世代とにわけていても「真夜中に二階を歩く息子夫婦の物音が気になる」「真夜中に洗濯を始める嫁、うるさくて眠れない」「テレビの音が漏れ聞こえて気になる」など親世代の不満がたまったり、逆に「姑が早朝から盛大に掃除機を使うので寝不足になる」など、ライフスタイルの違いにより互いに不満がでるケースも。

玄関を共有している二世帯住宅では、旦那さんが真夜中に帰ってくると極力物音を立てないように気を遣う、という話もあります。解決法は生活スタイルの違いでお互いに不満がでないよう、行動をある程度制限しなければなりません。

ただし生活上のルールを作っても守ってもらえない場合、親世代や子世代、また双方に不満が出てきてしまいます。その場合はこじれる前に双方できちんと話し合うことが一番の解決策です。コミュニケーション不足で一方的に我慢してしまうと、こじれたときに長く後を引いてしまいます。

二世帯住宅リフォームをする際の注意点

建ぺい率と容積率

既存住宅を二世帯住宅にリフォームする場合は、とくに増築を考えている方は建ぺい率と容積率に注意しなければなりません。仮に土地が60坪で建ぺい率50%、容積率100%と仮定すると、60坪の土地の1階部分は30坪分の建物しか建築できません。

2階に子世帯が住むための部屋を作る場合は、2階部分に30坪までであれば部屋が建築できますがここまでが限界です。もし1階部分に5坪のリビングを増築するとしても、すでに建ぺい率はギリギリなので増築は不可。二世帯住宅を建てる土地により建ぺい率や容積率が変わってきますので、お住まいのエリアの条件をチェックして増築をおこなってください。

二世帯住宅の施工実績が多いリフォーム会社を選ぼう

二世帯住宅のリフォームを多く手掛ける会社ほど担当者に豊富な知識と経験があり、直接施主の悩みを聞いて最適な解決法を提案してくれます。

建物状況調査(インスペクション:第三者調査)への対応や耐震診断にも対応できる技術者がいれば、さらに安心。

施工会社を選ぶときは過去の実績を豊富に提示してくれる会社、口コミでの評価が高い会社、担当者の対応が素早く、誠実に向き合ってくれる会社を選ぶのが一番です。

二世帯住宅リフォームでもらえる補助金

長期優良住宅課リフォーム推進事業

中古住宅を購入し、また既存の家を二世帯住宅へリフォームする場合に支給されるのがこの補助金制度です。補助金額は最大250万円(高度エネルギー型)と大きいのが魅力ですが、補助金を受け取るためには機能性の高い家にリフォームしなければなりません。

この補助金は住宅の性能を上げることが目的なので、リフォーム前の事前検査や劣化対策工事、耐震工事は必須になります。

地域の補助金制度

お住まいの市町村で独自のリフォーム補助金制度を設けている自治体もあります。とくに移住を促進している自治体では二世帯住宅リフォームなどリフォームに補助金を支給してくれるところが多く、その要件も緩めなので、お住まいの区役所、市役所などへの問い合わせをおすすめします。

介護保険で支給されるリフォーム補助

手すりの設置や和式便器から洋式便器への取り換え、段差解消などのリフォームに対し、介護保険から補助金がおりることがあります。住人が要支援・要介護の状態であれば申請でき、支給限度額は20万円。

そのうち1割は自己負担となるため、20万円の工事では18万円が介護保険からおり、残り2万円は利用者負担になりますので注意してください。

二世帯住宅リフォームで対象となる減税制度・控除

二世帯住宅リフォームで対象となる減税制度、さらに相続の際に有利になる相続税控除などについて説明しています。

同居対応リフォームの減税制度

二世帯住宅のリフォームを行い、その費用をローンで支払っている方が利用できる減税制度が「同居対応リフォーム ローン型減税」です。決められた条件をクリアした二世帯住居のリフォームをおこなった場合、年末ローン残高を上限に、工事費用の2%または1%が所得税額から控除されます。控除期間は5年間で、償還期間5年以上の住宅ローンが対象です。

相続税の控除

2015年の「小規模宅地等の特例」の改正により、相続する住宅や土地に対して一定面積までの相続税の評価額が80%減額されており、結果的に相続税の節税になります。

居住用の土地などの限度面積は改正前が240㎡でしたが、法律改正後は330㎡まで広がり結果的に相続税が下がり相続人の負担軽減になりました。

不動産取得税の控除

不動産を取得した場合は不動産取得税が課税されます。この不動産取得税ですが、一世帯住宅の場合の不動産取得税と二世帯の場合では、二世帯の方が圧倒的に有利に。条件を満たす50平方メートル以上240平方メートル以下の床面積の住宅を取得した場合、1200万円の控除があります。

もし取得時の金額が4000万円だった場合、一世帯住宅では控除額が1200万円となり残りの2800万円の3%分が不動産取得税として課税される仕組みで、この場合は84万円に。ところが二世帯住宅であれば4000万円から二世帯分の控除額(1200万円×2=2400万円)が差し引かれるため、課税額が48万円まで大幅に減額されます。

固定資産税の軽減

二世帯住宅を親と子、それぞれで所有している「区分登記」していると、二世帯住宅は二戸分として認識されます。区分登記しておけば一戸につき200平米までの部分が(土地)「小規模住宅用地」として扱われ、課税標準額が六分の一まで大幅に激減。

二世帯住宅は二戸分になりますので400平米までが小規模住宅用地扱いとなり課税標準額が大幅に減り、毎年払う固定資産税の大幅な節税が可能になります。また新築の二世帯住宅の場合、最初の3年間(長期優良住宅の場合は最初の5年間)は各戸の床面積120平米分までの固定資産税が二分の一になる特別な軽減措置も受けられます。

完全分離型二世帯住宅は建築費や土地の取得費がかかりかかってしまいますが、その分固定資産税や不動産取得税など税制上の優遇措置が受けられるメリットもあるのです。

二世帯住宅リフォームのローン

収入合算で借りられる額を増やすことも

二世帯住宅を新築する、または中古住宅を取得する場合、ローンでの購入を考えている方もたくさんいらっしゃいます。ところが二世帯住宅は通常の住宅よりも水回りが多くなったり、まとまった土地が必要になるなど費用がかかることに。そのため希望する金額を融資してもらえない可能性もあります。

そこで親世帯と子世帯の収入を合算し、その収入を元に融資額を決定する「収入合算」という方法を検討する方が少なくありません。親世帯の年収が400万円、子世代の年収が600万円であれば、合算した年収1000万円の基準で融資を申し込むことができ、融資が通る可能性がグッと高くなります。

親子ペアローン

親子ペアローンは親世代・子世代の収入を合算して融資を申し込むものではなく、親世帯と子世帯が別々に融資を申し込む方法です。それぞれがローンを組み、団信にも別々に加入し相互に連帯保証人になります。

この場合、子世代のローンは通っても親世代のローンが通らないなどのトラブルが起きることもあり、スムーズにいかないケースも。収入合算した方が融資がおりやすくなる銀行もありますので、親子ペアローンが組みにくい場合は収入合算で申込する方法がおすすめです。

親子リレーローン

親子リレーローンは、その名の通りリレーのように親世代から子世代へローンをつないでいく方法です。

基本的にはローンの返済は親世帯が負いますが、返済途中で病気や失業などの理由でローン返済が不可能になった場合、子世代が債務を引き継ぎます。

通常、住宅ローンは80歳までに完済することが前提になっているケースが多いのですが、親子リレー方式であれば親世代が高齢になっていてもローンの申込ができるのがメリット。

親世代が80歳になった時点で自動的に子世代が住宅ローンを引き継いで支払うため、高齢の親がローン申請しても大丈夫なのです。

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