WorldRX:eシリーズ開幕戦はSVGが初優勝。緊急参戦ルクレールは横転デビュー

 5月31日(日)にアブダビのヤス・マリーナ・サーキットで開催されたWorldRX世界ラリークロス選手権の新たな仮想空間シリーズ『WorldRX Esports』開幕戦は、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの元王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンが自身通算2戦目で早くも初優勝をマーク。イベント直前に緊急参戦を表明したフェラーリの次世代F1チャンピオン候補、シャルル・ルクレールはQ3で横転を喫するも、ウエットのQ4で勝利を飾るなど見せ場を作った。

 WorldRXプロモーターのIMGは、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの影響を受け、新たにeスポーツ・イベントの『World RX ESports Invitational Series』を開催。これまで2戦を実施し世界的な反響を得たことで、新たに全4戦の本格的バーチャル・シリーズ開催をアナウンスした。

 引き続きコードマスターズが提供する『DiRT Rally 2.0』を採用した同シリーズ開幕戦WorldRX Esports Abu Dhabi(ヤス・マリーナ)には、現WorldRX世界チャンピオンのティミー・ハンセンを筆頭に、弟のケビン・ハンセンやアンドレアス・バッケルド、ティモ・シャイダーらWorldRXレギュラー勢が多数エントリー。

 さらにモータースポーツ各界から豪華ゲストの参戦も実現し、5月3日(日)開催のMontalegre Edition(モンタリグレ・エディション)で初参戦初表彰台を獲得したSVGに加えて、同じくVASCドライバーのスコット・パイがルノー・メガーヌR.S.RXスーパーカーをドライブすることになった。

 WTCR世界ツーリングカー・カップ参戦中のエステバン・グエリエリは、同シリーズにも参戦中のALL-INKL.COM Muennich Motorsportにジョイントしてシャイダーと同じセアト・イビーザRXスーパーカーを、イギリス出身のGTドライバーであるトム・ブロンクビストや南アフリカ出身のケルビン・バン・デル・リンデらは、それぞれプジョー208WRXとアウディS1 RXクワトロを、そして元F1の跳ね馬乗りであるミカ・サロは、フィールドでは少数派のフォード・フィエスタRS RXスーパーカーEvo.4を、現役フェラーリF1ドライバーのルクレールはプジョーをチョイスした。

 現実のWorldRXでも開幕戦を務めた、F1トラック上のラリークロス特設コースでの1戦となった仮想シリーズ開幕戦。そこでふたたび輝きを放ったのはやはりSVGで、本職VASCのeシリーズでも連戦連勝を重ねる“eスポーツ・マイスター”は、現実では未経験のラリークロスでもドライビングの才能を遺憾なく発揮し、彼のプジョー208WRXは予選全セッションでトップタイムを記録。中間結果でTQ(トップ・クオリファイアー)となり、順当にセミ・ファイナル進出を果たす。

セミファイナル1では、現実のWorldRX王者と元VASC王者がプジョー208WRX同士の激しいツバ迫り合いを展開
混乱を尻目に、WECやDTMを経験するBMWファクトリー・ドライバーのトム・ブロンクビストがセミファイナル1を制した

■横転デビューのルクレール、Q4ではトップタイム記録

 そのセミ・ファイナル1はオープニングラップから接触、横転、コース外走行多発でマシンのパーツ飛散エフェクトが絶えない荒れた展開となるも、WorldRX王者ティミーと競り合ったSVGや、混乱をくぐり抜け首位快走のブロンクビストらがファイナルへと進出。同じくセミ・ファイナル2は弟ケビンとRX2 International Series参戦中のヘンリック・クログステッドのプジョー208WRX勢が最終決戦へと駒を進めた。

 一方、イベントのスターゲストとなったフェラーリ所属のルクレールは、Q2のオープニングでジョーカーを終えたグエリエリにノーブレーキで追突し、Q3では純白のプジョー208WRXがロールオーバーする苦難を経験するも、すべての予選ヒートで混戦のトラフィックを経験しながら光るスピードを披露。

 ウエット路面のQ4では初のセッショントップを記録するなど見せ場を作りながらも中間結果では12番手となり、VASCからゲスト参戦のスコット・パイや、Monster Energy GCK RX Cartelのバッケルド、ALL-INKL.COM勢のシャイダーやグエリエリとともに、惜しくもデビュー戦でのセミ・ファイナル進出を逃す結果となった。

 ハンセン兄弟やクログステッド、そしてBMWファクトリー契約ドライバーのブロンクビストらが顔を揃えたファイナルは、腕のあるドライバー勢の緊迫した勝負となり、6周のレースで一度も首位を譲らなかったSVGが“ライト・トゥ・フラッグ”でのラリークロス初勝利を手にした。

「あのメンバーでのレースは本当に楽しいものだったよ。僕にはサーキット・カテゴリーでの友人はたくさんいるが、このイベントを前にハンセン兄弟とオンラインでチャットをしながらたくさん練習を積んできたし、彼らからジョーカー消化のヒントを得ることもできて最高だった」と喜びを語ったSVG。

「このイベントに参加したドライバーは全員速く、本当に白熱したヒートがたくさんあった。とくにシャルル・ルクレールのドライビングは本当にクールだったね。参加できて本当に楽しかったし、スケジュールが許せばまた必ず戻って来て、ふたたび楽しい時間を過ごしたいと思っている」

 一方、混走だったこれまでの2戦とは異なりプロゲーマー専用のセミ・ファイナル、ファイナルも実施され、トップクラスのSimレーサー10名が参戦。フランス出身プロゲーマー兄弟の長男クエンティン・ダロルモが勝利を飾り、弟で『DiRT Rally 2.0』の現ワールドシリーズ王者でもあるキリアン・ダロルモが3位、その間に割って入ったチェコ出身のルカシュ・マテハが2位となっている。

イベント直前に参戦が来まったフェラーリF1のシャルル・ルクレールは、純白のプジョー208WRXをドライブ
ウエットのQ4では最後尾からの逆転で、初のセッション勝利を手にしている

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