「吉原アラート」も点灯 既に数件が閉店状態 従事者本人も「本当に仕事をして良いのか」

写真はイメージです。

「まだレインボーブリッジ虹色だけど、もう赤くなるの?」

東京アラートが発動された今夜、吉原から帰宅途中の車中、電話をよこした泡姫仲間の声は、不安と焦りに満ちていた。ようやく自粛解除となった6月から出勤再開予定とした仲間は多い、が、まさか二日でこうなるとは、我々も落胆は大きいとはいえ自粛解除前から吉原なソープ店はひっそり営業を続けてきたことも否めない。

高い家賃を払って営業する店側も、他の業種同様背に腹は代えられなかったのだ。もう閉店した店も数件、大家への3か月前の賃貸更新不可の契約義務もあるので、この時点で夏前に閉店を決めた店もあるだろう。

営業を続ける店は、近隣の眼を憚って表の戸も半分だけ開き黒服のボーイも目立たぬよう私服で仕事をしている。

待機部屋で仕事を待つ泡姫もマスクを取らず、コンパクトなアルコールのボトルを置いている姫も多い。みんな最大限気を遣ってはいるが、それでも来客は以前の数分の一、まして都庁からのアラートは更なる打撃だろう。

出勤した全員が仕事にありつけるわけではなくなり、人気姫さえも常連以外の客が来ない。常連さえも地方からは来られず、またテレワークで家族の目がある中、抜け出せないのもしかり。

ソープ一本で生活している姫達はまさに死活問題。しかしだからと言って、何がなんでもどんどん客が来れば良いともみな思ってはいない。

やはり本音は未知のウイルスが怖いのだ。

顔見知りの客しかとらない、狭い部屋での待機をさけて予約のあるときだけ出勤する。また手洗い、うがいを個室に入ってすぐに実践してもらう……。そんな姫も多い。

自分がコロナにかかることも、客にうつすこともあってはならないと考えるのが当然なのだ。

現役で仕事をしている私は今月から出勤を再開予定だが、正直まだ迷っている。

「本当に仕事をしてよいのか?」

風俗サイトの写メ日記になんと書いてよいのか戸惑う。「是非来てください、待ってます」とは素直には言えないからだ。風俗の業態の種類も増えて、コロナ前から吉原の店も淘汰されてきた。今回、吉原が縮小することは免れないだろう。

「店がなくなったらどうしよう!」タクシーの中の仲間の声は震えていたが、思い詰めたように最後に言った。

「今頑張るしかないね。コロナが活発になる前、夏のうちに頑張るしか! お客が少なくて、お茶を引く(仕事にありつけずに帰ること)覚悟で、一本でもお客が来ればいいと思って仕事に出るよ」

私は、彼女ほど強くはなれない気がした。東京アラート……。これから吉原はどうなってしまうのだろうか。今営業・出勤することは決して良いと言い切れないが、愛する街が、仕事がなくなってしまうことは耐えがたい。(文◎久世素子 吉原某店勤務)

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