【新型コロナ】3密回避へ客席減 でも熱気再び 横浜のジャズ名店

ついたてで隔たれた客席でライブを楽しむ来店客=2日夜、ジャズスポット「ドルフィー」

 日本のジャズ発祥の地・横浜を代表する名店に数えられるジャズスポットが、2カ月ぶりに営業を再開した。新型コロナウイルス感染症を巡る県の休業要請緩和を受け、3密(密閉、密集、密接)を回避するなど感染予防対策を徹底。座席を減らしたフロアは常連客ら15人で満席となり、この日を待ち望んだジャズファンが久しぶりの臨場感あふれるライブに酔いしれた。

 スポットライトが照らすステージで、ウッドベースが軽快なリズムを刻む。ドラムのシンバルが響き、ギターの音色にピアノが重なる。2日夜、1980年創業のジャズスポット「ドルフィー」(横浜市中区)。シニア層を中心に幅広い年代のジャズファンで座席を埋めたフロアに、以前の熱気が戻った。

 緊急事態宣言の発令に先立ち、4月1日から臨時休業していた同店。再開に伴いステージと客席の距離を保ち、最大収容人数を本来の4分の1に減らした。客席には仕切りを設けて間隔を空け、マスク着用や消毒用液の使用、換気の徹底で感染リスク低減を図る。

 「心が震える演奏が聞けるライブはやっぱり素晴らしい。みんなが協力して感染を予防しながらライブハウスを支えたい」。常連客の一人で、かつてジャズ専門レーベル「TBM」のプロデューサーとして活躍した藤井武さん(79)は興奮気味に語った。

 バンド仲間と出演したジャズギタリストの井上銘さん(29)は「2カ月ぶりのステージは楽しく、気持ち良かった。ここが自分たちの場所だと再認識できた」と汗を拭った。

 「ミュージシャンから演奏したいと声が上がり、この日を迎えることができた」。同店代表の小室恒彦さん(73)は、店長らと再開に向けた準備を進めてきた2カ月間を振り返り、今の気持ちは「感無量」と笑顔を見せた。

 ライブハウスは大阪などでクラスター(感染者集団)が発生した影響もあり、県内でも再開の見通しが立たない店が多い。小室さんは「若い世代にもジャズの楽しさを味わってもらいたいので、対策をしっかりしながら誰もが安心できる店にしていきたい」と力を込めた。

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