「丸いたい焼き」対馬で愛され66年 永留菓子店、6月30日閉店

タイがはねる様子を表現した、丸い形のたい焼きを作っている永留さん夫婦=対馬市、永留菓子店

 丸い形が愛らしい「佐賀(さか)のたい焼き」の店として、長年にわたり対馬市民に親しまれてきた同市峰町佐賀の「永留菓子店」が30日、対馬での営業を終える。店主の永留俊二さん(65)、佳代子さん(65)夫婦が高齢になり、本土在住の長女(37)のもとに身を寄せると決めたことが理由。同店は年内にも、東彼波佐見町宿郷に移転オープンする予定だ。

 永留さん夫婦は「先代から66年お世話になった対馬への感謝を込め、残りの時間も精いっぱい焼き上げていく。本土では長女に技術を伝え、波佐見の新名物となれるよう頑張りたい」と話している。
 同店は1954年、佳代子さんの父で和菓子職人だった永留重信さん=2017年に93歳で死去=が創業。丸いたい焼きは、他店との差別化を図ろうと重信さんが70年代半ばに考案した。普通の細長いたい焼きと違って、口先に尾を付けてはねるタイの姿をあしらった円形の金型で焼き上げるため、尾の中にもあんこが入っている。
 陸上自衛官だった俊二さんは81年に佳代子さんと結婚。退官後の2009年から重信さんに弟子入りし、佳代子さんと店を切り盛りしてきた。かつて和菓子店に勤務し波佐見町で暮らす長女から「店を継ぎたい」と申し出があり、「体力があるうちにあんの仕込みや生地の焼き加減を伝えよう」と夫婦で話し合い移住を決めた。
 閉店の知らせは5月1日に店頭に張り、以降は島民を中心に注文が殺到。休む間もなく千個以上焼き上げた日もあったという。俊二さんは取材に「島民のみなさんから寂しいと言っていただき、ありがたい。本土でも地元の方に愛される店を目指す」と話している。
 同店のたい焼きは黒あん、白あんの2種類でいずれも1個110円。営業時間は午前9時~午後5時(売り切れしだい終了)。定休日は月、金曜日。予約優先で販売する。電話番号は同店(0920.82.0814)。

今月末に閉店し、年内にも波佐見に移転オープンする予定の永留菓子店

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