散歩のときの事故、「犬の飼い主の責任」について弁護士が答える

東海ラジオ『タクマ・神野のどーゆーふー』(月~金9:00~12:00)の「教えて、どーゆーふー」(火10:00~)のコーナーでは、愛知県弁護士会の弁護士が、リスナーのからの相談に答えている。2日は、鈴木智洋(ともひろ)氏が「犬の飼い主の責任」について答えた。

相談内容

相談内容は「自転車通行可の歩道の住宅側を犬を連れて散歩していたところ、爆音を立ててバイクが走って来たため、犬が驚いて飛び跳ねた。そのときちょうど、高齢の女性が自転車で追い抜こうとしていたタイミングだった。今回は、何ごともなく済んだが、もし女性がケガをしたり、自転車に破損が生じたりした場合、どのような責任がかかるか。ちなみに、犬のしつけはしてある」というもの。

動物愛護法

鈴木「ペットを飼育するということは、本来は、個人の自由で行いうるものではあるが、あくまでも他人に迷惑をかけない範囲で許されるものでもある。動物愛護法7条が、動物の飼い主に対して、動物の種類、習性などに応じて適正に飼養、保管することで、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加えてしまったり、迷惑を及ぼすことがないように努力しなければならない、と定めている。」

地方公共団体の条例

「また、各地方公共団体では、動物愛護法に加えて、地方の実情を踏まえて制定された動物愛護及び管理に関する条例があり、同様の義務が課されていることが多いようだ。」

民法718条「動物占有者の責任」

「しつけはしていたということなので、法令上の義務は果たしていたと言えるが、今回のようにヒヤリとすることも、事故になることがあるかもしれない。事故が起きた場合、民法718条に、動物占有者の責任が定められているので、その責任を負うことになるかどうかがポイントになる。

『動物の占有者の責任』は、動物が他人に噛みついて怪我をさせた、というケースが典型例だが、動物が原因で怪我を負わせてしまったような場合、飼い主は、その動物の種類及び性質に従った相当の注意をもってその動物の管理をしていたことを主張立証できない限り責任を免れることが出来ない、というもの。」

「一般的なしつけも大事だが、事故が起きた場面における注意も問題になる。適切なリードをつけていたか、リードの長さは長すぎたりしていないか、自転車や歩行者が来ることに注意していたか、といった様々な事情が考慮要素になる。しかも、動物占有者の責任については、特に、ペットとして飼っている犬についてはほとんど免責を認めない、というのが裁判所の立場、傾向で、きちんとした注意をしていたにも関わらず、何らかの特段の事情、例えば、被害者側が犬を挑発した結果、犬が興奮して事故に結びついた、などといった事情がないと、責任を免れることは難しいかもしれない。」

損害賠償

「今回の場合は、犬がバイクの爆音に驚いたためなので、被害者が犬を挑発したわけではない、ということは、もし事故が起きていたら、責任を負うことになっていた可能性が高い。その場合、治療費、入院や通院のために必要となった交通費、入院通院によって仕事を休まなければならなくなったことへの補償である休業損害、慰謝料などに及び、後遺症が残ってしまった場合には、後遺症逸失利益や後遺症慰謝料なども賠償の範囲に含まれてくる。

ただ、今回の場合、後ろから自転車が走ってきたとすると、自転車に乗っていた人は、飼い主が犬を連れて歩いていることは見えていたはず。にも関わらず、注意して通行しなかったということだと、その不注意について、過失相殺といって、一定程度考慮して、損害額を減らすことはあるだろう。いずれにしても、いくらかは支払わなければならない。」

飼い主が気を付ける点

「普段のしつけは当然だが、散歩の際には、近寄ってくる歩行者、自転車等がいないか、周囲に十分に気を付けることが必要。また、最近では、飼っているペットが他人に怪我を負わせてしまった場合等の損害賠償について、その損害を填補する保険商品が保険会社から販売されている。万が一の事故のために、保険に加入することも検討してみても良いのかも。」

番組では『離婚、相続など、親族間の問題』や『近隣トラブル』など、弁護士への質問を募集している。宛先は、メール;doo@tokairadio.co.jp FAX:052-961-0077 ハガキ:〒461‐8503東海ラジオ『タクマ・神野のどーゆーふー・教えてどーゆーふー火曜日係』。

タクマ・神野のどーゆーふー

放送局:東海ラジオ

放送日時:毎週月曜~金曜 9時00分~12時00分

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