対馬「赤米神事」 地域一丸 継承へ田植え  脳出血で療養中 頭仲間の主藤さん「ありがたい」

昨年収穫した赤米の種もみを手に「今年も田植えができありがたい」と話す主藤さん=対馬市厳原町豆酘、主藤さん宅

 古代米の赤米(あかごめ)をご神体としてあがめる「赤米神事」(国選択無形民俗文化財)を唯一受け継ぐ長崎県対馬市厳原町豆酘(つつ)地区の農業、主藤(すとう)公敏さん(69)が昨年急病で倒れたことを受け、種もみを来年以降につなぐ田植えが5日、同地区の赤米神田であった。主藤さんの親族らでつくる赤米行事保存会の会員や、地元の豆酘小児童ら計約30人が力を合わせて手植えした。

 豆酘地区は日本の稲作伝来の地とされ、千年以上前から赤米を栽培。「頭仲間(とうなかま)」と呼ばれる住民で神事を続けてきた。しかし、農業離れなどで脱退が相次ぎ、2007年からは主藤さんだけが継承してきた。主藤さんは昨年10月の稲刈り直後に脳出血で倒れ、一時は意識不明の状態だったが、話したり、つえで歩いたりできるまで回復。現在は自宅で療養している。
 今年の田植え準備は、親族の山下成久(しげひさ)さん(71)が担当。昨年収穫した種もみのうち、約3キロを青々とした苗に育てていた。
 5日は、同じく親族で神事をつかさどる「お亭坊(ていぼう)」役の権藤勝己さん(66)が田植え前に水路にしめ縄を張って、祝詞を奏上。山下さんや権藤さんら会員5人が田植えを指導し、豆酘小の子どもたちは歓声を上げながら約5アールの田に苗を植えた。
 主藤さんは自宅での取材に「今年も田植えができありがたい」と周囲への感謝を述べた上で、「先祖代々受け継いできた赤米を絶やしてはいけないとの一念でリハビリに取り組んでいる。神事の継承に向け、できる限りの努力をしていきたい」と話した。

豆酘小児童と一緒に赤米の苗を植える山下さん(手前)ら赤米行事保存会の仲間=対馬市、赤米神田

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