機械に頼らず基本設計で抑制! マツダの考える踏み間違い事故防止策とは?【未来モビリティ総研】

マツダ安全装備体験会

踏み間違い事故を“高齢者”になって体感

「いかにドライビングポジションが重要か」をベースにしつつ、「高齢者のアクセルとブレーキの踏み間違い事故に対するマツダの対応」を体感する「マツダ安全装備体験会」が開催された。

ここ数年、高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違い事故は注目度が高まっており、ある意味、社会問題化しつつある。そこで実際に、高齢者と同じ身体能力を疑似的に再現し、その状態での運転を試してみようというのが、今回の狙いだ。

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マツダ安全装備体験会

「高齢者疑似体験セット」を装着すると、足はO脚になって、姿勢は前かがみになる。靴が重いこともあり、足を上げにくい。さらに足の内旋角が5度ほど悪化するというかなり動きにくい状態。足の内旋角とは、股関節とかかとを軸に足を回転する角度のこと。運転するときに、アクセル・ペダルからブレーキ・ペダルに足をひねる動作に該当し、それがやりにくくなるのだ。

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マツダ 2代目アクセラ

そうした「高齢者疑似体験セット」を使って、マツダの旧世代の「アクセラ」と現行の「マツダ3」を乗り比べてみた。ちなみに旧世代の「アクセラ」は、マツダが現在のようにドライビングポジションにこだわる前のクルマだ。

一方、「マツダ3」は、“人間中心思想”による理想のドライビングポジションに向けて改良されたもの。つまり、悪い見本と良い見本として2台が用意されていた。

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マツダ3は高齢者でもスムースに操作可能!

マツダ 2代目アクセラ
マツダ 2代目アクセラ

まず、旧「アクセラ」に乗り込む。「高齢者疑似体験セット」を身に着けていると、サイドシルをまたいでシートに座るまででも、ひと苦労。

そしてクルマは停止したまま、後退時をイメージしてアクセルを操作し、それから急ブレーキの操作を試みる。しかし、これがスムーズにいかないのだ。ブレーキを踏もうとすると靴がブレーキ・ペダルに引っかかる。

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マツダ安全装備体験会

さらに、足をひねり込むと、向こうずねの筋肉が張るのがわかる。何度か繰り返すと、痛くなってきた。もしくは、かかとを軸にひねりにくいので、一旦、足を上げてブレーキを踏みなおす。つまり、モタモタしてしまうのだ。やはり、高齢になって足の可動範囲が狭くなると、ペダルの踏みかえなどが億劫になることが実感できた。

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「歳をとれば仕方ないよな~」と思いつつ、今度は現行の「マツダ3」へ。すると、不思議なほど、足がひっかからないし、ペダルの踏みかえも辛くない。説明しているマツダの開発者を見ると、満面の笑み。これがドヤ顔というのだろう。

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秘訣はペダル! スペース拡大&オルガンペダルで超ラクに

では、なぜ最新の「マツダ3」は、足の可動域が狭くなった状態でもペダルの踏みかえがやりやすかったのだろうか。それには理由があった。

マツダ安全装備体験会

まず、「ペダル配置」の最適化によって、アクセルからブレーキに踏みかえるときの足の内旋角が減らされていた。旧「アクセラ」に対して、「マツダ3」はアクセルとブレーキのペダルが、20mm外側に配置されている。逆に言えば旧「アクセラ」はペダルの位置がより内側にあり、ブレーキを踏むときに「マツダ3」よりも、さらに大きく足を移動しなければならなかったのだ。

その足の内旋角は旧「アクセラ」で12度、新「マツダ3」で6度。足を内側にひねる角度が少ないだけ、新「マツダ3」はペダルの踏みかえが楽になるのだ。

ペダルの距離を拡大し段差も0に

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アクセルとブレーキの「ペダルの位置関係」も最適化されている。旧「アクセラ」はペダル間の距離が狭く、段差が大きい。そのうえ窮屈なのだ。そのため踏みかえ操作で、ペダルに引っかかってしまう。

新「マツダ3」は、ペダル間の距離を10mm拡大し、段差を6mm減らしている。動かす空間が広がったことで、ペダル操作がスムースになっていたのだ。

オルガンペダルの採用で操作性アップ!

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そして最後の理由が、オルガン式ペダルの採用だ。旧「アクセラ」のペダルは吊り下げ式を採用していたが、新「マツダ3」はオルガン式に。従来の吊り下げ式ペダルは上部の取り付け部を起点として、踏み込むほどに“上”に上がるような軌跡を描く。

しかし、足は下に向かって踏み込む。その違いから、深く踏み込むほど、かかとも奥に移動する必要があるのだ。

一方、オルガン式ペダルは、ペダルと足の軌跡が同一なので、かかとが安定する。安定することで、かかとを軸にしたペダルの踏みかえが楽になるのだ。

また、ペダルを踏みかえるときの足首の角度にも注目し、新「マツダ3」では、足首の角度を緩くすることで、動きやすさを高めているというのだ。

高齢化による足の可動域の減少を、ペダルの配置やドライビングポジションの最適化によってカバーする。それがマツダの考える「高齢者の踏み間違い事故」への対応だということが、身をもって体感できたのだった。

【筆者:鈴木 ケンイチ】

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