「ベトナム人? お母さんが?」家族の秘密を伝える日がやってきた。『こんぱるいろ、彼方』

1978年、 台風の日。 戦争が終わり、 体制の変わったベトナムから逃れるため、 スアンと子どもたちは船に乗った――。 サラリーマンの夫と二人の子どもと暮らす真依子は、 近所のスーパーの総菜売り場で働く主婦だ。 職場でのいじめに腹を立てたり、 思春期の息子・賢人に手を焼いたりしながらも、 日々は慌ただしく過ぎていく。 ある日、 大学生の娘・奈月が、 夏休みに友人と海外旅行へ行くと言い出した。 真依子は戸惑った。子どもたちに伝えていないことがあった。

真依子は幼いころ、 両親や兄姉とともにボートピープルとして日本に来た、 ファン・レ・マイという名前のベトナム人だった。 真依子の母・春恵(スアン)は、 ベトナム南部ニャチャンの比較的豊かな家庭に育ち、 結婚をした。 夫・義雄(フン)が南ベトナム側の将校だったため、 戦後に体制の変わった国で生活することが難しくなったのだ。 奈月は、 偶然にも一族の故郷ベトナムへ向かう。 戦争の残酷さや人々の哀しみ、 いまだに残る戦争の跡に触れ、 その国で暮らす遠い親戚に出会う。

自分のルーツである国に深く関心を持つようになった奈月の変化が、 真依子たち家族に与えたものとは――?家族小説の名手が、 70年代末にベトナムから来日したボートピープル一家のその後を描く新境地。

――本屋lighthouse 関口竜平

すぐれた小説は私たちを「対岸」に連れて行ってくれる。

そこには未知だったものや、 知ってはいたが無関心だったものがある。

――文真堂書店ビバモール本庄店 山本智子

人間の持っている強さ、 優しさが胸を打つ。

――うさぎや矢板店 山田恵理子

ベトナム戦争、 沖縄の歴史、 ただの言葉だけでなくて当事者の言葉を伝えてくれて、 私たちは知ることが大事だと小説の力に胸が熱くなる。

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