妻はなぜ、家事育児の"対話なきワンオペ"に陥るのか?

期の変わり目である3月から4月にかけて、夫が転勤で単身赴任になった方もいるかもしれません。 徐々に企業側も社員側も意識が変化しつつあるとはいえ、今も会社都合による、転居を伴う転勤が行われています。

夫の単身赴任によって、子どもたちとともに残された妻は、必然的に家事育児のワンオペ状態になります。


ワンオペを経験した人は7割

仕事と家庭の両立を希望する"働く主婦層"にしゅふJOB総研が行なった調査によると、 家事育児のワンオペ状態を経験したことがある人(「今もワンオペ」「ワンオペだった時期がある」いずれかの回答者)の比率は7割を超えました。(n=664)

家事や育児のあり様は、夫婦によってバランスの取り方が異なります。表面的な情報だけで、ワンオペ状態が良いか悪いかを一概に判断できるものではありません。

しかし、ワンオペ状態を経験したことがある人に、なぜそうなったのかを質問したところ、由々しき問題が潜んでいることがわかりました。

話し合いなしが約6割

ワンオペ状態を経験したことがある人に絞って、「家事や育児のワンオペ状態になった理由は何でしたか」と尋ねたところ、結果は以下となりました。

「家事育児が好きなので、自ら望んでそうした」と回答した人は2.3%しかいません。また「家族で話し合った結果、自分の役割になった」と回答した人も 4.4%に留まっています。自分の意思でワンオペ状態になったという人の比率は、あわせても10%にも届いていません。

一方、「配偶者が転勤で単身赴任となった」「配偶者がおらず家事育児を自分が行うしかなかった」 と、致し方ない事情でワンオペ状態になった人の比率は合わせて22.7%です。

圧倒的多数を占めたのは「家族で話し合うことなく、自分の役割になった」という回答で58.3%に及びます。およそ6割が話し合いを経ずしてワンオペ状態になった、"対話なきワンオペ"なのです。

"対話なきワンオペ"の年代間格差

"対話なきワンオペ"に世代間の違いはあるのでしょうか?ワンオペ状態になった理由を年代別にクロス集計したところ、以下のようになりました。

「家族で話し合うことなく、自分の役割になった」を選んだ人の比率は、年代が低くなるごとに多くなっていることがわかります。

一方、反比例するように「配偶者が転勤で単身赴任となった」と回答する人の比率は、年代が高いほど多くなっています。皮肉なことに、転勤による単身赴任の比率が少ない世代ほど、"対話なきワンオペ"状態になる比率が増えてしまっています。

一般に、低い年代層の夫の方が家事育児に対する抵抗感は少ないように思われがちです。しかし、"対話なきワンオペ"状態になっている比率だけを見れば、むしろ上の年代より多く、転勤をきっかけにワンオペになったケースと合わせると、年代間に大きな差は見られません。"対話なきワンオペ"は年代による価値観の違いから生まれている訳ではないようです。

なぜ"対話なきワンオペ"になるのか

では、なぜ"対話なきワンオペ"状態になってしまうのか?調査に寄せられたフリーコメントの中に、原因を探るヒントが隠されているように思います。

「家事育児は女性の方がどうしても抱えてしまう」「夫は嫌な顔をするので、お願いすることもしたくない」「男性が家事育児をするのは無理だと思っている」「相手に期待はしなくなった」「夫が自分で感じて気付いてくれるのを待つしかないと思ってます」

長い間、夫が働き妻は家庭を支えるという役割分担が常識とされてきました。その常識が前提として受け継がれる中で、夫も妻も、互いの役割について話し合いの場を持つことの必要性を感じてこなかった可能性があります。さらにフリーコメントにも見られるように、妻の側にはあえて話し合うことへの心理的抵抗もあるようです。

しかし時代は移り変わり、夫婦が協力して家計を支える時代になりました。それであれば、家事育児についても夫婦で協力して取り組むことが当たり前になっていいはずです。

もちろん、話し合いの結果、妻や夫が家事育児をワンオペすることがベストだという場合もあると思います。夫婦の数だけちょうど良いバランスというのは異なるものです。問題となるのは、話し合いもなく、夫婦いずれかが望まない形で家事育児のワンオペ状態になってしまっているケースです。わが家の家事育児バランスは今が本当にベストなのか。確認する意味でも、ぜひ一度ご夫婦で話し合いの場を設けてみていただきたいと思います。

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