東芝、少量多品種の半導体製造で発生する不良を早期に発見するAI技術を開発

近年、半導体製造の分野においてAIを用いた生産性向上の取り組みが進んでいる。例えば、製品の品質検査で得られる不良の種類や発生箇所といった品質データをAIにより分類することで、多様な不良の発生を早期に発見し、生産性の向上につなげることができる。一方で、多様な顧客ニーズや市場変化に対応するため、少量ずつ多様な仕様の製品を製造する少量多品種製造が求められることが多くなっている。AIで高精度の自動分類を行うためには大量のデータを用いる必要があるが、生産量が少ない製品では品質データも少量になり、分類精度の低下が課題となる。また、製品の種類が多い場合には、各製品の自動分類の結果を人が確認する回数が増加し、分析作業が煩雑になるおそれがある。そのため、少量多品種の生産が主となる半導体工場では、AIによる自動分類を導入することが困難だった。株式会社東芝は、少量多品種の半導体製品の製造において、異なる種類の製品に共通して発生する不良を早期に発見するAIを開発した。同技術は、個々の製品のデータが十分に得られない場合においても、複数の製品のデータを統合することで解析に使用するデータ量を増やして機械学習を行い、不良を分類することができる。ウェハ上の製品チップ数が異なる品質データの特徴量を共通に扱う製品またぎ処理を行うことで、複数の種類の製品の品質データを統合的な1つの品質データとして同時に分類する。公開データを用いた実験では、同技術により44製品の品質データを製品またぎ処理を行って共通に扱うことで、少量製品の品質データを大規模な統合品質データの一部として分類することができ、データ量の増加により全製品の分類精度が75.3%から83.3%に向上した。少量製品においては、分類精度が最大で50.0%から87.5%に向上した。また、統合品質データの分類結果を個別の製品毎に集計して可視化することで、複数の種類の製品に共通する不良の発生を一目で確認することができる。これにより、従来人手に依存していた不良監視作業を自動化できるようになり、時間削減と人件費の削減に貢献する。

今回、同技術を東芝デバイス&ストレージ株式会社グループ半導体工場の80%以上の製品解析に適用したところ、1人が1日あたり約4.2時間かかっていた不良監視作業を従来の約1/8の30分に短縮することができた。今後は社内外の半導体工場への適用拡大を目指し、少量多品種の半導体製造における品質検査の効率化に貢献するとした。

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