自宅の塀に描き続け20年 妻の大病克服祝いをきっかけに 10作目は「子どもとクジラ」 

佐々野さんがクジラをモチーフに描き上げた約20メートルの壁画=五島市吉田町

 約20年にわたり、自宅前の塀にさまざまな絵を描き続けている長崎県五島市吉田町の佐々野求(もとむ)さん(63)が、節目となる10作目を完成させた。子どもたちが、クジラを一生懸命に運ぶ様子を描いたにぎやかな作品。佐々野さんは昔からクジラに愛着があり、「大変な世の中だけど、クジラのエネルギーで島の子どもたちや、絵を見た人を元気づけたい」と話す。
 絵が趣味の佐々野さんは20年ほど前、大病を克服した妻を祝おうと、初めて壁画を制作。この時も「生態や体の形など全てが大好き」というクジラを描いた。その後、佐々野さんは1、2年ごとに、犬や猫、地域の小学生など多様なテーマで絵を描き直してきた。
 壁画は今では、ちょっとした地元の“名物”に。佐々野さんが壁を白く塗り直し始めると、「次は何を描くの」と楽しみにしてくれる人もいるという。
 塀は道路に面していて、高さ約1.3メートル、長さ約20メートル。昨年秋に鉛筆で下絵を描いた後、今年2月からエアブラシや筆を使ってペンキを塗り、4月に完成した。自由に泳ぎ回るザトウクジラ4頭の他、シロナガスクジラとマッコウクジラを担ぎ上げたりトラックに載せたりして運ぶ子どもたちを描いた。クジラの姿は、図書館で借りた図鑑を何度も見返し、細部まで丁寧に表現している。
 佐々野さんは「今回も描き上げることができ、ほっとした。(2年ごとに描き直すことで)2年間で自分の腕がどれだけ上がったか、反対に腕が落ちていないか確かめる感じ。この道を通る人に、ちょっとでも喜んでもらえれば」と語った。

© 株式会社長崎新聞社