なぜ工藤監督は高橋礼の開幕ローテ入りに慎重か? 避けたい再離脱と台所の余裕

ソフトバンク・高橋礼【写真:藤浦一都】

工藤監督は9日の試合後に高橋礼の中継ぎ起用の可能性を示唆

4年連続日本一を狙うソフトバンク。6月19日の開幕に向けて練習試合を通して調整を進め、選手の見極めやふるい落とし、そして様々なシミュレーションを進めている。9日のオリックス戦では先発ローテ候補の高橋礼投手とリック・バンデンハーク投手が登板。2人が揃って4回無失点と好投し、結果を残した。ただ、工藤公康監督はこの2人に対して、少々異なるコメントを残している。

バンデンハークについては「今日の感じはいいと思いましたけどね。この感じが出せるなら先発でいけるんじゃないかなと思います」と先発ローテ入りを匂わせた一方で、高橋礼については「先発の中に入れるかどうかはちょっと分からない部分はある」と慎重な姿勢を崩さない。そして、開幕時は中継ぎに組み込む可能性も言及した。

なぜ、工藤監督は高橋礼のローテ入りを思い止まるのか。それはやはり高橋礼が故障から復帰して、まだ間もないからだ。

宮崎キャンプ中に左太もも裏を肉離れして離脱していた高橋礼。3月下旬に一度はブルペン投球を再開させたものの、新型コロナウイルスの影響で活動が休止に。自主練習が再開されてからも、“三密”を避けるためにトレーナーなどのケアを受けることはできず、なかなかトレーニングの強度も上げられなかった。

怪我をして治療している間に、特に故障箇所の筋力は衰えてしまう。怪我が癒えても、本来の筋力には戻っていない。その中で急ピッチに開幕への準備を進めてきた。5月28日の紅白戦で実戦復帰を果たしたばかり。対外試合は2日のオリックス戦、そしてこの日の同戦と、まだ2試合しか登板していない。

ローテの残る3枠を5人が争う状況も高橋礼の中継ぎ起用を可能にする

高橋礼自身も「あまり自分の中で納得できる内容にならなかったな、と。自分的には全然強いボールいっていないなと思うんですけど」と語るように、自分が思い描くイメージとボールが一致していないよう。「キャッチャーの方も大丈夫と言ってくれる。自分の感覚というのはそこまで大事じゃないかもしれない」とも語るが、本来の姿ではないと言えるだろう。

その状態で果たして見切り発車的に先発させるのが、チームにとって得策なのかどうか。120試合の短期決戦となる以上、最も避けたいのは再び故障し、長期的に戦列を離れてしまうこと。そうなるくらいならば、慎重を期して調整させ、万全の状態に戻ってから先発ローテに戻すことも賢明な判断だと言える。

そして、幸いにも、高橋礼が開幕ローテから外れたところでローテが埋まらないということがない台所事情にある。当確なのは開幕投手の東浜、和田、新助っ人のムーアの3人。残る3枠を高橋礼、バンデンハーク、石川、二保、松本の5人が争う構図になる。仮に高橋礼を開幕ローテから外したとしても、十分に枚数は足りる現状にある。

例え、高橋礼を中継ぎに置くとしても、それはあくまでも後の先発復帰のための措置であって、“配置転換”するのとはワケが違う。開幕は中継ぎ(というよりも第2先発の立ち位置か)でスタンバイさせ、中継ぎ登板を経て、本来の高橋礼のあるべき姿へと戻していく。状態が万全に戻ったと判断すれば、先発ローテに組み込んでいこうということだ。

練習試合は残る5試合。高橋礼はこの日が練習試合では最後の登板機会となるはずである。残る投手たちの状態を見極めた上で、工藤監督はいかなる決断を下すのか。ソフトバンクの開幕ローテ争いに注目だ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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