大村市「待機児童ゼロ」達成 さらなる定員拡充が課題に 人口推移見越し保育士確保へ

大村市における保育園等の利用申し込み数の推移

 人口増加に伴い、希望しても認可保育所などに入れない待機児童が問題となっている大村市。昨年度は70人(4月1日時点)と県内で唯一待機児童が発生していたが、施設の定員拡大などで本年度は「待機児童ゼロ」を達成した。ただ、今後数年間で利用希望者は増加する見込みで、保育士確保による施設の定員拡大などが課題となっている。

 大村市では年々人口が伸び続け、共働き世帯も増加。これに伴い保育園などの利用希望者も増加傾向にあり、申込数(4月1日時点)は2015年の2832人から20年は3325人にまで増えている。
 こうした中、17年4月に待機児童が99人発生。市は施設の新設や拡充に補助金を出すなど対策を講じ、受け入れ枠を2715人(17年4月)から3025人(19年4月)にまで拡大した。しかし、4月の待機児童は18年75人、19年70人と解消には至っていなかった。
 これを受け、昨年度は受け入れ枠をさらに拡大。希望の園に入れなかった家庭に対しても個別に別の園を案内するなどして、20年4月に「ゼロ」を達成した。
 ただ、現時点で年度途中の入園を希望する待機児童はすでに発生し、今後も増える見込み。特定の園を希望する「潜在的待機児童」も数十人に上る。市は本年度、家庭の状況に応じた情報を提供する「保育コンシェルジュ」を採用するなど、「年度末までに少しでも待機児童を減らしたい」(市こども未来部)としている。

 一方、今後の人口推移などを見越した対策も課題となっている。
 市は今年3月、24年度までを期間とする「第2期おおむら子ども・子育て支援プラン」を策定。その中で、保育園などの利用希望者はピークの23年度まで増加を続け、同年度末で440人の待機児童が発生すると試算している。
 プランでは施設の定員を114%まで拡大することで待機児童の解消を目指すとする。今後大村市が人口減に転じることなども見越し21年度以降は園の新規開設はせず、幼稚園の認定こども園移行や既存施設の定員増で対応する方針だ。
 そのために必要となるのが新卒の保育士や、資格を持ちながら保育士の仕事に就いていない「潜在保育士」の確保。市内で働く保育士は現在約760人いるが、市は24年度末までにさらに70人ほどの確保が必要になると試算しており、潜在保育士の情報提供を県に求めるなど積極的にアプローチしたいとしている。
 ただ、保育士確保に向けた主な方策は各学校などでのPRや、市外からの転入者を対象とした「保育士等就職祝金」などで、決め手に欠いている。市内のある保育関係者は「新卒の多くが都会で就職し、それ以外の人を争奪している現状。市独自の手当てを打ち出すなどしなければ、114%の目標達成は難しいのでは」と指摘する。
 市こども未来部の山中さと子部長は「保育士確保や働きやすい環境作りに向け、市や園側がそれぞれできることに取り組み、連携した対応を取っていきたい」と話した。

待機児童への対応が課題となっている大村市。市は保育コンシェルジュを採用するなど対策に取り組んでいる=市こどもセンター

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