オーストラリアの大火災と環境保護に逆行する米大統領 圧倒的にリベラル派が多く住む米西海岸から、トランプ大統領と共和党の政策に真っ向から反対する日系アメリカ人ジャーナリスト、マイク佐藤がお届けする「トランプを支持しない人たちの声」。今回は、世界的な環境保護政策や気候変動への動きに逆行して、そうでないことを推し進めるトランプ大統領と彼に献金する人たちについて。

年が明けても止まないオーストラリアの大火災

謹賀新年。新しい10年が幕を開けたが、オーストラリアの大火災は今も燃え続けている。

そして、トランプ大統領はイランの最高指導者ハメネイ師と弾頭を交換し、トランプ大統領率いるホワイトハウスは、米上院の共和党員に「トランプ大統領の弾劾裁判で嫌疑を晴らすこと」を保証するように指示した。

その間もオーストラリアの森林は燃え続け、海水温は記録的な高温に達している。にもかかわらず、トランプ大統領と共和党議員たちは政権を握って以来、世界的な動きに逆行して、大気汚染防止策や採掘を制限することなど95にも及ぶ規制を解除し続けている。

トランプ大統領の支持母体はこれらを疑問に感じないのだろうか?

トランプの支持母体と呼ばれる人たち(過激で原理主義者の集会参加者、周囲から取り残されていると思う者、田舎の有権者など)は、世界で大火事が起きていることや、海の水温が上昇していることが心配ではないのだろうか?

トランプの支持母体と呼ばれる人々は、トランプが自分のしたいことをするために国が保有する経済と軍隊を使って世界の国々をいじめることが、本当に「アメリカを偉大にすること」だと思っているのだろうか?

トランプの支持母体と呼ばれる人々は、トランプが自分の個人的な利益のために米国の大統領オフィスを使用し、個人所得の中身の開示をせず弾劾されることを本当に認めているのだろうか?

トランプの支持母体と呼ばれる人々は、トランプがアメリカを環境保護と気候変動に対する世界の動きに反する方向へ加速していることが、まったく気にならないのだろうか?

世界の動きに逆行してでも環境保護政策を止めたいトランプ政権

なんと、トランプは自身の次期大統領選キャンペーン費用を、昨年の半期だけで$170ミリオン以上(日本円で約187億円)も集めた。前述したトランプ支持母体と呼ばれる一般人たちが、トランプの動きを是認して、今年の次期大統領選キャンペーンのために巨額な資金を寄付したのだろうか?

いいや、違う。トランプの支持母体と呼ばれる上記のような人たちには、そんな資金力はない。

巨額な寄付金の出元は、「トランプが環境保護規制を解除し、法律を改正すれば得をする人たち」、つまりトランプ政策によって得をする大企業や大富豪たちだ。

もっともトランプの支持母体である人々は明らかに、トランプの指が核戦争への引き金に掛かっていることも、女性を蔑視することも、移民を忌み嫌うことも、マイノリティーを重要視しないことも、ロシアのプーチン大統領を友と呼んで自分の政治的な得のためにウクライナの安全をトレードすることも、自分が弾劾されないように上院共和党議員になんとかしろと指示を出したことも、まったく気にならないようだ。そして、トランプ自身が所有するような豊かな企業と裕福な支持者たちもまた、そんなことは気にしないのである。

「恥ずべきこと」は何か? それは、トランプの行動や布告に対する共和党リーダーたちの沈黙と共謀だ。特にひどいのは弾劾裁判に対する憲法保護を非難していること。そのような共和党議員たちは、支持母体を形成する過激な有権者たちだけでなく、富裕層や大企業をも代表している。彼らは宗教の自由や社会的および経済的正義など気にはしない。彼が気にするのは、彼ら自身と彼らのような人たちだけだ。

だからこそ、彼らの得になる国を作ってもらうために、たった半年で$170ミリオン(約187億円)もの巨額な金をトランプに献金してしまうわけだ。

では、その中での「悲劇」とは何か? トランプと共和党議員たちはあと数年で死ぬだろうが、今日の子供たちはそうはいかない。子供たちには、非常に富裕か貧乏しかない経済や、毒素が入った死んだ土地や水、救い難い貧困と飢餓、世界的な気象危機という世界が残されるのだ。それが悲劇でなく、なんであろうか。

政治的な権力の遂行というレガシーは公正のためのものであり、個人の得のために使うものではない。

恥ずべきことと悲劇。トランプ大統領と共和党の統治。謹賀新年。オーストラリアの大火災。

2020年1月24日

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