客足待つ長崎中華街 コロナ禍 徐々に営業 感染予防など試行錯誤

円卓を囲み、中華料理を楽しむ親子=長崎市新地町、会楽園

 長崎県の食文化を代表する長崎新地中華街(長崎市新地町)が徐々に通常の営業に戻りつつある。新型コロナウイルス禍で一時休業や時短を余儀なくされ、いまだ客足は以前と程遠いが、感染予防を徹底、試行錯誤しながら、宴会需要の回復を待っている。
 9日正午すぎ、ある料理店内には客の姿が見えず、従業員が手持ち無沙汰にしていた。中にはいったん再開し、また休業に入った店も。年中無休だった製麺所は週2日休んでいる。
 今年は長崎ランタンフェスティバルから振るわなかった。大型連休中も観光客が途絶え、ほとんどの店がシャッターを閉めていた。
 「長崎大水害で浸水しても2日しか休まなかった。こんな経験は初めて」。地場大手の京華園を20代から切り盛りしてきた劉済昌代表取締役(75)が苦笑いする。20日間の休業を経て5月11日、昼営業だけで再開し、弁当のテークアウトを始めた。だが客入りが1桁の日もあった。その後、夜の閉店時間を徐々に拡大。8月まで数千人分の宴会予約が全てキャンセルされたが、最近ようやくぽつりぽつりと入り始めた。
 中華の宴会といえば大皿を囲むスタイルが定番。だが感染を警戒し「小皿に取り分けて出せるか」との問い合わせもある。劉美昌マネジャー(42)は「大皿は冷めにくく、見栄えも魅力」としつつ、できる限り対応するという。
 江山楼は3店舗のうち新館だけを開け、閉店は1時間前倒しのまま。メニューは10品に絞っている。王玉英代表取締役は「出来たてにこだわる」と弁当には手を出さないという。
 近くの歓楽街では県外客を断る店頭表示を見掛けるが、「観光で成り立っている。ありえない」と王氏。席数を3分の1減らし、調味料はその都度差し出す。希望があれば卓上に飛沫(ひまつ)防止用アクリルボードを置く。「新しいおもてなしを日々模索している」
 コロナに負けるな-。龍園は店先の黒板にこう書き、通常850円のちゃんぽんを700円で提供。しかも全メニューを持ち帰れるようにしている。
 会楽園は5月7日にテークアウトから始め、21日に昼のみレストランを再開。林慎太郎代表取締役(45)は、人と明かりのない夜の中華街を見て「元気にやっていると発信しなければ」と6月1日に通常営業に戻した。既に数千人分の予約が消え採算は厳しいが、従業員40人の生活も考え決断した。少しずつ地元客らが戻り始めたが、「県外客のウエートは大きい。せめて地元企業の会合自粛が緩和されれば」と願う。
 週末の6日夜、会楽園の個室は久しぶりににぎやかだった。娘と孫の6人で訪れた女性(64)は「ずっと外食を控えていたのでテンションが上がる。やっぱりみんなで円卓を囲むのっていいですね」と顔をほころばせた。

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