被害者救済へ審査会 川崎市、ネット上のヘイト攻撃対策で初

代表質問に答弁する福田市長=川崎市役所

 インターネット上のヘイトスピーチ対策に取り組む川崎市は10日、救済措置の実施に当たり有識者の意見を聴く「差別防止対策等審査会」を近く初開催すると明らかにした。同日開かれた市議会第4回定例会の本会議で、福田紀彦市長が「意見を聴く方向で検討している」と答弁した。意見聴取は市条例に定められたプロセスで、ネット上の書き込みがヘイトスピーチと判断された場合、市はプロバイダー企業に削除を求めるなどして被害者の救済を図る。

 「市差別のない人権尊重のまちづくり条例」はヘイトスピーチの刑事規制を含めてあらゆる差別を根絶していくとうたい、昨年12月に制定された。ネット上の差別的言動は罰則の対象外だが、被害者の救済と拡散防止措置の実施を明記。特定の市民を排斥する言動や、市内で行われたデモや街宣といったヘイト行為の動画などについて削除要請や発信者情報の開示請求などを行うとしている。

 市は今年4月からネットモニタリングを行うIT企業にヘイトスピーチの検索作業を委託。市人権・男女共同参画室によると、「条例上、措置を講じる必要がある書き込みが複数確認されている」という。現在、審査会委員の弁護士、憲法学者ら5人を招集するための準備を進めている。

 条例は7月1日から全国初の罰則適用が始まり、全面施行となる。代表質問で、自民党の野田雅之氏から決意を問われた市長は「本市はさまざまな人が集まり発展してきた。その多様性を誇りにあらゆる差別を許さない決意で、差別を生まない土壌を築いていく」と改めて表明。

 ネット対策も念頭に「今年は条例に基づき具体的な取り組みを始めていく重要な1年」との認識を示した上で「全ての市民が不当な差別を受けることのないまちづくりに取り組み、公正な社会の実現を目指して条例を運用していく」と差別の根絶へ意欲をみせた。

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