ポップミュージックの当たり年「1958年」に生まれたマドンナのターニングポイント 1986年 6月11日 マドンナのシングル「パパ・ドント・プリーチ」がリリースされた日

プリンス、マドンナ、マイケル・ジャクソン、この3人は同い年!

よく農作物や果物の収穫の多い年を “当たり年” と言うが、人間にも当てはまることがある。例えば、サッカーでは1972年が当たり年で、リバウド、ジネディーヌ・ジダン、パベル・ネドベド、ルイス・フィーゴの4人のバロンドール(Ballon d'Or、欧州年間最優秀選手)受賞者がこの年に生まれている。

そして、ポップミュージックの世界で当たり年と言えば、1958年をおいて他にはないだろう。何しろ、この年の6月7日にプリンスが、8月16日にマドンナが、そして8月29日にはマイケル・ジャクソンが生まれたのだ。

この3人が同じ年の夏に(しかも全員が米国中西部で)生まれたのは、単なる偶然として片付けてしまっては勿体ない気もする。いずれにしても、もはや健在なのはマドンナだけになってしまった訳で、そのことだけでも彼女が偉大だと言っていいんじゃないかと思う。

米CBS「カープール・カラオケ」で魅せたマドンナのサービス精神

そんなマドンナが2016年、満を持して「カープール・カラオケ」(※1)にやって来た。日本でもTVのワイドショーなどで取り上げられていたから、彼女にニュースバリューがあるということなのだろう。

映像の中で彼女は、「ヴォーグ」でヴォーギング(腕を中心に指先まで使った早い動きやポージングで色っぽく魅せるダンス)、「ビッチ・アイム・マドンナ」でトワーク(お尻を激しく動かすヒップホップのダンス)を披露したかと思えば、「ドント・クライ・フォー・ミー・アルゼンチーナ」をアカペラで歌ったりと、サービス精神旺盛な一面を見(魅)せてくれている。中でも、僕にとって最も印象に残った… というか、懐かしかったのが「パパ・ドント・プリーチ」だ。

バッサリとショートカット、新しいイメージの「パパ・ドント・プリーチ」

「パパ・ドント・プリーチ」は、サードアルバム『トゥルー・ブルー』からのセカンドシングルで、彼女にとって4曲目の全米No.1である。シンセサイザーの重厚なストリングス音源が緊張感を漂わせ、チョッパー(今で言うところのスラップ)風のシンセベースがかなり利いている。ちなみに、このイントロは、ABBA の「アズ・グッド・アズ・ニュー」からインスパイアされたらしい。

当時は、ヘアスタイルと歌詞も大いに話題になった。ビデオクリップの中の彼女はバッサリとショートカットに変わっていたし、歌っていた内容も、未成年未婚女性の妊娠・出産という米国社会が抱える問題をクローズアップしたものだったからだ。

この曲から、前作『ライク・ア・ヴァージン』で定着した(下手すれば下品な)セクシー路線に加えて、少しずつインテリとか、社会派といったイメージが彼女に付いてきたような気がするし、彼女のキャリアにとってもターニングポイントだったのではないかと思う。

あっ、この曲がレベッカの「MOON」に似てるというツッコミは、今日は “なし” ということで。

Song Data
■ Papa Don't Preach / Madonna
■ 作詞・作曲:Brian Elliot, Madonna
■ プロデュース:Madonna, Stephen Bray
■ 発売:1986年6月11日

Billboard Charts
■ Papa Don't Preach / Madonna(1986年8月16日 全米1位)
■ Vogue / Madonna(1990年5月19日 全米1位)
■ Don't Cry For Me Argentina / Madonna(1997年3月1日 全米8位)
■ Bitch I'm Madonna / Madonna(2015年7月4日 全米84位)

Billboard(Album)
■ Like A Virgin / Madonna(1985年2月9日 全米1位)
■ True Blue / Madonna(1986年8月16日 全米1位)

編集部注:本文にあります「カープール・カラオケ」については、
■ レジェンド登場、ポール・マッカートニーが「カープール・カラオケ」に出演!
■ スター誕生といえば、レディー・ガガよりバーブラ・ストライサンド
■ どうしたスティング、なんと、歌うウェイター役でコント出演!
■ ボウイやジャガーだけじゃない、“サー” エルトン・ジョンを忘れるな!
■ これが真のエンターテイナー、スティーヴィーは音楽の魅力だけじゃない!
■ ブロンド好きのスーパースターがカープール・カラオケにやってきた!
■ CBSの「カープールカラオケ」番組ヒットの功労者はマライア・キャリー!
■ きっかけはジョージ・マイケル、カープールカラオケはここから始まった!
■ 30年越しのリック・アストリー ~ トレヴァー・ホーンと共演篇
…でも紹介されています。是非こちらもご覧ください。

※2017年6月7日、2018年6月11日に掲載された記事を再アップデート

カタリベ: 中川肇

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