【新型コロナ】先生は〝東チューバー〟 秦野・東中で授業動画56本公開 朝礼もアプリ活用

「東チューブ」で英語を指導する佐藤教諭(秦野市広報広聴課提供)

 新型コロナウイルス感染症に伴う休校措置で授業時間の確保が課題となる中、神奈川県の秦野市立東中学校(同市寺山)がユーチューブチャンネルを開設し、授業の動画配信を始めた。通常授業と組み合わせて復習などで活用してもらうことで、生徒の学習をサポートする試みだ。感染の第2波への備えにもなることから、市教育委員会は同校の実践をモデルに、教育現場のICT(情報通信技術)化を進める。

 チャンネルは東中にちなみ、「TouTube(東(とう)チューブ)」と名付けた。5月12日から教室などで撮影し、学校再開前の同28日以降、1~3年生の各教科56本を順次公開した。

 「TouTuberの佐藤といいます。自己紹介します。リスニングしてみてください」─。英語の動画では、1年生を担当する佐藤亮仁(あきひと)教諭(33)が発音を指導。数学では教員が「動画を止めて解いてみよう」と呼び掛け、続いて解き方の説明を始めた。特別支援学級の動画では、教員が体操を実演した。

 動画は生徒と保護者のみ視聴でき、いずれも2~18分程度。当初は不安そうだった年配教員も次々と参加し、今後も15本ほど追加される予定という。

 佐藤教諭は「動画を繰り返し再生することで、発音や解説を何度も聞き直せる」とインターネットのメリットを強調。国語担当の福本純也教諭(31)は「話す速さを意識するようになり、伝わりやすい教え方を振り返ることができるようになった」と述べる。

 配信が決まったのは休校中の4月下旬。生徒たちが課題のプリントに取り組む中で、解説の必要性を感じた佐藤教諭が校内で提案した。市教委からICT教育実証実験のモ デル校としての打診を受け、全校生徒278人向けに正式に導入することを決定。学校再開に伴い、通常授業を補完する形で活用することにした。

 オンライン化の試みは、各クラスでの毎日の朝礼にも取り入れた。同校は今月12日まで、クラス内を2班に分けた上で午前と午後の分散登校を実施。半数の生徒が連日、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使用し、タブレット端末を介して自宅から朝礼に“出席”している。

 一斉登校が始まるまでの試行だが、小澤直彦校長は懸念される今後の第2波を指摘。「生徒の話し合いもオンラインなら可能。教職員が在宅勤務になっても打ち合わせをリモートで行える」と予行演習としての効果を期待し、行事のオンライン化も視野に入れる。

 市教委は同校からICT化の課題を探り、本年度中に1人1台のタブレット端末導入を全22の市立小中学校で実現したい考え。ネット環境がない世帯に無線LAN「Wi─Fi(ワイファイ)」のルーターなどを整備するため、市は開会中の市議会第2回定例会に、事業費5億8700万円を盛り込んだ補正予算案を提出した。

 市教委の佐藤直樹教育部長は「教育水準向上の機会につなげるため、感染拡大を警戒しつつ歩みを止めず支援したい」と話した。

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