テレワーク時代、家のどこで仕事する?
2020年、働き方のスタンダードが目まぐるしく変わり、テレワークやリモートワークという形で勤務する人も増えています。ちなみにテレワークとは「情報通信技術(ICT)を活用した、時間や場所に縛られない柔軟な働き方」を指し、リモートワークは「会社から離れた場所で仕事をすること。一般的には在宅勤務とほぼ同義」なのだとか。
緊急事態宣言発令、解除、そして「東京アラート」が発動したりするなか、数少ない福音と言えるのは、数々の企業でテレワークが推進されたことでしょう。満員電車に揺られることもなく、むしろ速やかに顧客対応ができるわけですから、さらなる定着を望みたいところ。
しかし、悩ましいのが現代のマイホーム事情。書斎のない家庭も多く、家のどこで仕事をしたらいいか悩んでいる方も多いよう。間取りの少ない家ではどこで仕事をしたらいい? 子どもや家族にどう対応する? ブロガー、コグレマサトさんの答えは「脱衣所」でした。
国内大手電機もテレワークへ本腰
例えば日立製作所は5月26日、「在宅勤務活用を標準とした新たな働き方」ロードマップを策定し、幅広い職種で在宅勤務を標準とした働き方を推進すると発表しました。
今年の7月までにこれまでの在宅勤務における課題を振り返って総括。その後、勤務形態の検討や手当の決定を経て、下半期には新・働き方の試行をスタートさせ、その結果を踏まえて2021年4月から新制度の本格運用に入るというロードマップになっています。
「在宅勤務活用を標準とした新たな働き方」ロードマップ(日立製作所)2020年 5~7月これまでの在宅勤務における課題振り返り、総括2020年 8~9月個々人の職務(ジョブ)に応じた中長期的なの勤務形態等の検討
在宅勤務の積極活用に向けた環境整備、各種手当等取扱決定2020年10月~在宅勤務活用を標準とした働き方の試行開始2021年3月生産性向上・コスト最適化に向けた業務遂行方法・業務環境、各種手当・福利等見直し
コスト最適化に向けた各種手当・福利等見直し
労使での規則・協定見直し検討2021年 4月~
(予定)新規則・協定適用
在宅勤務活用を標準とした働き方の正式適用※日立製作所5月26日付ニュースリリース
もちろん、米フェイスブックやツイッター社、Googleなど海外のIT大手もテレワークやリモートワークを推進すると発表していますから、もはやこの潮流は止められようがありません。
しかし、特に日本においてテレワークを推進するには、家の広さと構造という大きな課題が立ちはだかっています。都道府県別の平均的な延床面積は東京都で64.48㎡。首都圏でも軒並み100㎡以下となっています。この広さでは、書斎のような個室空間を確保するのは難しいのが実情でしょう。
では会社からテレワークを求められたとき、われわれはどうしたらいいのでしょうか。
テレワーク環境を自ら作り出す術とは?
テレワーク時代、「仕事に集中」する環境をいかにつくるかが肝心
2008年にサラリーマンを辞め、プロブロガーとして活躍する在宅ワークのプロフェッショナル、コグレマサトさんに話を聞きました。
「まず、『仕事に集中する』という環境をいかに作るかですね。理解のある家族ならいいのですが、家で小さな子と二人になるようなら、ある程度は諦めてだましだまし仕事をするしかありません。ヘタに『それでも全力』などと考えると、親子関係にヒビが入ることすら考えられます」
小さな子どもに「仕事」という概念を理解させるのは難しいもの。小さい子どもがいる場合のベストは、時間を決めてパートナーと交代で面倒を見ること。そしてパートナーに面倒を見てもらっている間、子どもから姿の見えないところで仕事をするのがポイントだといいます。
「特に小さな子どもの場合は、親の姿が見えただけで寄ってきてしまう。考え方としては、時間をズラすか、物理的に区切るかの2択ですね。現実的な運用としては、この2パターンの組み合わせとなると思います」
例えば時間をズラすなら、子どもが寝ている深夜や早朝に仕事の時間をシフトする。睡眠時であれば、同じ室内にいても、存在しないのと同じになります。
家庭内では、どこがテレワーク向きなのか
もうひとつは場所を区切ること。コグレさんは「いまは仕事部屋があるので、集中して仕事ができる」と言いますが、以前はレンタルオフィスを利用したり、家のなかでも仕事をする場所を工夫したりしていたのだそう。
「2008年に会社を辞めた直後、しばらくの間はレンタルオフィスを借りていました。そのオフィスは震災を機に出ることにしましたが、会社員と兼業ブロガーだった頃、家庭内でブログをどう更新するかは試行錯誤しましたね」
「場所を区切る」と一言で言うと簡単ですが、実行に移すとなると難しい面もあります。例えばベランダは天候にも左右されますし、テレビ会議の声が近所迷惑にならないかも心配。風切り音などのノイズもあります。
かといって風呂場やトイレでは声にエコーが掛かってしまい、相手の集中をそいでしまうかもしれません。一時期、コグレさんが使っていたのは「脱衣所」だったそうです。
「以前住んでいた家の脱衣所って、ノートパソコンを置くことができるちょっとしたスペースが洗面所の脇にあったんです。しかも脱衣所なら、子どもの視界から逃れることもできる。生活圏内にそういう場所を見つけておくといいですね。といっても、ヘタに室内にテントなどを置いたら、子どもは間違いなく興味を持って入ってきちゃいますから、あくまで生活のなかにある地味な場所がおすすめです。ただ僕の経験上、子どもの相手をするときはきっちり相手をして、その後、時間か物理で区切るのが理想的ですね」
時間や場所を区切っても、小さな子ども相手ではどうにもならないこともあります。そんなときには隙間を見つけて子どもとしっかり遊ぶのもひとつの手。時間、場所に加えて、(自分と家族の)心に区切りをつけること。「出勤」というスイッチが入りにくい家庭におけるテレワークでは、意識的に心のスイッチを入れることも必要なのです。
コグレマサト
1972年生まれ、1997年からメールマガジンの配信を開始し、2003年にはブログ「ネタフル」を開設。2004年、2006年には大きな影響力のあるブロガーとして「アルファブロガー・アワード」に選出される。Twitter(@kogure)のフォロワーは14.7万(2020年現在)。近著の『できるfit LINE 基本+活用ワザ』、『noteではじめる 新しいアウトプットの教室 楽しく続けるクリエイター生活』(ともに「まつゆう*」との共著。インプレス)など著書多数。