「クスリ早見帖」を知ってますか? 副作用防ぎたいある内科医の思い

 医療機関を受診した時、医師から「最近何か市販薬を服用しましたか」と聞かれ「普段からあの薬飲んでるけど、名前なんだっけ?」と思い出せなかった経験はないだろうか。医師からすれば、処方する薬との飲み合わせなどによる副作用を防ぎたいため患者が飲んでいる薬を知ろうと聞くのだが、患者は正確な名前まで覚えていない。「えーと、なんとかEXプラスじゃなかったかな…」。こんな事態を防ごうと、よく使われる市販薬の成分を、商品の外箱などのカラー写真とともに一覧できる冊子「クスリ早見帖(ちょう)」を作製し、全国の医療機関に無償で提供している内科医がいる。(47NEWS編集部)

2020年版クスリ早見帖(平憲二さん提供)

 京都市の医療調査会社「プラメドプラス」の社長で、内科医として救急外来などで診療も続ける平憲二(ひら・けんじ)さんが、患者が家で飲んできた薬を聞きだそうとしても正確に思い出せない人が多いため、どうにかできないかと考え、2014年1月、市販薬データ集「クスリ早見帖」を創刊した。

プラメドプラス社長で内科医の平憲二さん

 「飲んでいる市販薬の成分が分かれば、同じ成分を含む薬を重ねて出して副作用が出てしまうといった事態を防ぐことができ、適切な薬の処方に役立つ」と平さんはクスリ早見帖の意義を強調する。

 平さんによると、患者は薬の名前は思い出せなくても、外箱の写真を見ればかなり正確に「これ」と特定できるという。創刊号の14年版と続く15年版は、風邪薬や痛み止めを中心にカバーした。16年版は胃腸薬や便秘薬などを加え、ドーピング禁止物質に当たる成分も示すなど、新たな工夫を加えた。

 17年版では医療現場からの要望も受けて、生薬を含む市販薬に絞って製作した。葛根湯などのような漢方製剤から、合成薬と生薬の両方を含み、薬の名称からは生薬が含まれているとは想像しにくい商品までさまざまだ。平さんは「生薬は『副作用が少ない』とのイメージがあるためか、複数の漢方薬などを長期に飲んでいる人もいる。医療者に注意喚起したい」と話す。

クスリ早見帖創刊号より ⓒ内山万惟子・国際マンガミュージアム

 クスリ早見帖は昨年までに累計10万冊以上が、全国の医療機関に配布された。現在、今年7月の完成を目指し製作を進めている20年版は「小児の市販薬」をメインテーマに、風邪薬、せき止め薬、鼻炎用内服薬、乗物酔い薬のデータを盛り込む予定だ。

 製作、配布にかかる費用は、これまでの出版物の印税などから自己資金60万円を投じるほか、クラウドファンディングでも広く資金提供を呼びかけている。

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