ポップでキャッチーな LAメタル「ポイズン」今風にいえばチャラメタ? 1986年 8月2日 ポイズンのデビューアルバム「ポイズン・ダメージ」がリリースされた日

LAメタルとは和製カテゴリー、海外ではヘアメタルとかグラムメタル

1980年代半ばに HR/HM シーンを席捲した “LAメタル”。どうやら日本のみで使われる和製カテゴリーのようですが、特に僕ら世代の(一部の偏った?)日本人洋楽ファンには「あ~、あの辺りのバンドね」という共通認識があると思うので、日本人同士で語る上では、むしろ積極的に使っていきたいのですが、いかがでしょうか。

さて、元来ヘヴィメタルといえば激しさと重厚さが特徴ですが、LAメタルの場合には、それが殆どありません(あくまで相対的に… ですが)。というか、従来のメタルの基準で言えば相当軽い。音階等の知識が無いので具体的な記述はできないのですが、例えば相対的に高音(弦)を多用するギターリフといった音的なものに加え、ステージ衣装はヒラヒラしていて、スカーフとかバンダナとか神風ハチマキその他の布物を、腰やら腕やら腿やらに巻いたりブラ下げたり、そしてギターやベースの、ネックのヘッドやらボディーのストラップのエンドピンやらにブラ下げたり、内外のプロもアマもこぞってヒラヒラさせるのが大流行りでした。もちろん、お決まりのロングヘアもヒラヒラ・フワフワです。そして顔にはバッチリ厚化粧。

なので、海外ではヘアメタルとかグラムメタルとか呼ばれてるのも納得がいくところです。僕の場合、そもそも KISS のようなバンドに代表される、ポップでキャッチーで見た目も一風変わった“傾奇者の馬鹿ロック” が大好きなので、今回お話しするポイズンをはじめとするLAメタルのバンドは大歓迎です。

ちなみに、LAメタルって、今風に言えば “チャラメタ” ってとこですかね。まぁ僕にとってはロックはエンターテイメントでもあるので、楽しくてカッコ良ければ何でもありです。「そもそも彼らはヘヴィメタルではない」とか「LA出身ではない」という御意見もあるかとは思いますが、そのへんも引っ括めてLAメタルということで御勘弁を。

節操がない? “爽やか青春メタル” から “悪ノリ糞餓鬼メタル” まで

で、僕が初めてポイズンを認識したのがファーストシングル「クライ・タフ」です。この曲のイメージとしては “爽やか青春メタル” と言ったところでしょうか。爽やかなギターのアルペジオから始まって「みんな頑張ろうぜ!」…的なポジティブで前向きな歌詞、例えば、

 Sometimes the rainbow
 is better than the pot of gold
 虹の麓にあると言われている金の壺よりも
 虹自体の方が良いってこともあるんだよ

…言うなれば「夢を追いかけて実現するよりも、夢を持つこと自体が素晴らしいってこともあるんだよ」といった金言的な歌詞もあります。ただ残念ながら、この曲はあまり売れなかったみたいです。

ここから一転して作られたセカンドシングルが「トーク・ダーティー・トゥ・ミー」。MVを観てのとおり “悪ノリ糞餓鬼メタル” といったところでしょうか。これらの曲が収録されたファーストアルバム『ポイズン・ダメージ(Look What the Cat Dragged In)』には、他にバラードもあって節操がないので、もう何が出てきても驚きません。でも、この曲は売れたみたいです。

このMVにおいて、個人的な見どころは3分20秒あたり。ドラマーが素でコケます。敢えてこの場面を、起死回生的なセカンドシングルのMVに使うかね…!? という、ふざけっぷりが素敵です。ちなみに僕はこれを “ドラマーあるある” だと思っていて、ドラムセットの足元のペダルやらスタンドの脚やらって、結構足に引っ掛かるものなのです。…って思うのは、ひょっとして僕だけ?

現在も活動継続中、臨機応変がポイズンの強味!

その後、メンバー交代でリッチー・コッツェン(元ミスター・ビッグで、現在はザ・ワイナリー・ドッグス等で活躍)をギタリストとして迎えたと知った僕は、ヴィジュアル的に地味というか野暮ったくて華が無い…… じゃなくて、武骨な男らしさが滲み出る、燻し銀の敏腕ギタリストが何故このバンドに?…と、不思議に思ったものです。ただ、HR/HM 的な視点から… ですが、バンドとしてデビュー当時の非常にポップでメロディアスな路線から、骨太で泥臭いアメリカンロックっぽい路線へと、ほんの少しだけ方向転換した時期だったようで、そのタイミングには合っていたんだと思います。これを僕は、勝手に“ボン・ジョヴィ的展開”と呼んでいます。

さて、デビューから暫くはそこそこ売れたものの、すぐに消えるだろうと思っていたこのバンド、実はまだ活動を続けています。最近では、再結成しないはずだったモトリー・クルー等と今夏からツアーに出る予定でしたが、新型コロナウィルスが蔓延るこのご時世、今月になって、ツアーが来年に延期されるとの発表がありました。今はその来年のツアーが無事、開催される事を願うばかりです。そして来年以降になったとしても、もし来日したら観に行きたいところです。節操がない… というよりは臨機応変なところが彼らポイズンの強味だったりするのかも知れませんね。

カタリベ: 飛影

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