今後有望なのは?株価の戻り「早い業種」「遅い業種」

株式市場は、コロナショック以降の下げ幅を全て取り返す形で戻りが続いています。実体経済も最悪期は脱していますが、世界的に見ると未だに新型コロナウイルス感染拡大への警戒感が強く、回復は鈍い状況です。

経済の先行きに対してはさまざまな機関が予測を出していますが、その多くは、新型コロナウイルスの感染拡大が表面化する前の水準である2019年レベルを取り戻す時期を、2021年後半から2022年とレポートしています。

このように実体経済の回復に時間がかかると予想されている中で、株価が急速に戻している背景には、世界各国で行われている強力な量的緩和があります。この緩和が債券市場への投資を減少させることにより、株式市場への資金流入につながっているのです。


株価が最も上昇している業種は?

このような状況下で、日本の株式市場の戻りにも濃淡が生じています。下のグラフは日経平均株価が年初来安値を記録した3月19日以降の業種別指数をグラフにしたものです。

最も上昇している業種は鉱業です。この業種の多くは、原油価格の影響を大きく受けますが、新型コロナウイルスの感染拡大により、原油の需要が急減したことで、ニューヨークの原油先物期近物は4月20日に一時マイナス40ドル台まで暴落するなどしました。

その後、産油国による協調減産や先進各国のロックダウン解除により、急速に値を戻しましたが、鉱業株の多くはその恩恵を受けて上昇しています。

また、非鉄金属やガラス・土石製品なども上位にランクインしていますが、これらの業種には商品市況に左右される銘柄も多く、同じくその恩恵を受ける形で株価が上昇しています。

株価の戻りが最も遅い業種は?

一方で、株価の戻りが最も遅い業種は空運です。日本国内での新型コロナウイルス感染拡大は一旦小康状態を迎えていると考えられるものの、アメリカやインド、ブラジルなど、多くの国では感染拡大が続いています。このような環境下では、以前のように外国から自由に行き来できるまでにかなりの時間がかかると予想されているため、株価はなかなか回復していません。

また、水産や陸運、電気・ガスなども株価上昇率ランキングでは下位になっています。これらの業種は、そもそも新型コロナウイルスに伴う需要の大幅な減少が予想されていなかったり、陸運のようにネット通販の拡大などを受けた需要の増加が明白に予想されたために、日経平均株価が暴落する中でも値持ちが良かった業種です。そのため、全体相場の回復局面でも戻り幅は小さく、ランキングでは下位となっているのです。

最後に、この先有望な業種はどこになるのでしょうか?過去に6ヵ月程度のスパンでこのような業種別の値動きをたどってみると、直近で好調だった業種は先々の伸びしろが限られる一方で、低調だった業種が逆に堅調となる傾向があります。現在続いているコロナ暴落以降の戻り相場が終わった局面では、物色される業種にも変化が生じる可能性があるでしょう。

<文:シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎>

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