避暑地を舞台に、1つの別荘をシェアした2組の夫婦が離婚の危機に直面する5日間を描く大人の恋愛映画『あなたにふさわしい』（宝隼也監督、6月12日よりアップリンク吉祥寺ほかで公開）に出演する鶏冠井孝介（かいでこうすけ）。同作では、不倫の恋をしながら、夫との関係に悩むヒロイン飯塚美希（山本真由美）と森の中で出会う純朴な野鳥カメラマンの青年を熱演する。鶏冠井に本作の見どころや、撮影秘話などを聞いた。
ーーこれまでのキャリアから、とてもアクティブなイメージのある鶏冠井さんですが、本作では一転、素朴でピュアな野鳥カメラマンの青年役を演じられています。
鶏冠井：これまで恋愛をテーマとした作品に出演したことはあるんですけど、不倫を扱った作品に出るのは初めて。自分自身はもちろん不倫の経験もないし、結婚もしていない。話をもらった時はどうなんだろうって最初は思いました。でも、よくある不倫を描いた作品と違って、この映画はドロドロしていない。視点がピュアというか、不倫に対しても、理屈で捉えず、人としてこういうことあるよねって、そういう描き方をしていて新鮮だなって。野鳥を撮るカメラマンの役だったんですけど、写真に関してはあまり詳しくなかったんで、周囲に指導してもらいながら頑張りました。
ーー役作りにおいて難しかった点はありますか
鶏冠井：ほかの役に対して、僕の役だけちょっと違う場所にいるような存在で、しかも癖があるんです。過去を引きずっているような男性の役です。監督と相談しながら演じました。僕が引きずる過去に関しては作品の中ではあまり触れられないんですが、演じる僕のために、監督がそれを前日譚として書き起こしてくれたりして助けてくれました。ピュアで繊細なイメージの男性像で、少し突いたら壊れそうな脆さもある。自分とは全くキャラクターが違うので正直、悩むところもありました。
ーー映画に出演するのはこれが2本目の作品だと聞きました。
鶏冠井：主要キャストの一人をやるという事に関しては今回の作品が初めてです。役者としての活動の場はこれまで舞台が多かったんです。時代劇だったり、ファンタジーをやったり。だから、この映画の話をもらった時は嬉しかったです。決まってからは撮影が楽しみでした。実際にやってみると、舞台とは達成感も少し違っていて面白かったです。
ーーこの作品の見所をあげるとすればどんな点ですか。
誰が見てもこう思うだろうなという作品ではないと思うんです。いろんな見え方ができる作品。2組の夫婦の誰に共感するかで見る人の感じ方も変わってくると思うんです。いろんなすれ違いはあれど、誰も悪にはなっていない。この人最低だなと思うことはあっても、心の底で、どこかわかるって気持ちも芽生える。だから何通りの見方もできて、たとえ共感はなくても楽しめる。そこが面白い部分だと思います。構えずに見て欲しいです。
ーー今後、役者としてはどういう方向に進みたいと考えているんですか？
鶏冠井：役者をやっていて楽しいのはやっぱり普段自分が経験できないような世界を経験できる事だと思うんです。時代劇でお侍さんになったり、今回だと野鳥カメラマンで、不倫の恋に落ちる。リアルではできないことを役の中で体験できる。だから今後もSF作品とか、例えば父親の役だったり、自分の日常とかけ離れた役に挑戦していきたいです。
ーー役者として目標にする人はいますか。
鶏冠井：僕、松たか子さんがすごく好きなんです。昔は松たか子さんがやっているドラマばかり見て、松たか子さんの演じる役が好きだったんです。でも、今は自分も役者として活動するようになって、また、見え方が変わってきて、より一層役者としてのすごさを感じるようになりました。どの作品で見ても、どのシーンにいても合わないことがない。しっかり作品に溶け込める技術、人間性とか素晴らしいなって。あと、タイプは全然違いますが、シュワちゃん（アーノルド・シュワルツェネッガー）も。共演する機会はないかもしれないけど、いつか会って握手してみたいです（笑）。
ーー世間はコロナ禍でとても大変な時期です。鶏冠井さんはこの2ヶ月どんな風に過ごしていらっしゃったんですか。
中村：緊急事態宣言が出されてからほとんど出歩いていないんです。3月末からすでに外に出ていない。外食もしなかったし、ずっと家にいました。食材を買ってきて自炊をしたり。最初はそういう生活が楽しくもあったんです。でも、家にいて、映画を見たりして過ごす中で、改めて自分はこの時期、何も生み出せていないなって。こういう時期だからこそエンタメは温かいものだなって感じることもできて、この作品もそうだし、自分が出ている作品がもっとみなさんのそばにあるようなものになっていければいいなと思いました。
（取材・文：名鹿祥史）
映画『あなたにふさわしい』
■公開情報
出演：山本真由美 橋本一郎 島侑子 中村有 鶏冠井孝介 紺野ふくた
監督：宝隼也 脚本：高橋知由
配給・宣伝：アルミード
Shunya Takara 2018 / 日本 / カラー / 83分 / 16:9 / stereo
www.anafusa.com
Twitter:@anafusa_movie
facebook: anafusamovie
6月12日（金）よりアップリンク吉祥寺ほかにてロードショー
■あらすじ
専業主婦の飯塚美希（山本真由美）は、ブランドネーム開発をしている夫・由則（橋本一郎）に対して不満を持っている。ある日、由則の仕事のパートナー・林多香子（島侑子）とその夫・充（中村有）とともに、別荘を借りて2組の夫婦で5日間の休暇を過ごすことになった。しかし、現地に着くやいなや、由則と多香子は急遽発生した仕事上のトラブルを解決するため別行動に。美希と充は不満かと思いきや、実は二人は隠れて浮気していたのだった。その夜、由則が話す仕事の思想を聞いた美希は、由則との間にある溝が埋まらないことに気づいてしまい…。森の中で出会った訳あり野鳥カメラマン（鶏冠井孝介）を巻き込み、美希はどのような決断を下すのか？
