住宅ローンを払えない時、どうすればいい?滞納したらどうなる?

住宅を購入するための資金を金融機関から借り入れ、返済していく住宅ローン。住宅は高額である場合が多いので、現金一括で購入することが難しく、住宅ローンを利用すること自体は一般的です。長期にわたって少しずつ返済していくことになりますが、何らかの理由で返済が困難になることも。この記事では、「払えなくなったら何をすれば良い?」「滞納したらどうなる?」といったことを解説してきます。

《目次》- 住宅ローンを払えない原因や理由

住宅ローンを払えない原因や理由

リストラや転職、休業や働き方改革によって仕事が減ったりなくなったりすることによる収入の減少や社会保険料の増加による収入の減少というパターンもあるでしょう。収入の現状維持または増加を想定して組む住宅ローンですから、収入が減ると返済プランが崩れてしまいます。

介護や離婚のように、想定外の時期にライフステージの変化がおとずれる場合もあります。病気や入院なども予測できませんし、想像以上にお金がかかる可能性があるリスクの一つです。

子どもの将来のために教育費をおしまないという家庭もあることでしょう。公立と私立どちらを選ぶか、医学部や海外留学など子どもの希望する進路によっては、さらに多くの費用がかかってきます。教育費が想定外に増えることで家計を圧迫し、住宅ローンの返済に影響することも考えられます。

ローンを組んだ時期や金額によっては、定年後も返済が続く人もいるかもしれません。年金生活になったらその範囲内で家計を立て直す必要があります。現役時代と同じように考えていると破綻する…というケースも避けたいですね。

支払いを滞納したら起きること

前述のように、何らかの事情で支払いを滞納してしまった場合はどうなるのでしょうか。具体的にみていきましょう。返済が滞ったとしても、すぐに立ち退きを求められることはありません。滞納している期間ごとに次のような段階を踏んでいきます。

1.約3か月滞ると金融機関から債務者へ督促状、催告書が届く

2.約6か月延滞が続くと金融機関から保障会社へ一括支払い請求

3.裁判所が競売手続きを開始

4.不動産競売が進められる

まず第1段階は「滞納期間が3か月以内」のとき。返済が滞っていると、金融機関から催促の連絡がきて返済を求められます。1か月から2か月たつと「支払い請求書」が届きます。さらに、2か月〜3か月たつと、「催告書」が届きます。そのときに支払いができない状態のときは、金融機関に相談しましょう。金融機関から何らかの緩和策や条件を提示してもらえることもあります。隠すこと、黙っていることだけはやめましょう。その理由は第2段階にあります。

次に第2段階。「滞納期間が3か月以上6か月未満」のとき。滞納期間が3か月を超えると次のステップ。多くの金融機関から、「期限の利益喪失通知」が届きます。長期にわたって毎月分割して支払うという契約をやぶったことで、分割して支払う権利をうしなってしまう、つまり残りの住宅ローンを一括返済するように求められます。

次に届くのが「代位弁済通知」。住宅ローンを組むときには保証会社との契約がセットになっています。金融機関はこの段階で保障会社へ一括支払い請求し、保証会社が住宅ローンの残高を立て替える形で支払います。

そして第3段階。次に届くのは「競売開始決定通知」。時期として「6か月以上10か月未満」あたりです。裁判所が競売手続きを開始し、担保である不動産を差し押さえたというお知らせ。裁判所の執行官によって現況調査が行われ、不動産の価格が査定されます。

次に第4段階。滞納から1年ほどたつと、「期間入札の通知」が届きます。対象の不動産の入札期間など詳細が記載されています。購入したい人がいれば希望の金額で申し込める期間で約1~2週間。通知が届いてから間もなく入札が始まります。

住宅ローンを払えなかった場合どうなる?

延滞してしまう前に、払えないとわかったら金融機関に相談しよう### 個人信用情報機関に延滞記録が残る

長期にわたって延滞するなどの“事故”を起こすと、個人信用情報機関に延滞記録が残り、いわゆるブラックリストに入ることになります。住宅ローンの場合は返済を3か月以上延滞した場合に記録されることが多いようです。ブラックリスト入りすると、住宅ローンだけでなく、銀行系の全国銀行協会(JBA)、カード会社系のシー・アイ・シー(CIC)消費者金融系の日本信用情報機構(JICC)に情報共有されます。クレジットカード会社などでも一定の期間は審査に通過できなくなるなど影響が大きいので深刻ですね。

保障会社から一括支払い請求がくる

前出の「支払いを滞納したら起きること」でご紹介したとおり、分割支払いの権利を失って、金融機関が保障会社へ一括支払い請求すると、保証会社が住宅ローンの残高を支払います。この段階で、返済先は金融機関から保証会社に代わることになります。

競売にかけられてもローンが完済しないことも

そもそも分割返済が滞っている時点で一括返済を求められても、無理な場合が多いでしょう。そこで返済ができずにいると不動産を競売にかけられることになるのですが、これにも大きな落とし穴が……。競売にかけられ落札されれば、住宅はもう落札者のもの。すぐに住宅を退去しなければなりません。しかも住宅ローンの残額より競売価格が少なければ、ローンを完済することもできないのです。住む家を失ってローンも残るという状況になるわけです。ことが大きくなるほどリスクも大きくなるので、この段階になる前に対処したいところです。

遅延損害金の支払い

住宅ローンを延滞すると、「遅延損害金」が発生します。住宅ローンを組んだときの契約書に記載されている内容次第ですが、多くは約14%(1年を365日とし、日割りで計算する)の支払いを求められます。

「期限の利益喪失前」であれば、毎月の返済金額に対して損害金利がかかる仕組みで、遅延損害金は「毎月の返済額×14%÷12か月」となります。これが「期限の利益喪失後」になると、毎月の返済金額ではなく元本すべてが対象になります。つまり「ローン残額×14%÷12か月」となり、かなり額も大きくなってしまいます。

滞納前に住宅ローンの支払いが厳しくなった時の対策

借入機関に相談し、返済計画を見直す

住宅ローンを滞納してしまいそうだという状況がみえたら、まずは借り入れをしている金融機関に早めに相談し、交渉しましょう。たとえば入院する2年間だけといったように、期間を限定して月々の返済額を減らすことができます。一定期間の返済額の減額によって一時的に返済が楽になりますが、収入が回復するかどうか、返済の遅れを取り戻せる見込みがあるかどうかなどを含め、慎重に検討が必要です。

住宅ローンの借り換え

何らかの事情で一時的に収入が減ったり教育などに想定外にお金がかかったりする時期もあるでしょう。より金利の低い住宅ローンにする、あるいは期間を延ばすことで月々の返済額を減らすことができます。手数料がかかるなどのデメリットはありますが、滞納してしまった後のことを考えれば借り換えるメリットの方が大きいといえます。

家計を見直す

家計を見直し、無駄な出費がないかどうかのチェックも重要。保険や車など、家計に占める割合が大きい固定費を見直し、大きな出費の予定があればそれをリスケすることはできないかなど、支出を減らせるかどうか。そして共働きをして収入を増やしたり、より安定したものにできないかなど、考えてみましょう。

通常の売却という選択

住宅ローンを滞納してしまうと、最終的には住宅を競売にかけられ、不本意な価格で売却して住む場所を失うことになります。そうなる前に通常の売却を検討してみるのも選択肢のひとつです。売却してローンを支払い、別の家に住み替えるなどの方法もあります。

住宅ローンを滞納してしまった時の対処法

住宅ローンが払えなくなったらすぐに引っ越さなければならない、というわけではない。住み続けられる選択肢もある

住宅ローンを滞納してしまったときの対処法として、どのようなものがあるでしょうか。具体的な方法をひとずつみていきましょう。

リースバックをする

リースバックとは、住んでいる住宅を投資家など第三者に購入してもらうことでそのまま不動産を使用し続ける取引方法のこと。購入者に家賃を払うことで、住み続けることができるというメリットがあります。近い将来に資金のめどが立つという場合は不動産を買い戻すことも可能。売却したときの価格よりも買い戻し価格が高くなってしまうケースが多いですが、住み慣れた家に住み続けられるというメリットはあります。

親子、親族間での売買

リースバックの際に売却するのはお互いに信頼できる相手であることが重要なポイントですが親子や親族の間での売買も選択肢のひとつ。投資家に売却するのと同様、自宅に住み続けられるというメリットがあり、さらに親子・親族間でのことなので、毎月の返済額が少なくなることが多いのも利点です。一方で、購入した人がほかの住宅ローンを組みづらくなることや、親子間・親族間売買を行う場合に住宅ローンの融資審査に通ることが難関であるケースが多いことなど、いくつかハードルもあります。

個人再生で住宅資金特別条項を利用

住宅ローンの返済をするために消費者金融などから借り入れをし、その返済も難しくなってしまった……といった場合に検討したいのが「住宅資金特別条項」。適応されると、住宅ローン以外の債務の毎月の返済額が減るので、住宅ローン返済が楽になります。住宅ローンの返済額は減りませんが、住宅を手放すことなく返済を続けることが可能になるのがメリット。とはいえ条件は厳しいので、検討する際は弁護士などに相談してみましょう。

任意売却をして家を住み替える

任意売却をすれば金融機関としては売却価格をより高く設定して残額を回収できるというメリットがあります。所有者としては競売を止めることができ、引っ越し代を確保できる可能性もあるので、家を住み替えるという選択肢もうまれます。何も手を打たずにいると任意売却できる時期が過ぎ、競売にかけられるのを待つだけになってしまうので、早めの決断が必須。不安があるひとは、任意売却専門業者もあるので、任せてみるのもひとつの方法です。

債務整理、自己破産

任意売却ができる期間も過ぎ、自宅を競売にかけられたうえに債務が残った……という場合は弁護士などの専門家に相談しましょう。こうなると、自己破産をして債務整理する方がメリットが大きいと考えられます。

通常の売却、任意売却、競売の違いは?

住宅ローンの返済が滞ることが想定されたとき、考えなければならないのが住宅の売却。ここでは「通常の売却」「任意売却」「競売」の違いについてみていきます。

残っている住宅ローンを全額返済して売却するのが通常の不動産売却です。任意売却は、住宅ローンの返済ができなくなったとき、売却後もローンが残ってしまうことを金融機関の合意をえて売却する方法。

ローン残額を一括で返済できない場合、金融機関は担保となっている不動産を強制的に売却し、その売却代金から貸したお金を回収します。裁判所の権限で強制的に売却されることを競売といいます。

任意売却は、売却後の返済方法や返済額など、希望が通りやすいのですが、競売は入札された額で売却されるので自分で売却額を決めることができません。競売では、裁判所やインターネットにより公知されるので、競売物件として近隣に知れ渡ってしまうなどメリットは全くないと言っていいでしょう。競売になる前に、何かしら打つ手がないかどうかまずは考えるべきだといえそうです。

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