いきなり!ステーキ、ひっそり「大量閉店」拡大

新型コロナウイルスの影響で外食産業が大きな打撃を受ける中、不振のペッパーフードサービスが運営する「いきなり!ステーキ」の大量閉店がひっそりと拡大しています。

2019年12月末時点で493店だった国内店舗が、2020年5月末は414店にまで減少。今年に入ってから79店舗を閉店したことが、5月の月次動向の数値から明らかになりました。

2020年中に不採算の74店舗を閉店すると発表していましたが、新型コロナウイルスによる影響を受けてか、それを上回るペースでの閉店に踏み切っているようです。


国内店舗の2割弱が閉店へ

いきなり!ステーキでは、新型コロナ対策として、一部店舗で営業時間の短縮や休業などを実施。公式サイトに営業時間の変更や、休業・閉店した店舗一覧が公開されています。

それによると、6月12日時点の情報で、6月は少なくとも11店舗の閉店を予定。1〜6月で国内店舗の2割弱が閉店することになります。

さらに、公式サイトには「休業中」と書かれていても、店前の貼り紙や、入居する商業施設のお知らせなどで、店を閉めることを公表していた店舗が複数あるようです。

たとえば、神奈川県の小田原店は閉店のお知らせとして、「本部の指示を受けまして、いきなり!ステーキ小田原店は2020年6月10日をもちまして当店は閉店させていただくこととなりました」と、貼り紙を出しました。

しかし、公式サイトには「新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、当店は5月1日より当面の間休業させていただきます」となっています。

中には一度、公式サイトで閉店と公表した後に「休業中」に表記が変わるケースもあり、正確な店舗情報を得ることは困難な状態に陥っています。

大量閉店は新型コロナの影響?

ペッパーフードサービスは、2020年2月に開催された2019年12月期の決算説明会で、急激な店舗数増により自社ブランド同士の競合が起きているとして、国内74店舗の閉店を発表していました。

その予定を上回るペースで進む今回の閉店は、新型コロナによる影響なのでしょうか。

同社に閉店の理由や、正確な店舗数などについて、取材を申し込みましたが、「誠に申し訳ありませんが、現在会社情報などに関わる取材をすべてお断りさせて頂いております」と広報担当者からメールで回答がありました。

また「店舗数に関しましても公式の発表をお待ち頂ければと思います」「営業店舗に関しましては日々変化していますので、ホームページ営業店舗一覧よりご確認下さい」として、正確な店舗情報を得ることができませんでした。

同社は、5月15日に実施予定だった2020年12月期第1四半期の決算発表を延期しており、発表日は未定としています。

そもそも、以前に大量閉店の決定に至った背景には、2019年度決算の悲惨な結果があります。ペッパーフードサービスの2019年度の売上高は675億円(前年同期比6.3%増)だった一方、本業の儲けを示す営業損益は7,100万円の赤字(前年同期は38億円の黒字)と、大幅に悪化していました。

そうした中で起こった新型コロナウイルスの感染拡大。売上高の著しい減少により、営業債務や借入金の返済などの資金繰りに懸念が生じているとして、2019年12月期有価証券報告書に「継続企業の前提に関する事項」の注記(GC注記)を記載しました。

また4月には、いきなり!ステーキ事業と比べて堅調な「ペッパーランチ」事業を新設分割により設立した新子会社「JP」に承継させると発表。ペッパーフードサービスの100%出資子会社で、代表者は一瀬邦夫氏が務めています。

さらには6月1日、主要仕入先で株主でもあるエスフーズの村上真之助社長からの20億円を借り入れを発表しました。

主力のいきなり!ステーキ事業の5月の既存店売上高は、前年同月比49.4%と苦しい状況が続いています。この苦境をどう乗り越えていくのか、ここから数ヵ月の動きが今後の命運を左右することになりそうです。

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