35歳年収540万、3人子持ちのひとり親が余裕で返せる住宅ローンは月いくら?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、35歳シングルアゲインの女性。3人の子どもとともに実家に戻る話があるものの、同居の不便さもあり、マンションの購入を検討しているそうですが……。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

今の状況で中古マンションを買っても大丈夫か悩んでいます。

離婚してシングルマザーをしています。

現在、子どもと3人暮らし。私の月収は30万(住居手当1万、扶養手当2万3000円含む)、正社員で看護師、夜勤もやっています。離婚を機に転職して、現在の職場は4月から3年目となります。

2020年4月から上の子が小学校に通い始め、2人目は年中になります。今は賃貸で実家の近くに住んでいます。今年中に実家を建て替える予定なので、建て替えたら実家に入るかという話もありますが、親の干渉が過剰でストレスがたまることもあるので、中古マンションを買ったほうがお互い関係が良好のまま過ごせるのかな、と思っています。

仕事柄夜勤もあるため、親の力を借りて生活を送っていかなければならない状況です。実家に入ってしまえば、食費と家賃代として8万ぐらい払おうかと思っています。

父親は70歳、母親は65歳。今のところ元気に暮らしています。39歳の未婚の姉(正社員)は実家で暮らしています。

現在、子どもの習い事はスイミングのみですが、今後は英語、そろばんはやらせたいと思っています。養育費も毎月二人分で5万円もらっており、全て貯蓄しています。児童手当は学資保険にあてて、余った分は貯蓄に回しています(学資保険は200万ずつ)。

毎月貯蓄は自分の分は3万5千円、子どもの分は2人分で3万+養育費5万です。ボーナスの貯蓄は年間子供の分は二人分で26万も含まれています。資産は子どもの貯金分も合わせた額です。

中古マンションは実家から徒歩な5分ぐらいのところにあり、ネットのサイトでは築17年2980万でリフォーム済、毎月の管理費1万480円、修繕積立金1万5090円の物件と、同じマンションの違う棟で、築17年2380万、リフォーム未、毎月の管理費1万1300円、修繕積立金1万6270円となっていました。

ローンを組むならできるだけ早く完済したいと思っていますが、どれくらいのローン額なら払えるのかが全く検討がつかず、質問しました。

<相談者プロフィール>

・35歳、女性、独身(離婚)

・子ども:2人(上6歳、下4歳)

・近所に実家あり。父(70歳)、母(65歳)、姉(39歳)

・職業:会社員(看護師、夜勤あり)

・居住形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:30万円

・養育費:5万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:110万円

・毎月の世帯の支出目安:23万円

【支出の内訳(23万)】

・住居費:7.5万円

・食費:3万円

・水道光熱費:1万円

・教育費:2.7万円

・保険料:2.2万円

・通信費:1.4万円

・車両費:1万円

・お小遣い:3万円

・その他:1.2万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:13.5万円

・ボーナスからの貯蓄額:70万円

・現在の貯蓄総額:1080万円

・現在の投資総額:714万円

・現在の負債総額:なし

・老後資金は把握していない。退職金あり


渡邊: こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。今回は、シングルマザーの方の住宅購入相談です。お子さまの成長に伴い、実家の近くに中古マンションの購入を検討されています。実家に同居するとストレスは溜まるし、とはいえ仕事柄サポートも必要とのことです。実家の近くで住宅購入するのはひとつの選択肢になってきそうですね。

「借りられる金額」と「返せる金額」を間違えてはいけない

シングルマザーに限らず、住宅購入に伴う住宅ローンを借りるときに一番気を付けなければいけない点は、「借りられる金額」ではなく、「返せる金額」で借りるということです。

特に、シングルマザーやシングルファーザーである場合、収入を得られるのがひとりであるため、より慎重に購入金額について検討することが重要となります。

もちろん、住宅購入だけでなく、子どもの教育費の準備や、自身の老後準備も必要です。また、ご相談者のように元夫から養育費や勤務先からの扶養手当などを受け取っているケースもありますが、これらは将来的にもらえなくなる可能性もあるために、養育費や扶養手当は無いものとして検討した方が良いでしょう。

相談者が「借りられる金額」の目安は?

では、「借りられる金額」と「返せる金額」の目安についてみていきましょう。

金融機関が住宅ローンを貸すにあたり、審査項目のひとつに返済比率(返済負担率)というものがあります。これは、借りる人の年収に対して、年間返済額の割合のことです。返済比率が基準を超えた場合、返済負担が重くなり、返済が滞るリスクが高まるため、融資が受けられません。

「借りられる金額」についてですが、目安となる返済比率は、金融機関によっても異なりますが、一般的には30%~35%程度 となっています。ご相談者の扶養手当などを引いた年収を540万円と仮定します。そうしますと、「540万円×35%」=189万円が年間返済額の上限となります。月々だと「189万円÷12ヶ月」=15万7500円が毎月返済額の上限ということです。

では「返せる金額」の目安は?

では、「返せる金額」はどうでしょう。

こちらは世帯によって普段の生活費が異なるので、若干の差はありますが、安心して返すことを考えると、返済比率20%~25% に抑えた方が良いでしょう。ご相談者の場合は、「540万円×25%」=135万円となり、月々「135万円÷12ヶ月」=11万2500円となります。

検討している物件の管理費や修繕費が、2万5570円~2万7570円となります。今後上がる可能性もあるので、3万円程度と仮定すると、「11万2500円―3万円」=8万2500円となり、月々の住宅ローンの返済額の目安は8万2500円/月程度に抑えた方が良さそうです。

この時の注意点として、住宅ローンを組む際に35年で組む方が多いですが、組む年数は35年で良いとしても、上記返済比率に抑えるのは、退職までの返済期間で考えたほうがベターです。すなわち、ご相談者の場合は、65歳まで働くと仮定すると30年となるので、30年ローンで8万2500円/月以内に抑えましょう。フラットなど固定金利を1.3%(2020年5月末現在)、30年ローンで計算すると、約2450万円の住宅ローン借り入れとなります。

よって、ご相談者については、頭金や諸費用を考慮した上で、2450万円以内の住宅ローンに抑えたほうが良さそうです。

シングルマザー・ファザーが住宅購入で気をつけたいこと

マンションの金額以外にも考慮すべき点があります。

シングルマザーやシングルファーザーは、今後ライフプランが変化する可能性があります。再婚をして、さらに子どもが増えるという可能性や、将来子ども達が自立し、1人で住むことになる場合、またご両親が亡くなったあとのご実家をどうするかなど、今後の不確実な要素を考えると、今回の住宅購入を考える際には、ライフプランが変化した時にも対応できるよう、貸しやすい物件や売却しやすそうな物件を選ぶことも重要となります。

その為には実家の近くという条件もありますが、それに加えて駅からの距離や、住む地域なども考えた上で、物件を選びましょう。なかなか条件に合致する物件が見つからないかもしれませんが、焦って購入をしてしまい、のちのちローンを抱えたマンションを持っているがために、ライフプランが変化した際に、選択肢が限られてしまう方も多くいらっしゃいます。
シングルマザーだからこそ、より慎重な物件購入をおススメします。

最後に……

ご相談者は養育費や扶養手当をしっかりと貯蓄に回しており、堅実に資産形成をしています。これからかかる教育費やご自身の老後を見据えた上で、しっかりとしたライフプランを立て、その中で悔いのない住宅購入を目指していただきたいと思います。

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