基礎年金や厚生年金、平均的にいくらもらっている? 公的年金だけで生活できるかを考えた

「人生100年時代」。長生きするのはいいけれど、老後のお金が心配です。年金だけで本当に暮らしていけるのだろうか? 貯えとしてはどのくらい確保しておく必要があるのか? そんな疑問を持っている人はとても多いと思います。

「公的年金だけでは生活ができない」という記事はよく見かけます。しかし、本当に公的年金だけで生活するのは無理なのでしょうか? また、公的年金だけでは生活ができないとしたら、どのくらいの資金が必要なのでしょうか?

疑問は尽きないですね。つまり、よくわからないから老後のお金を心配してしまうのです。今回は、厚生年金の平均月額受給額、基礎年金の平均月額受給額を使って、公的年金だけで老後の生活ができるのか?ということを検証してみたいと思います。


男女別の公的年金の平均月額とはどのくらいなのか?

まずは、公的年金の平均受給額を見ていきたいと思います。

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成30年度)」のデータによると、厚生年金の平均年金月額は、14万3,761円です。男女別でみると、男性の平均年金月額が16万3,840円なのに対して、女性は10万2,558円と大きな差があります。

基礎年金の平均年金月額は、5万5,708円です。男女別では、男性の平均年金月額は5万8,775円で、女性は5万3,342円です。夫がサラリーマンで、妻が専業主婦というケースでしたら、平均で言うと夫の厚生年金が16万3,840円で妻の基礎年金5万3,342円あわせて、21万7,182円になります。

共稼ぎのケースならば、夫の厚生年金16万3,840円と妻の厚生年金10万2,558円の合計26万6,398円になります。夫婦とも自営業だったケースは、夫の基礎年金が5万8,775円と妻の基礎年金が5万3,342円、合計でも11万2,117円にしかなりません。自営業の場合には、自助努力で老後資金を準備しないとかなり大変なことになりますね。

老後生活は、毎月いくら必要なのか?

では、老後生活において、毎月どのくらいのお金があれば大丈夫なのでしょうか?

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(令和元年度)」によると、夫婦2人で老後生活を送る上での最低生活費は、平均22万1,000円です。また、ゆとりのある生活をするための費用は、最低生活費以外のお金にプラス平均14万円は必要だということです。結果、ゆとりのある生活費は、月額平均36万1,000万円となります。

夫:会社員、妻:専業主婦の場合は、何とか生活が維持できるギリギリ

先ほどの公的年金の平均月額と比べてみると、次のようになります。

夫サラリーマン、妻が専業主婦の場合は、平均月額21万7,182円ですので、最低生活費の22.1万円にかなり近い金額です。これならなんとか年金だけで最低の生活は維持できそうです。しかし、介護が必要になったり認知症になって支出が増えた場合には困ってしまいます。余裕資金としては1,000万円ぐらいは用意してきたいですね。

共稼ぎ夫婦は、ほんの少し余裕の老後生活

次に、夫婦共稼ぎのケースを見てみましょう。

夫と妻の合計は、26万6,398円ですから、それほどゆとりがあるとはいえませんが、生活費に困るということはないようです。ただ、ゆとりのある生活費からは約9万円足りません。介護になった時の資金として、500万円くらいは準備しておきたいですね。そして、この場合も油断をしないで、公的年金であまった分を貯蓄しておきましょう。

二人とも厚生年金を受け取っている場合には、遺族年金が期待できません。もし配偶者が亡くなったときには、年金受給額が半減してしまう可能性があります。その場合の備えもしっかりしておいた方がいいですね。

自営業の夫婦の場合は、公的年金だけでは生活は無理!

ご夫婦で自営業のケースは、合計でも11万2,117円です。最低生活費の22万1000円に11万円も足りません。このままでは悲惨な老後生活になります。

会社員の厚生年金は、年金の2階建て部分になります。自営業者などの場合の2階建て部分は、国民年金基金になります。また、国民年金基金ではなく、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用して老後資金を積み立てることができます。

それ以外にも、自営業の人にために退職金が準備できる小規模企業共済があります。これらは税制優遇もあり、とてもお得になっているので、活用することを強くお勧めします。

会社員は、厚生年金や、雇用保険など有利な制度があり、自営業者は不利なところもあります。しかし自営業者の強みとしては、仕事の仕方によっては、大きな収益が上げられますし、定年がなく働けると言うことです。

自分の年金受給額に当てはめて考えよう

3つのケースを見てきましたが、共稼ぎ夫婦の場合は、公的年金だけで老後生活は可能でしょう。夫がサラリーマンで妻が専業主婦の場合は、ギリギリの老後生活といっていいでしょう。自営業の夫婦の場合には、老後生活はきびしいです。そうなる前に自助努力をしておく必要があります。

今回使った数字は、すべて平均の金額を書いたものですから、これがすべての人に当てはまるわけではありません。一つの目安だと思ってください(それぞれの家庭により条件は異なるということを含み置きください)。自分の年金額を確かめて、どれに近いのを確認してみてください。上記の平均より上なら、あとどのくらい必要なのかとか、平均より下の場合には、もっと貯蓄が必要だな、というのが見えてくると思います。

自分の年金額を確かめるのには、誕生日月に送られてくる「ねんきん定期便」または「ねんきんネット」を利用すれば、だいたいの年金額がわかります。とくに「ねんきんネット」を使うと年金額のシミュレーションをすることもできます。一度試してみてはどうでしょうか。

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