MOMO5号機に何が起きたのか。会見で語られたトラブルの原因

MOMO5号機に搭載されていたカメラが捉えた破片飛散の様子。インターステラテクノロジズのオンライン記者会見より

インターステラテクノロジズ(IST)は6月14日、同日朝に実施された「えんとつ町のプペル MOMO5号機」(以下「MOMO5号機」)の打ち上げ結果に関するオンライン記者会見を行いました。

■打ち上げ70秒後に緊急停止信号を送信、最高到達高度は11.5km

IST社長の稲川貴大氏によると、5時15分ちょうどに打ち上げられたMOMO5号機は打ち上げから70秒後の5時16分10秒に緊急停止信号が手動で送信されたことにより、高度10.8kmでエンジンを停止。5時18分52秒に北海道大樹町の射点から4.12km沖合の警戒区域内に着水しました。最高到達高度は11.5kmで、目標高度の100kmには届きませんでしたが、地上・海上ともに安全が確保された状態で打ち上げは終了しています。

エンジンが緊急停止された理由は機体の姿勢と落下予想地点の2つの基準がほぼ同時に基準値を超えたためで、その原因としてはエンジンノズルの破損があげられています。中継映像でも機体から火花のようなものが散る様子が確認されていますが、MOMO5号機の機体に搭載されていたカメラでも打ち上げから36秒後に破片が飛散する様子が捉えられており、この時点を境にエンジンのジンバル角(エンジンノズルの向き)に変動があったことが確認されたといいます。

ノズルが破損したとみられる時点ではまだ制御に余裕があったものの、高度10km付近の最大動圧点(飛行中に空気抵抗が最大になる瞬間、MaxQとも)で機体の姿勢が大きく乱れたために前述の基準値を超え、緊急停止の判断に至ったと推定されています。高度10km付近における6月の平均風速は秒速20m程度ということですが、今日の予想時点での風速は打ち上げ判断の基準値内ではあったものの秒速40~50mと強く(打ち上げ延期と判断された昨日は秒速70m以上)、機体の姿勢がより乱れやすい条件だったようです。

今回破損したとみられるエンジンのノズル(グラファイト製)は初号機の頃から同じ仕様のものが使われていて、数十回実施された試験を含めても今回のような事象は初めてのことだといいます。今後は原因の究明とともに、これまで実施してきたノズル納品時の目視検査に加えて材料特性の検査や非破壊検査の導入も検討するとしています。

また稲川氏は、新型コロナウイルスの影響により5月の打ち上げが延期されたあとの緊急クラウンドファンディングも含め、多くの支援と応援を得たことに感謝を述べるとともに、次の打ち上げに向けた機体の製造やスポンサー契約などが一部進んでいることに言及。宇宙への輸送業として高頻度かつスピーディーな打ち上げを進めるため、前向きに取り組んでいきたいと語っています。

Image Credit: インターステラテクノロジズ
Source: インターステラテクノロジズ(YouTube)
文/松村武宏

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