コロナは雇用と自殺者数にどう影響?最新データから読み解く

景気ウォッチャー調査は、調査期間が毎月25日~月末までです。現状判断DIが7.9と史上最低となった4月の調査時期には、全都道府県に緊急事態宣言が発令中で、当初5月6日までの期間のさらなる延長観測が流れていました。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響が3月に比べ一段と経済に大打撃を与えていることを示唆するものでした。うち雇用関連・現状判断DIは6.3となり、雇用面の悪化が懸念される数字になりました。

5月調査では25日に緊急事態宣言が全国的に解除されたこともあり幾分持ち直し、現状判断DIが15.5、うち雇用関連・現状判断DIが10.7となりました。全員が「やや悪い」と答えたDIが25.0であることから持ち直したといっても、極めて厳しい数字であると言えます。

新型コロナウイルス感染拡大の影響下、雇用の代表的な数字である完全失業率や、それに関連する自殺者数などの直近の統計数字はどうなっているか、見てみましょう。


4月の休業者597万人と大幅増

完全失業率は2019年11月・12月と2.2%の近年での低水準をつけていました。しかし、今年は新型コロナウイルス感染症対策としての経済活動自粛の影響が、完全失業率の上昇要因になっています。1月分・2月分の2.4%から3月分2.5%、4月分2.6%と上昇しています。

なお、4月分の完全失業率が緩やかな上昇だった一方で、4月の休業者が597万人、前年同月差420万人増と2月19万人増、3月までの31万人増に比べ大幅に増加した。緊急事態宣言発出下、企業が休業者を抱え込んでいる状況がわかります。

4月27日時点で住民基本台帳に記録されている人全員に、1人当たり10万円の特別定額給付金が支払われます。また、雇用を維持するための対策も行われています。第2次補正予算での目玉の一つが雇用調整助成金の拡充です。

これまで日額8,330円だった助成金の上限を1万5,000円、月額の上限が33万円に引き上げられます。雇用調整助成金を申請していない中小企業の従業員を対象とした休業支援金も設けられます。

また、休業者向けの緊急小口資金、失業者向けの総合支援資金、住居確保給付金という休業手当で足りない部分を補う支援制度もあります。支給までの手続きに時間がかかるなど、実施面での対応の遅れはあるものの、それなりのセーフティーネットはできているように思います。

完全失業率のこれまでの推移を1953年からある年次データでみると、完全失業率が高かった年は、最近では08年のリーマンショックの影響が出た09年と10年は5.1%でした。5%台は他には01年から03年にかけてしか記録していません。

11年から13年までは4%台でしたが、アベノミクスによる景気拡大で、14年から16年までは3%台に低下し、17年には2.8%と23年ぶりの2%台に低下しました。18年、19年は2.4%でした。歴史的水準からみると、2%台の水準はまだ低めだと言えるでしょう。

<写真:森田直樹/アフロ>

自殺者は5月速報値までは減少

自殺の理由は健康問題、家庭問題、勤務問題、男女関係などさまざまですが、経済生活問題を理由とした自殺も多くあります。警察庁「自殺統計」と厚生労働省「人口動態統計」それぞれの自殺者数と完全失業率の年次データの相関係数を、データが存在する最長期間で算出すると、各々0.912(78年~19年)、0.934(53年~18年)と高いことがわかります。

警察庁の自殺者数は、日本における外国人も含む総人口が対象で、自殺死体認知時点で計上するのに対し、厚生労働省の自殺者数は、日本における日本人を対象とし、死亡時点で計上します。警察庁データの方が、公表が早いという特徴があります。

厚生労働省のデータによると、東京オリンピックの前年の63年から大阪万博開催年の70年までの8年間は1万4,000人台か1万5,000人台という歴史的な低水準で推移しました。第一次石油危機が発生し高度経済成長が終了した73年前後から自殺者数の増加基調が続き、77年に2万人台に乗りました。

78年以降を、警察庁の自殺者数の推移をみると、86年をピークに、バブル景気の山である91年まで減少基調で推移しました。しかし、バブル崩壊により、増加基調になり、金融危機の影響が出て98年に初めて3万人の大台に乗りました。

その後さらに増加基調が続き、03年には過去最悪の3万4,427人となりました。東日本大震災が発生した11年まで3万人台が続いたため、自殺者数は3万人台というのが当時の常識になってしまいました。その後、12年に15年ぶりに3万人割れとなり、19年まで10年から10年連続減少しました。

11年は年間では減少したものの、3月に東日本大震災が発生した翌月の4月から6月にかけてと8月の4ヵ月が前年同月比増加となりました。今年も、新型コロナウイルス感染拡大により増加を懸念する声も多くきかれましたが、意外にも4月は▲19.8%、5月も▲19.0%と、前年同月比は2ケタの減少率になりました。年初から5月速報値までの累計は7,799人、前年比▲11.6%の減少です。

コロナ禍でも雇用維持を期待

帝国データバンクが6月8日発表した5月分の倒産件数は288件、前年同月比▲55.6%と9ヵ月ぶりに減少しました。負債総額は711億3,100万円、前年同月比▲27.6%と3ヵ月ぶりに減少した緊急事態宣言に伴って裁判所の実務が進まなかった面があるとみられますが、足元の数字は、まだ少ない状況です。

5月15日が調査時点である4~6月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数は▲47.6でリーマンショック後の2009年1~3月期(▲51.3)に次ぐ過去2番目の低水準になりました。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞により景況感が急速に悪化しました。中堅企業全産業は▲54.1、中小企業全産業は▲61.1でそれぞれ04年度の統計開始以来、過去最低を記録しました。

こうした景況感の下でも、全産業ベースの大企業・中堅企業・中小企業とも、雇用に関する判断は6月末の現状、9月末・12月末の見通しすべてで「不足気味」超となっています。「過剰気味」超ではないという結果になっています。

コロナ禍ではあるが、適切な対策によって、引き続き雇用がしっかりと維持されることを期待したい局面です。

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