30代なのに貯金120万の夫婦「なぜ貯まらない?」別会計の落とし穴

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、34歳会社員の男性。老後資金を貯めたいのに、貯金に回すお金のゆとりがないというお悩みです。夫婦は別会計にしているそうですが…。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

夫婦別の家計管理をしています。これまで生活費は出し合ってきました。

老後が心配なので、iDeCoを始めたいと考えていますが、自分の毎月の収入から掛け金を出すことが難しい状態です。共働きの妻は自分の収入から既に始めているので、自分も老後のためにやらなくてはと焦ります。

結婚は1年半前にしました。授かり婚でしたので、子どもはすでに1歳です。妻は、加入対象者の拡大の話題が出た時に自分の企業年金状況を確認し、結婚前から上限いっぱいでiDeCoを始めています。貯金もしているようです。

自分は良いものかどうかの判断がつかなかったので今までやらなかったのですが、子どもが生まれて、自分たちの老後もなんとなく考え始めたら、年金の不安な話ばかりが耳に入ってきました。年金はどんどんもらえる額が少なくなるといいますし、2000万円問題もありましたから、今からはじめないといけないと思うのです。

ですが、自分の収入からは出すゆとりがない。生活費を出した残りはほとんど交際費や自分の貯めの支出に消えてしまい、残らないのです。このことは、妻は全く知りません。

支出の仕方をなんとか変え、貯金をしたり、自分もiDeCoを始めたりしたいのですが、どのようにしていくと良いでしょうか。

<相談者プロフィール>

・男性、34歳、既婚(妻:31歳、会社員)

・職業:会社員

・子ども:1人(1歳)

・毎月の手取り収入:相談者29.2万円、妻16.1万円(時短勤務中)

・年間の手取りボーナス:相談者約40万円、妻約30万円

・貯金:120万円(主に妻が貯めている分)

<支出状況(総支出額:44.5万円)>

・住居費:9.5万円(住宅ローン)

・食費:9.2万円

・水道光熱費:2.1万円

・通信費:1.9万円(スマホ2台、タブレット1台)

・生命保険料:3.2万円

・日用品代:2.3万円

・交通費:1万円

・被服費:2.6万円

・交際費:4.2万円

・娯楽費:2.1万円

・妻のiDeCo:2.3万円

・その他:4.1万円


FP: 相談者さんのご家庭はしっかり収入がありますが、それでもiDeCoの掛け金が捻出できないということは、お金の使い方に問題がある可能性があります。

夫婦別会計で無駄が生じている⁉️

ご夫婦で別々に収入を管理されているということですが、世帯の支出を見ると、どの費目の支出も多めです。お二人で管理することで重複するなどの無駄が生じ、結果的に支出が大きくなっているように感じます。

さらに月の余剰金があまりない状況でも妻側がしっかりお金を貯めているなら、相談者さん自身は自身の給料で生活費や小遣いとしている部分が賄えておらず、個人的に持っている独身時代の貯金でなんとか回しているということはないでしょうか。そうでなければ、妻の方も貯金は月に1万円以下程度しかできていないだろうと考えられます。

どちらにしても、これから教育費がかかり、老後資金も貯めていかなくてはいけない相談者さんご夫婦は、この状況を変えていかなくてはいけません。そのためには、メタボ支出の改善が必要です。

お互いの支出を見て、「これは金額が大きすぎる」と思ったところはないでしょうか。その費目をきっかけにしても良いですし、これからご紹介する方法でも構いませんから、支出の仕方を見直していくところから始めてみましょう。

家計のダイエットには、まずは固定費から

家計の支出には、固定費と変動費があります。

節約することを考えると、よく「食費」「水道光熱費」などに焦点が当たりがちですが、これらは努力することで支出を減らせる変動費。日々かかる支出が多く、簡単に上下するものです。つまり、モチベーションが維持されている時は支出を抑えられますが、面倒になったり、飽きてしまったりすると、あっという間にリバウンドしてしまいやすい性質のものです。節約することが習慣化されてしまえば問題はないのですが、なかなか継続が難しい部分があります。

一方で、通信費や教育費、生命保険料などの固定費は、一度見直して支出額が抑えられると、努力をしなくても長く支出を下げられるものです。多くは月に1度程度、決まった金額の支払いになります。時代により契約可能な新しいプランが出ますから、暮らし方や家族構成が変わった時、今の状況からみて「この契約でいいのかな」と思った時をきっかけに見直しをしてみると、意外と支出額が下げられることがあります。

また、この固定費の仲間になりがちなのが、クレジットカードの分割払いなどです。相談者さんは小遣いの中からのクレジットカードの支払いが固定費化していないでしょうか。もし思い当たることがあれば、早めに完済してしまい、毎月自由にできるお金を増やすことをお勧めします。そうすると、自分の収入からiDeCoの掛け金の支払いをしていくことも可能になるでしょう。

今後は可能な限り家計を一つに

これまで生活費は出し合ってきたということですが、一緒に合わせる部分が少ないために、家計の全体像がわからなかったのではいかと思います。そのために家計がメタボ化したとも考えられます。

今後はお子さんの教育費の問題も出るでしょうし、できるだけご夫婦で風通しの良い家計作りをしていきましょう。全てのお金を完全にオープンにしなくても、収支の状況や貯金額を報告し合うというだけでも全然違います。ご夫婦なのですから、自分自身の貯金を増やすと考えるよりは、「家庭の貯金を増やす」という気持ちで取り組むべきです。

相談者さんがお悩みのとおり、老後資金は自分で貯めなくてはいけませんし、その前にお子さんの教育費の準備もあります。ご夫婦が各自で動いていると、このような家族の目標のために貯めるということがうまく進みません。

なんのために貯めるのかという目標を共有し、貯めるためにどの支出が必要で、どの支出を抑えていくのかを互いに認識できれば、家計も改善しやすくなると思います。まずは、共有することから始めてみてはいかがでしょう。

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